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2025.05.02

日本の災害・防災対策の現状とロボット活用の可能性

全世界の活火山の7.1%が日本にあり、気象庁によると全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の17.9%が日本で発生している※出典:内閣府「令和元年版防災白書」より言わずもがな、日本は自然災害大国だ。そんな日本においても、防災・災害対策へのロボット活用は道半ば。『一人でも多くの命を救うために』地道な取り組みが続いている。

現状の課題、ロボット活用で目指すべき方向性について、RobiZyで災害・防災DX部会長を務める株式会社ロボットコネクト代表取締役 末廣 祐弥 氏と特定非営利活動法人 日本災害救助活動支援隊 理事長 安藤 敏昭 氏が大いに語り合った。

(写真左)(聞き手)株式会社ロボットコネクト 代表取締役 末廣 祐弥 氏
(写真右)特定非営利活動法人 日本災害救助活動支援隊 理事長 安藤 敏昭 氏

※本記事は『RoboStep Magazine【RobiZy特別編集版】』に掲載した記事を再掲載したものです。
その他の記事は、冊子電子書籍でお読み頂けます。


普段使いもできるロボットにチャンスあり⁉

末廣 安藤さんは現役の消防士でいらっしゃいますね。

安藤 はい、現在千葉県内消防本部 警防課 警防係に所属しています。現場経験も長く、東日本大震災時には、千葉県第一派遣隊として出場しました。

末廣 実は私も元消防士なんです。東京消防庁に勤務し、最後は情報通信課で無線係を担当。ロボットを使った人命救助を実現することを目指し、ロボットコネクトを創業しました。現在は、ロボット市場全体を盛り上げるための活動を行っています。安藤さんが日本災害救助活動支援隊(以下、支援隊)を立ち上げた経緯を教えてください。

安藤 1994年から2017年まで、特別救助隊として23年間活動しました。東日本大震災で救助活動にも参加しましたが、山のような瓦礫を前にできることも限られ、無力さを感じました。これが契機となり、職場では補えない各種災害対応のスキルを身につけるため、消防有志チーム「&E.」(アンドイー)を結成。消防での知識、経験及び東日本大震災での教訓を活かし、重機などを使った民間企業との連携救助活動訓練などを有志メンバーと続けてきました。2023年、その活動をさらに広げるために支援隊を設立しました。

末廣 東京消防庁時代、災害・防災に少しでもロボットを役立てたいと考え、勉強もしていましたが、なかなか実現できず、私自身もどかしい面もありました。習志野市はいかがですか。

安藤 東京消防庁とは規模は違うかもしれませんが、「市や住民を守る」活動のなかで、新しい取り組みは敬遠されがちだったり、そもそも予算が取れなかったり、自治体としての課題を感じます。一方で、民間企業は、災害現場で役立つ機材を持っていても、使用する機会がない。そもそも現場を想定した実証実験もできていない。自治体と民間企業が連携することで、多くの命が救えるのでは、と思ったことも支援隊を設立した大きな理由です。

末廣 民間企業との連携は本当に重要ですよね。私もロボットコネクト創業以来、さまざまな企業の方とお話していますが、防災市場に興味を持ってくださる企業は増えています。ただ、いつ起こるか分からない災害のためにピンポイントで活用するロボットでは、ビジネスが成り立たない。「普段使いもでき、災害対策にも使えるロボット」が求められているように思います。

安藤 ロボットの開発もそうですが、それが活用できるインフラも重要ですね。例えば、米ニューヨーク市警が導入すると話題になったロボット犬も、災害・防災での活躍が期待されていますが、電源や電波を確保しなければ活用できない。屋外では動くけれど、屋内に入った瞬間に止まってしまっては役に立ちませんからね。


人とロボットが連携した災害・防災対策を目指して

(左)産業用ドローンでの実演風景。40㎏から50㎏の重量物を指揮所から救助現場まで安全かつ迅速に運ぶ
(右)災害時、高所への重量物運搬、孤立村落への物資輸送などに威力を発揮する

末廣 現実的に実装が進み始めているのはドローンですかね。災害発生時は初動が大事。空から被災地を撮影して被害状況や遭難者の有無を確認できるようになるのは大きいです。

安藤 支援隊でもドローンを活用し、土砂崩れを想定した訓練を行いました。小型ドローンを活用し、上空から救助状況などを指揮所に送ることで、周囲の状況を確認しながら救助活動を行うことができ、手ごたえを感じました。

末廣 他にどういった救助訓練をされているんでしょうか。

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