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2026.04.16

異機種ロボ連携。被災地調査の完全無人化へ

崩れかけた壁、散乱するがれき。大規模災害の直後、倒壊の危険がある建物内で行う被害調査は、熟練の技術者であっても二次災害のリスクが高い過酷な任務だ。この「命がけの現場」に、人間と同じように道具を使いこなす人型ロボットと、悪路を乗り越える四足歩行ロボット、空から俯瞰するドローンがチームを組んで挑む。複数の異なるロボットが互いの弱点を補い合い、人間が一切立ち入ることなく被害状況をしっかり把握する。人間が踏み込めない危険地帯を機械のチームワークで切り拓く無人調査システムの実証実験が、日本のスタートアップと国立研究機関の手で本格始動した。(文=RoboStep編集部)

ドローン・四足・人型が連携。機材を扱うヒューマノイド

2026年3月11日、VRやARなどの実用アプリケーション開発を手掛ける株式会社ポケット・クエリーズは、国立研究開発法人建築研究所との共同研究として、ヒューマノイドおよび四足歩行ロボットの協調制御による被災建築物調査の無人化システム開発に着手し、段階的な実証実験を開始したと発表した。

従来の四足歩行ロボット単体では、不整地の移動は得意でも、人間用の調査機材を扱ったり、現場で直感的な状況判断を下したりすることが困難だった。そこで本プロジェクトでは、新たに二足歩行のヒューマノイドロボット(フィジカルAI)を導入。

(引用元:PR TIMES

ドローンが上空から全体をスクリーニングし、四足歩行ロボットががれきなどの不整地を移動、そしてヒューマノイドがレーザー距離計などの「人間用機材」を直接操作して計測を行う。遠隔地の操作拠点と現場のロボット群をネットワークで繋ぎ、VRゴーグルなどを用いて視点を同期させることで、まるで人間がその場にいるかのような直感的な遠隔操作を可能にする。異常を発見した際には、ロボットが頷きや指差しといった「身体的な動作」を行うことで、現場との強い実在感を生み出すという。

(引用元:PR TIMES

さらに、AIの画像認識による損傷検知から、写真撮影、危険度判定、既存フォーマットへの帳票自動入力までを一気通貫で無人化。声による指示だけで調査記録が完結する、極めて効率的な作業環境を構築している。すでに実際のフィールド環境での実証実験も進んでおり、人間による目視調査とロボット群による無人調査の特性差が定量的に明らかになりつつある。

「フェーズフリー」な備え。災害大国を支える群ロボット

このプロジェクトが示す本質的な価値は、災害対応のプロセスにおいて「人間の命を危険に晒すリスク」をできる限り排除し、テクノロジーによる代替の道筋を示した点にある。

深刻化する自然災害に対し、現場調査を担う専門技術者は慢性的に不足している。複数の異なる強みを持つロボットが連携して現場対応を行い、人間は安全な遠隔地から指揮を執る。この分業体制が確立されれば、人材不足を補うだけでなく、二次災害のリスクを抑えながら、迅速かつ網羅的な復旧計画の立案が可能となる。

また、このシステムが「フェーズフリー」を掲げている点も極めて重要だ。フェーズフリーとは、日常時と非常時の垣根をなくし、普段使っているモノやサービスを災害時にも役立てるという概念である。平常時のインフラ点検や建設現場の巡回で活躍しているロボットたちが、災害発生時にはそのまま調査チームへとシームレスに移行する。特別な緊急用機材として倉庫に眠らせておくのではなく、日々の業務で活用しているデジタルインフラが、いざという時の強靭なセーフティネットとして機能するのだ。

これまで単体のロボットでは突破できなかった物理的な壁を、異機種のチームプレーとフィジカルAIの力で乗り越えていく。災害大国である日本が直面する安全性と労働力不足というジレンマは今、最先端のロボティクスによって解決されようとしている。