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2026.08.10

家族への想いを形にした、新たなスリープテック。睡眠は「脳」から整える!

睡眠不足は、個人の健康だけでなく、企業の生産性や社会全体にも影響を及ぼす課題として注目されている。一方で、寝具やサプリメントなど選択肢が増えるなか、「自分に合う方法が見つからない」という人も少なくない。こうした課題に対し、韓国発スタートアップ・LEESOLは、睡眠環境ではなく「脳」に着目したスリープテックを開発。家族の睡眠を守りたいという想いから生まれた独自技術は、日本市場への展開も進めている。睡眠を起点に、人々のコンディションを支える新たなヘルスケアの可能性を追った。(文=RoboStep編集部)


スリーピーソル 開発者・代表
イ・スンウ氏

超音波診断機器メーカー、スマート補聴器の開発を経て、60歳で睡眠テクノロジーブランド「Sleepysol(スリーピーソル)」を設立。微細電気刺激技術を応用した睡眠改善デバイスの研究開発に従事。「良い製品は、現場で悩み抜いた人から生まれる」という信念のもと、現在も日々の研究開発を続けている。

睡眠は健康を維持するうえで⽋かせない⽣理現象だ。しかし現代社会では、多くの⼈が⼗分な睡眠を確保できていない。OECD(経済協力開発機構)の調査でも、⽇本⼈の平均睡眠時間は加盟国の中で最低⽔準にあり、慢性的な睡眠不⾜が社会課題となっている。

また、睡眠不⾜は「眠い」「疲れが取れない」といった個⼈の問題にとどまらない。集中⼒や判断⼒の低下、⽣産性の低下、メンタルヘルスへの影響など、企業活動や社会全体にも⼤きな影響を及ぼしている。そのため近年では、睡眠は個⼈の健康管理だけではなく、健康経営やウェルビーイングを⽀える重要なテーマとしても注⽬されるようになった。

⼀⽅で、寝具やサプリメント、睡眠導⼊剤など課題解決の選択肢は増えているものの、「⾃分に合う⽅法が⾒つからない」という声も少なくない。こうした背景から近年は、睡眠環境ではなく「脳そのものの状態」に着⽬したスリープテックへの関⼼が⾼まりつつある。

家族への想いから始まった睡眠革命

「開発のきっかけは、とても個⼈的な出来事でした」。そう振り返るのはLEESOL代表のイ‧スンウさんだ。海外出張が多かったイさんの妻は、⻑年、時差ぼけや睡眠の乱れに悩まされていた。睡眠薬を飲めば眠ることはできる。しかし、薬に頼り続けることが本当の解決なのだろうか。もっと⾝体への負担が少なく、⾃然な睡眠を⽀えられる⽅法はないのか。

その疑問が、LEESOLの原点となった。そこでイさんが着⽬したのが、「脳波」と睡眠の関係だった。睡眠時の脳では特定の脳波が現れることが知られており、「もし脳の状態そのものにアプローチできれば、新しい睡眠ケアが実現できるのではないか」と考えたのである。しかし、そのアイデアを形にするまでの道のりは決して平坦ではなかった。

初期の試作品は現在のヘッドバンド型ではなく、⽬元を覆う睡眠マスク型だった。睡眠中でも⾃然に装着できることを⽬指したものの、装着感や電極の安定性、刺激の伝わり⽅など多くの課題が⾒つかった。試作品を作っては検証し、改良を繰り返す⽇々が続いたという。

 さらに難しかったのは、⼈の⾝体に極めて微弱な電流を安全かつ安定して届けることだった。刺激が強すぎても弱すぎても⽬的とする効果は得られない。出⼒波形や電極の配置、装着性など、細かな調整を何度も繰り返しながら、現在のヘッドバンド型デバイスへと進化していった。この開発には家族も深く関わっている。イさんは「家族の睡眠を守りたい」という想いを胸に、娘とともに試作品づくりや検証を重ねながら改良を続けた。 

