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2026.09.10

既存カートをロボット化。医療搬送の新たな解

慢性的な人手不足に直面する医療現場において、医師や看護師の貴重な時間を使わせてきたのが、薬剤やリネン、給食などを運ぶ「搬送」という付帯業務だ。さらにパンデミック下では、病棟から出る感染性廃棄物の運搬を外部委託できず、患者のケアにあたる看護師自らが感染リスクを抱えながら運ばざるを得ない過酷な状況も浮き彫りとなった。
こうした医療現場における搬送負荷と感染リスクを解消すべく、使い慣れた既存設備を活用して物流を自動化する新たなアプローチが動き出した。2026年7月、株式会社モレーンコーポレーションは、シンガポール「OTSAW(オットソー)」社が開発した医療用自動搬送ロボット「TransCar(トランスカー)」の国内展開プロジェクトを発表し、同月に開催された学会にて初出展した。院内カートをそのままロボット化する仕組みが、医療従事者が本来の患者ケアに集中できる環境を整えようとしている。(文=RoboStep編集部)

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既存カートの足回りを活用。最大500キログラムをセキュアに自動搬送


(引用元:PR TIMES

感染対策に特化したコンサルティングと製品の紹介・販売を手がけるモレーンコーポレーションは、2026年7月にパシフィコ横浜で開催された「第41回日本環境感染学会総会・学術集会」において、シンガポールのロボティクス大手OTSAW社が開発した医療用自動搬送ロボット「TransCar」を出展した。

TransCarの最大の特徴は、病院ですでに稼働している注射薬カートやリネンカート、給食カートなどの足回りを活用できる点にある。ロボットがカートの下部に潜り込んで自動でリフトアップし、指定された場所まで運搬する仕組みだ。使い慣れた院内の既存資産をそのまま活かせるため、導入コストを大幅に抑えられる。

(引用元:PR TIMES

本体は最大500キログラムまでの重量物を一括で搬送可能。レーザースキャナーや超音波センサー、接触感知バンパーを搭載しており、人との接触を防ぎながら傾斜やエレベーター、自動ドアとも連携して走行する。また、外部ネットワークを遮断し、院内サーバーからロボットシステムを制御する完全オンプレミスの設計を採用することで、医療機関に求められる高いセキュリティ要件を満たしている点も意義深い。

さらに同社は、検体などをオンデマンドで配送できるマルチパーパスモデル「Camello+(キャメロ・プラス)」の取り扱いも発表しており、病棟ごとの多様な物流ニーズに対応する体制も整えている。

過酷な搬送はロボットへ。医療者がケアに専念できる環境作り

モレーンコーポレーションによる医療用自動搬送ロボットの展開が示唆するのは、病院におけるDXが「設備の全面刷新」から「既存資産を活かした現場主導の分業」へと進み始めたという事実である。

医療従事者が担う業務の中でも、病棟間を何度も往復する重量物の運搬や、感染性廃棄物の搬送は、身体的な消耗や精神的な負担を強いる要因となっていた。こうした物理作業を24時間安定して稼働するロボットへ委ねることで、現場スタッフは感染リスクから守られ、専門的な判断や患者との対話を伴う本来の看護・治療業務へ専念できるようになるだろう。

さらに、本取り組みの真価は、シンガポールの病院の9割以上が実装している高度な医療物流自動化技術を、日本の既存の病院環境へスムーズに適合させた点にある。高額な設備投資や建物の改修を前提とせず、現場にあるカートを活かして段階的に導入できるアプローチは、地方都市や中小規模の医療機関にとっても現実的な選択肢となるはずだ。

人手不足が進む医療業界において、質の高い医療を持続的に提供するためには、人と機械の適切な役割分担が欠かせない。モレーンコーポレーションが提示した医療物流の自動化モデルは現場を支え、医療従事者が誇りを持って働き続けるための基盤となっていくはずだ。

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