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2026.08.13

AIの判断を現実へ。超音波モータの挑戦

生成AIやAIエージェントが高度な分析力や正確な判断力を備えていても、その指令を現実世界の動作や移動へつなげる技術がなければ、作業の自動化を果たすことはできない。AIという「頭脳」の能力を実世界で生かすには、それを物理空間で正確に体現する「身体」となる技術が必要だ。こうしたデジタルと物理世界の接続は、AIの活用領域を広げる上で重要なテーマとなっている。
こうした環境下において、超音波モータや自律移動ロボット(AMR)を通じたグローバル展開を進める株式会社Piezo Sonicは、2026年5月、経済産業省 中小企業庁の「2025年度 はばたく中小企業・小規模事業者300社」海外展開部門に選定された。AIの判断を現実世界の価値へ変換するアクチュエータ技術。この“身体の精度”を追求する取り組みが、フィジカルAI時代の新たな産業基盤を形作ろうとしている。(文=RoboStep編集部)

超音波モータとAMR。極限環境で磨かれた高精度なアクチュエータ


(引用元:PR TIMES

2026年5月29日、Piezo Sonicは経済産業省 中小企業庁が主催する「2025年度 はばたく中小企業・小規模事業者300社」の海外展開部門に選定され、表彰式において表彰を受けた。日本発のモータおよびロボット技術をグローバル市場へ展開してきた独自の取り組みが高く評価された結果である。

(引用元:PR TIMES

同社の核となる技術が、自社開発の「ピエゾソニックモータ(超音波モータ)」だ。同サイズの一般的な電磁モータと比較して高いトルクを持ちながら、高精度な位置決め性能、無通電保持性能、非磁性といった特長を備えている。従来の課題であった長寿命化を達成したことで、医療機器や半導体製造装置、精密計測機器に加え、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究による月面探査ロボット向けモータ開発など、高度な信頼性が要求される環境で採用が進んできた。国内外の賞を受賞するなど技術力への評価も高く、精密な制御が求められる多様な産業分野へ普及している。

(引用元:PR TIMES

さらに同社は、モータ単体の提供にとどまらず、屋内外のシームレスな走行を可能にする自律移動ロボット(AMR)「Mighty-D4」の開発も推進している。これは、従来の屋内向けロボットでは走行が困難であった段差や屋外路面に対応し、物流や建設、インフラ点検などの現場における人手不足の解消を目指すものだ。AIの判断を実際の移動や作業へと直結させる移動プラットフォームとして、実用化が進められている。

(引用元:PR TIMES

AI時代に求められる身体。フィジカルAIを支える現実世界の基盤

Piezo Sonicの取り組みが示唆するのは、AIの進化に伴い「アクチュエータや機構技術」の持つ役割が再定義されつつあるという事実だ。

近年、AIは人間と同等以上の速度で情報を処理し、最適な判断を下せるようになった。しかし、その判断を現実世界で実行するためには、信頼性の高いモータやロボット機構が欠かせない。頭脳であるAIがどれほど高度化しても、指示通りに動く身体がなければ、現実の社会における価値は生まれないからだ。高精度な位置決めや無通電保持を可能にする超音波モータは、これからのフィジカルAI社会を支える不可欠なハードウエア基盤となるだろう。

また、自社でハードウエアからソフトウエアまでを一貫して手掛け、海外市場へ果敢に挑むPiezo Sonicの姿は、日本の製造業における新たなモデルケースといえる。物流や建設、インフラ点検といった現場作業を自動化する手段として、伝統的な精密メカトロニクス技術とAIを結びつける取り組みは、世界市場において日本の強みを再構築する大きな推進力となるはずだ。

2026年、ロボティクス分野はAIとハードウエアが真の意味で統合されるフェーズに入った。Piezo Sonicの挑戦は、日本の高い技術力を世界へ示すとともに、AI時代の産業基盤を強固にするための重要な足がかりとなるだろう。