その積み重ねが、現在の開発品であるヘッドバンド型デバイス「sleepisol+」につながっている。イさんは、「睡眠は⼈⽣の3分の1を占める時間です。だからこそ、その時間をより良いものにできれば、⼈の⼈⽣そのものをより豊かにできると考えています」と語る。家族を想う気持ちから始まった挑戦は、今では世界中の⼈々の睡眠課題に向き合うスリープテックへと発展している。

「脳から整える」睡眠課題に挑む独自技術

最⼤の特徴は、独⾃の脳波同調技術「CS-tACS」を搭載している点だ。これは頭部に取り付けた2つの電極から極めて微弱な交流電流を流すことで、睡眠時の脳環境へ働きかける技術である。⼀般的に、⼈が眠る際にはデルタ波と呼ばれる脳波が現れることが知られている。睡眠の質向上やリラックス、集中力アップなど、目的とする状態に合わせた周波数の脳波を促す次世代スリープテック技術、それが「CS-tACS」だ。「睡眠は脳から整える」という考え⽅をもとに設計点されている。

sleepisol+のデバイス本体は約30gと軽量で、就寝時にも装着しやすいヘッドバンド型を採⽤している。試作品段階では睡眠マスク型も開発されたが、装着時の安定性や使いやすさを追求した結果、現在の形状へとたどり着いた。また、専⽤アプリと連携することで、睡眠だけではなく、集中‧ストレスケア‧安定など複数のコンディショニングモードも選択できる。さらに、操作をよりシンプルにしたモデル「blissol」も展開。ボタン⼀つで利⽤できる設計となっており、デジタル機器の操作に不慣れな⼈でも使いやすい仕様となっている。

LEESOLが⽬指しているのは、睡眠だけを改善するデバイスではない。⼀⼈ひとりの脳のコンディションを整え、その⽇の⽣活や仕事のパフォーマンスを⽀えること。そのための基盤技術としてCS-tACSの研究開発を進めている。

LEESOLが⽇本市場への進出を決めた理由は、⽇本が世界でも有数の睡眠課題を抱える国だからだ。⽇本では慢性的な睡眠不⾜が個⼈の健康だけでなく、企業の⽣産性や健康経営にも影響を及ぼす社会課題として認識され始めている。⼀⽅で、睡眠に対する関⼼は年々⾼まっており、新たな解決策を求める声も増えている。

イさんは、「⽇本は睡眠に関する課題意識が⾮常に⾼く、私たちの技術が社会に貢献できる可能性が⼤きい国だと考えました」と話す。その第⼀歩として、⽇本⼈ユーザーを対象とした実証実験を実施。継続使⽤による睡眠状態の変化を検証するとともに、⽇本⼈ならではの⽣活習慣や睡眠に対する考え⽅、利⽤シーンなどのデータを収集してきた。

現在は健康経営EXPOへの出展をはじめ、企業や研究機関との連携も進めている。製品を販売することだけが⽬的ではない。⽇本の睡眠課題をともに研究し、エビデンスを積み重ねながら、⽇本社会に適したスリープテックのあり⽅を築いていくことが、LEESOLの⽬指す⽇本での挑戦である。

「脳のコンディショニング」が描く未来

LEESOLが⽬指しているのは、単なる睡眠デバイスメーカーではない。

同社が描く未来は、⼀⼈ひとりの脳の状態を理解し、その時々に最適なコンディションを提供する「脳のコンディショニングプラットフォーム」の実現である。

今後は睡眠だけでなく、集中⼒やストレスケア、認知機能など、脳全体のコンディションを⽀える技術へと発展させる展望を描いている。AIやデジタル技術との連携も進めながら、⼀⼈ひとりに合わせたリカバリーの実現を⽬指していくという。

「病気になってから治療する」のではなく、「毎⽇のコンディションを整え、健康を維持する」。そんな新しいヘルスケアのあり⽅を実現することが、LEESOLの⽬指す未来だ。睡眠を起点に、⼈の回復⼒そのものを⽀えるテクノロジーへ。LEESOLはこれからも、「未来のリカバリー」を設計する企業として、新たな挑戦を続けていく。