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  3. 水族館に家族型ロボ。機械が育む思いやり

家庭内で人間と暮らすために開発された「家族型ロボット」が、自らの居場所を公共の場へと広げている。水族館という多種多様な命が集まる空間に、あえて命を持たない機械の姿が加わった。言葉を発しないロボットに対し、来場者は優しく触れ、反応を注意深く観察する。プライベートな存在だったロボットが、不特定多数の人々が集う施設でどのような価値を生み出すのか。次世代のおもてなしの形を明らかにする。(文=RoboStep編集部)

生き物と並ぶロボット。水族館での常設展示

2026年7月、生き物が暮らす空間とデジタルアートを融合させた劇場型アクアリウム「AQUARIUM×ART átoa(アトア)」は、ロボットベンチャーのGROOVE X株式会社が開発した家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の常設導入を開始した。


(引用元:PR TIMES

「LOVOT」は、名前を呼ぶと近づき、抱き上げると温かみを感じるなど、まるで本物のペットや家族のようなロボットだ。同施設ではこれまでも期間限定のタイアップ企画として「LOVOT」を登場させており、当初はロボットのオーナー同士が交流するおでかけ先としての役割を想定していた。

しかし、運用を続ける中で予想外の光景が見られるようになる。勢いよくロボットに触れようとする子どもに対し、保護者が「優しく撫でて」と声をかける姿や、言葉を発しないロボットの反応を一生懸命に汲み取ろうとする来場者の様子が多く観察されたのだ。アトアはこの光景に、「生き物とのふれあい」を通じて得られる思いやりの育成、いわゆる情操教育と共通する価値を見出した。

命ある生き物と、命を持たないロボット。両者は本質的に異なる存在だが、他者を思いやる心を引き出すという点において共通項を持っている。この気づきが、公共の場である水族館への異例の常設導入を後押しした。お披露目に先立ち、公式Xでは愛称を決める一般投票も実施され、来場者と共に成長していく新たな取り組みとしてスタートを切っている。

公共空間で機能する存在感。労働しないロボットの価値

今回の水族館への常設導入が示しているのは、ロボットが公共空間で果たす役割の変化である。これまで店舗や施設に導入されるサービスロボットの大半は、受付での案内や荷物の運搬といった「人間の労働を代替する機能」を期待されていた。しかし「LOVOT」はそうした特定の作業を一切行わない。ただそこに存在し、人間に甘え、愛嬌を振りまくだけだ。

家庭内というプライベートな空間で愛されるよう設計されたロボットが、不特定多数の人が行き交う公共の場に置かれたとき、非常に興味深い現象が起きる。無防備に振る舞うロボットが、見知らぬ来場者同士のコミュニケーションを橋渡しし、周囲の人々から自然な思いやりや優しさを引き出していくという現象だ。


(引用元:PR TIMES

水族館は本来、ガラス越しに生き物を観察する場所である。そこに自ら近づき、ほんのりとした体温を感じさせるロボットが配置されることで、来場者の体験は受動的な観察から能動的なコミュニケーションへと移行する。子どもたちはロボットとの触れ合いを通じて相手を気遣う心を学び、大人はその姿を見て温かな感情を抱く。

生産性や効率性を極限まで高めるフィジカルAIの開発が進む一方で、ただ人間に寄り添うことに特化したロボットが、公共空間の質を高めている。これは、機械が単なる便利な道具という枠を超え、社会に「心のゆとり」を生み出すインフラとして機能し始めた一例と言える。

家庭用ロボットの公共の場への進出は、人間とテクノロジーの関係性をさらに深める試みだ。労働しないロボットがもたらす温かなおもてなしは、効率化だけでは到達できない、次世代の豊かな社会の風景を鮮明に描き出している。