難病や重度の障害、介護や子育てなど、さまざまな理由で外出が困難な人々にとって、オフィスや店舗などの職場へ足を運んで働く機会は大きく制限されてきた。就労意欲や能力を持ちながらも、物理的な移動が難しいという制約だけで社会参画の道が閉ざされてしまう構造は、当事者の孤立を深めるだけでなく、多様な知見を活かせないという点で社会にとっても長年の課題であり続けてきた。
こうした移動困難者が抱える就労の壁を解消すべく、分身ロボットを介して社会参加を促す新たなアプローチが動き出している。2026年7月、株式会社オリィ研究所は、移動困難者が遠隔操作で接客を行う「分身ロボットカフェDAWN」の常設2号店を、2027年8月に神奈川県横浜市中区にて開業すると発表した。東京・日本橋での5年間にわたる運用実績を土台に、ファミリー層に向けたSTEAM教育や地域連携を組み込んだ新拠点を整備。ロボティクスによって身体の制約を超え、誰もが社会とつながり続ける仕組みが新たな都市インフラとして定着しようとしている。(文=RoboStep編集部)
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(引用元:PR TIMES)
オリィ研究所が開発・提供を手がける分身ロボット「OriHime」は、遠隔操作でありながら「その場にいる存在感」を共有できるロボットだ。難病や重度障害、介護や子育てなど、さまざまな理由で外出が困難な当事者が「OriHimeパイロット」となり、自宅などに居ながら遠隔操作を行う。オーダーテイクや配膳、客との会話といった接客業務を担当するほか、目や指先のわずかな動きで操作できる意志伝達装置などを組み合わせることで、身体を動かすことが難しくても社会とつながり、働くことができる環境を実現している。
この技術を活かした「分身ロボットカフェDAWN」は、2021年に東京・日本橋へ常設1号店を開業した。年間約6万人の来訪者を迎え、肢体不自由やALSなどの難病、精神疾患などを抱える約100名の「OriHimeパイロット」が遠隔操作による接客を担当してきた。
(引用元:PR TIMES)
2025年にはデンマークで海外実験カフェを開催したほか、カフェでの経験を通じて自信を得たパイロットが一般企業へ就労する「卒業」の事例も生まれている。事業者や自治体へのOriHime導入実績も800件を超え、遠隔就労モデルの社会実装は着実な広がりを見せる。
2027年8月に開業を予定する横浜店では、ファミリー層が多く訪れる地域特性を反映し、「社会課題解決型STEAM教育」を掲げたワークショップを提供する。パイロットとの対話を通じ、子どもたちがものづくりの原点や課題解決の視点を体験できるプログラムを定期開催する予定だ。
オリィ研究所による分身ロボットカフェの横浜出店が示唆するのは、分身ロボットが「特別な福祉的支援の枠組み」にとどまることなく、都市空間における「社会参加の標準的な選択肢」として機能し始めたという事実である。
これまでは、寝たきりの状態にある人々が社会へ関与する手段は限られていた。しかし、遠隔操作ロボットというインターフェースを活用することで、身体的な制約を受けずに自身の経験やコミュニケーション能力を発揮できる環境が整いつつある。これは、外出が困難な当事者に就労の機会をもたらすだけでなく、労働力不足に直面する社会にとっても、埋もれていた多様な知見やスキルを社会へ還元する道を開くものだといえる。
また、本取り組みは、移動の制約を抱える当事者と技術者が現場で交わる共創モデルでもある。AIやロボティクスの急速な進歩に伴い、開発現場では「誰のために技術を使うべきか」という目的意識が問われている。日常の困難と向き合うOriHimeパイロットとエンジニアを目指す若者が直接対話し、課題を発見して手を動かす横浜店の教育的な試みは、技術開発が真に人の役に立つ方向へ進むための確かな土台となるだろう。
身体の自由が制限される事態は、誰の身にも起こり得る。オリィ研究所が横浜で提示した就労モデルは、誰もが社会とつながりを持ち続け、役割を果たせる未来を形作るための現実的な一手となるはずだ。
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