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2025.04.07

ロボットハンドの基礎知識 〜タイプ別の特徴と導入時のポイント〜

人間の手の役割を担う「ロボットハンド」。産業用ロボットの先端に取り付けられ、人間の手の代わりにさまざまな作業を行います。工場の生産ラインや倉庫での物流作業、食品製造の現場など、あらゆる現場で一般的なマニュピレータですが、意外とその種類について知らない人も多いのではないでしょうか。

従来は単純作業への適用が中心でしたが、近年の技術発展により、繊細な作業や不定形物の取り扱いなど、より複雑な工程にも対応できるようになってきました。特に、AIやセンサー技術の発展により、柔軟な動きや精密な力加減の制御が可能になったことで、ロボットハンドの活躍の場は急速に広がっています。改めておさらいしましょう。

ロボットハンドの基本タイプ

ロボットハンドは、ワーク(ロボットハンドが扱う対象物)を扱う方法によって分類できます。それぞれ異なる特性を持っているため、扱うワークや作業内容に応じて最適なタイプを選択することが重要です。主なタイプとして、把持型、吸着型の2種類があります。

把持型ロボットハンド

(引用元:ブリヂストン)

把持型ロボットハンドは、人間の手のように指を開閉させてワークを掴むことができます。2本から多指までさまざまな構造があり、駆動方法によって電動式と空気圧式に分類されます。

電動式把持ハンド

電動式把持ハンドは、モーターを使用して指を開閉するロボットハンドです。位置や力の細かい制御が可能で、多様なワークに対応できる柔軟性が特徴です。精密な部品の組み立てや、サイズや形状が異なる複数のワークを扱う現場で力を発揮します。

空気圧式把持ハンド

空気圧式把持ハンドは、コンプレッサーからの圧縮空気により指を開閉するロボットハンドです。シンプルな構造でメンテナンス性に優れ、強い把持力を発揮できることが特徴です。重量物の搬送や、確実な固定が必要な加工工程で多く使用されています。

吸着型ロボットハンド

(引用元:オムロン)

吸着型ロボットハンドは、ワークを掴むのではなく、吸引力や磁力を利用して保持するロボットハンドです。把持型に比べて操作が素早く、サイクルタイムの短縮に貢献します。

真空式吸着ハンド

真空式吸着ハンドは、吸着部の内部を真空にして対象物を吸着させることができます。平らな面を持つ対象物を素早く吸着・解放できるため、効率的な搬送が可能です。ガラスや金属の板材、段ボール箱など、表面が平滑な製品の搬送に適しています。ただし、表面が凹凸したワークには適さないため、対象物の特性を考慮した選定が必要です。

磁力式吸着ハンド

磁力式吸着ハンドは、電磁石や永久磁石を利用してワークを吸着するロボットハンドです。表面に多少の凹凸があっても吸着できるため、真空式が苦手とする形状のワークにも対応できます。鉄や鋼など磁性体のワークにしか使用できませんが、穴あき板や複雑な形状の金属部品の搬送などで優れた性能を発揮します。

ロボットハンド選定のポイント

(引用元:AXIS web)

ロボットハンドの導入においては、ワークの特性や作業内容に適したハンドを選ぶことで、生産性向上や品質安定化といった効果を最大限に発揮できます。

ワークに適した把持力・吸着力

ロボットハンドの選定において最も重要なのは、扱うワークに適した把持力や吸着力です。力が弱すぎるとワークを落下させる原因となり、強すぎるとワークを変形させたり破損させたりするリスクがあります。ワークの重量や材質、形状を考慮して、最適な力で保持できるハンドを選定する必要があります。

材質と耐久性

ロボットハンドの材質は、ワークとの適合性や耐久性に大きく影響します。金属や樹脂、ゴムなどさまざまな材質があり、用途に応じた選択が必要です。また、食品や医薬品を扱う現場では、衛生面や清掃のしやすさも重要な選定基準となります。

制御精度と動作速度

ロボットハンドの制御精度と動作速度は、作業効率と品質に直結する重要な要素です。求められる精度や速度に応じて適切なタイプを選定する必要があります。生産ラインの要求サイクルタイムを満たせるよう、適切な制御精度と動作速度を持つハンドを選ぶことが成功の鍵となります。

導入・運用コスト

ロボットハンドの導入・運用には、初期費用だけでなく、メンテナンスや消耗品交換などの継続的なコストも考慮する必要があります。特に吸着パッドやゴム部品は定期的な交換が必要となるため、長期的なコスト計算を行うことが重要です。また、汎用性の高いハンドを選ぶことで、生産品目の変更に伴う設備投資を抑えられる場合もあります。

さらに高度なロボットハンド技術も?

ロボットハンド技術は急速に進化しています。触覚センサーを搭載したハンドは、人間の指先のような繊細な感覚を再現し、3Dビジョンとの連携でバラ積み部品の最適把持も可能になりました。さらに、AI技術の導入により「自己学習型」ロボットハンドも登場し、これまで自動化が困難だった複雑な作業にも対応できるようになっています。

人手不足に悩む産業界において、適切なロボットハンドの選定と活用は、生産性向上と品質安定化の鍵となるでしょう。