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2025.04.17

【連載】知恵で勝つ!売上アップの処方箋(第7回)~「強みの再定義」でヒット商品は生まれた(株式会社もちのき)

釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz)ご協力のもと、お届けしている本連載。JapanStepの後援に参画するk-Bizが所属する全国Bizネットワークが手掛けた「中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション」の成功事例を紹介している。第7回は、和洋菓子製造小売業を手掛ける老舗企業が「映える」和菓子で再飛躍を果たした事例だ。多くのメディアで取り上げられ、日本の将棋界を代表する棋士・藤井聡太さんの対局でもおやつに採用されるなど、注目を浴びた「どらサンド®」はいかにして生まれたのか。(文=JapanStep編集部、協力=釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz))

時代が求める“映えるスイーツ”への挑戦

明治38年創業、富士山の麓・静岡県富士宮市に本社を構え、和菓子・洋菓子の製造販売を手掛ける株式会社もちのき。地元で長年親しまれてきたこの店が、今、全国から注目を集めている。きっかけとなったのは、和と洋の融合から生まれた“映える”新感覚スイーツ「どらサンド®」だ。

ネット通販の拡大やコンビニスイーツの台頭、競合店の増加など、スイーツは日々競争が激化している。そんな中で同社が選んだのは、伝統を守るだけではない“革新”の道だった。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

全国Bizネットワークの支援で行われたのは「強みの再定義」だ。もちのきの最大の特徴は、100年以上の歴史の中で培ってきた「和菓子と洋菓子、両方を製造できる技術」と「変化を恐れない開発力」。この2つを活かし、時代が求める“映えるスイーツ”に挑戦することになった。

新商品の着想は、イベント販売で好評を博していた“どら焼き生地を使ったクレープ”から。これを本格商品へと昇華させ、「和洋折衷」×「映え」×「高品質」のコンセプトで生まれたのが「どらサンド®」だ。

もちもちのどら焼き生地に、生クリームやフルーツを贅沢にサンド。和菓子の親しみやすさと洋菓子の華やかさを併せ持つこのスイーツは、発売直後から話題沸騰。リピーターが絶えず、今では同社の看板商品に成長した。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

地元を大切にし、地元に愛されるヒット商品は全国へ拡大

注目度の高さはメディアの反応にも表れている。2020年にはフジテレビ「めざましテレビ」で紹介され、東京・二子玉川や表参道の人気カフェともコラボ。2022年には将棋の竜王戦第3局(日本の将棋界を代表する棋士藤井聡太さんの対局)でおやつにも選ばれ、SNSやニュースでも取り上げられた。こうした流れがさらなる話題を呼び、どらサンド®はヒット商品となった。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

快進撃を支えたのは、地元密着の素材選定や店舗展開にもある。素材には富士山の麓で育てられた地元産の鶏卵や牛乳を使用し、「富士宮の味」としてのこだわりを徹底。また、富士宮市・富士市内に4店舗(小泉・宮原・今泉・松野)を構え、地域住民への販促とギフト需要を両立している。贈答用の詰め合わせにも力を入れており、「地元から全国へ」の導線も整えた。

さらに注目すべきは、芝川地域の梅など地元農産物を活用した商品開発にも取り組んでいる点。行政や商工会と連携し、補助金や販路支援も積極的に活用。「地域資源×商品力」で高付加価値商品を生み出す姿勢は、まさに中小企業の持続可能な成長モデルといえる。

「変わらないために、変わる」。もちのきの挑戦は、伝統企業が“温故知新”の精神で現代の市場にどう応えるかを示す好例だ。競争が激化する菓子業界において、技術・ストーリー・デザインを融合させた「どらサンド®」は、単なる商品を超えた“ブランド資産”となりつつある。

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