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2026.05.27

「力の感覚」がリアルタイムで伝わる。身体を拡張する重機

AIによる完全自動化がもてはやされる中、あえて「人間の手で操る」ことにこだわるロボットがある。建設現場やインフラ保守など、想定外の事態が頻発する過酷な環境では、人間の柔軟な判断力がどうしても必要になるからだ。
機械にすべてを任せるのではなく、人間の操作に機械のパワーを同調させる。最新の制御技術と高速なデータ処理が結びつくとき、「機械による労働の代替」とは異なるあり方、すなわち「人間の身体の拡張」という新たな扉が開かれる。(文=RoboStep編集部)

力が伝わる、直感で操る協働ロボット


(引用元:PR TIMES

2026年4月、東京ビッグサイトで開催されたIT展示会において、ある先進的なロボットが初公開された。開発したのは、先端ロボット工学の技術を用いて「人間機械相乗効果器=人機」のプラットフォーム化を推進する株式会社人機一体である。

同社は産業用パソコン市場で世界トップシェアを誇るアドバンテック株式会社と「制御」に関する協業について、協議を開始。その第一歩として共同で展示を行った。アドバンテックは40年以上にわたって産業向けに高性能な機器を開発し、「AIとIoTを通じ社会課題を解決する」というビジョンを掲げる企業だ。


(引用元:PR TIMES

会場でひときわ注目を集めたのが、人が直感的に操作できる「人機バイラテラルアーム」だ。最大の特長は、独自の力制御技術により、操作している人間に「力の感覚」がリアルタイムで伝わる点にある。協働ロボットを作業機と操作機として2台使用し、手元の機体を動かすと、離れた場所にある作業用のアームが、まるで自らの身体の延長であるかのように滑らかに連動する。これにより、物理的な衝撃を吸収しつつ、繊細さと大きな力を必要とする重労働を安全に行うことができる。

(引用元:PR TIMES

さらに、電力分野など高所での巧緻な作業を目指して開発中の人型重機「一零式人機 ver.1.0」の試作機も展示された。同社のビジョンである「過酷な現場での苦役を解消する」という強い思いが、アニメーション監督の河森 正治 氏らも関与した強靭かつ洗練された機体デザインに色濃く反映されている。

自動化の壁を越える。人と機械の相乗効果

多くの企業がロボットの完全な自律化を目指す中、両社の連携と技術展示は、社会実装におけるもう一つの現実的な解を提示している。

さまざまな産業でAIを用いてあらゆる作業を無人化しようとする試みが進んでいる。しかし、建設やインフラのメンテナンス、災害対応といった現場は、天候や対象物の状態が常に変化し、予測不可能な事象が絶えず発生する。こうした非定型な環境において、機械単独で瞬時に最適な判断を下し、柔軟に作業を遂行することは極めて困難だ。

そこで真価を発揮するのが、「人間の高度な判断力」と「機械の圧倒的なパワー」を融合させるアプローチである。人間が安全な場所から直感的にロボットを操り、力感覚を共有しながら重労働を行う。この仕組みを社会に実装するためには、ロボットが受ける膨大なセンサー情報を現場の端末側で瞬時に処理し、遅延なく人間にフィードバックする環境が不可欠だ。アドバンテックが提供する高品質なエッジコンピューティングのノウハウは、この複雑な制御を根底から支える重要な基盤となる。

労働人口の減少とインフラの老朽化が同時に進行する中で、危険を伴う現場の作業をどのように維持していくかは深刻な課題となっている。人間を現場から排除するのではなく、機械を通じて人間の身体能力を拡張し、過酷な労働から解放していく。この思想は、AIが人間の仕事を奪うという単純な二項対立ではなく、テクノロジーが人間の可能性を広げるという本来のあり方を示している。

ロボット工学と情報処理のプロフェッショナルが結集するこの取り組みは、技術の限界を人と機械の相乗効果で補い合い、より安全で強靭な産業基盤を築き上げるための確かな一歩となるはずだ。