波が荒れ狂い、通信環境も安定しない過酷な海。四方を海に囲まれた日本にとって、広大な海域の監視や海上インフラの警備は国家の命運を握る重要なテーマだが、人間が24時間体制で目を光らせ続けるには物理的な限界が付きまとう。
もし、上空を舞うドローンと海面を進む無人ボートが互いの弱点を補い合い、自律的に連携して動く「群れ」となって任務を遂行したらどうなるか。空と海、異なる領域を支配する無人ロボットを接続し、安全保障から災害対応までを網羅する強靭なシステムが、日本のスタートアップの手で形作られようとしている。(文=RoboStep編集部)
2026年3月10日、防衛スタートアップのJISDA株式会社が設立した無人アセットコンソーシアム「RISE」に、海洋無人システムの研究開発を手掛ける日本海洋重工業株式会社が参画した。これに伴い、両社は空を飛ぶ無人航空機(UAV)と海を進む無人水上艇(USV)を連携させる「群制御(協調運用)」の開発に向けて戦略的協業を開始する。
(引用元:PR TIMES)
単独のドローンは上空からの広域な状況把握や即応性に優れている一方で、バッテリー容量による飛行時間の短さが弱点だ。そこで、長時間の海上行動が可能なUSVを、ドローンの「移動式基地(ロジスティクス支援プラットフォーム)」として機能させる構想を検討。
USVの上でドローンのバッテリー交換を行ったり、衛星通信を中継して通信の不安定さを補ったりすることで、長期間かつ広範囲にわたる任務の継続を可能にする狙いである。加えて、海上や沿岸部に接近する不審な無人機への対処も想定し、早期探知から警告、進入阻止に至るまでの防御的・迎撃的な運用モデルの構築も視野に入れている。
また、ドローンが上空から取得した俯瞰画像や対象物の検知データをリアルタイムでUSVに共有し、USV側の航行や接近の判断に生かすなど、海と空のデータを統合した状況認識能力の強化も推進していく。
両社は机上の空論で終わらせないため、設計変更を短いサイクルで反映できるスピーディーな製造体制や、海上で実証を繰り返す柔軟な試験環境の構築にも共同で取り組む構えだ。
これまで陸上や空で個別に進化してきたロボティクスは、今や「複数の異種ロボットによるチーム戦」という新たな次元へとステップアップしている。
広大で過酷な海洋環境においては、1つの万能なスーパーロボットを作るよりも、機動力のある空のドローンと、積載力・持続力のある海の無人艇を組み合わせる方がはるかに理にかなっている。航空機には搭載できない大容量の機材を海上の無人艇が担うことで、単独では不可能だった高度なミッションが実現する。人間がつきっきりで操縦するのではなく、AIを搭載した無人機同士が通信し合い、役割を分担して自律的に任務を遂行する「群制御」の技術は、労働力不足が深刻化する日本にとって極めて合理的な選択肢となるだろう。
特筆すべきは、この技術が防衛や安全保障といった限られた領域にとどまらず、極めて高い「デュアルユース(軍民両用)」のポテンシャルを秘めている点だ。空と海が連携して不審船を警戒する仕組みは、そのまま密漁の監視や港湾施設の警備に応用できる。さらに、災害発生時の迅速な状況把握や海難救助支援、洋上風力発電などのインフラ点検といった民生領域においても、無人機の群れは人間が立ち入れない危険な海域で強力な力を発揮する。
異なる強みを持つスタートアップ同士が手を組み、ハードウェアとソフトウェアの垣根を越えて未知の領域に挑む。周囲を海に囲まれた日本が、テクノロジーの力で自らの資源と安全を守り抜くための新たな防衛・監視モデルが、荒波を乗り越えて力強く前進している。