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2025.04.15

【連載】知恵で勝つ!売上アップの処方箋(第6回)~「技術転用」で勝つ成功のセオリー(株式会社フードランド)

JapanStepの後援として参画する釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz)ご協力のもと、お届けしている本連載。全国Bizネットワークが手掛けた「中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション」の成功事例を紹介している。第6回は、静岡県の老舗食品企業 株式会社フードランドの事例を紹介する。同社がチャンスを掴んだのは、「酵素を使って硬い肉をやわらかくする」技術を転用し、新たなビジネスに踏み出したことがきっかけだ。主役を「製品」ではなく「技術」にし、事業を拡大した取り組みに迫る。(文=JapanStep編集部、協力=釧路市ビジネスサポートセンター(k-Biz))

食品ロスや農業課題が叫ばれるなか、静岡県の老舗食品企業 株式会社フードランド(以下、敬称略)が仕掛けたのは、廃棄されるはずの果物を“粉”に変える技術だった。1931年、中村精肉店として創業した食肉・食品加工卸、給食・飲食事業を手がける同社が、新たな領域に踏み出した背景には、技術の「価値転換」によるビジネスモデルの転換があった。

ヒントは、社内で長年活用されてきた「酵素を使って硬い肉をやわらかくする」技術だった。その応用先として見出したのが、“廃棄みかん”だった。通常は捨てられてしまう皮や芯まで、丸ごとペースト・粉末化する独自の加工技術を開発。果物の風味や栄養をそのまま残しながら、保存性にも優れた素材へと変貌させたのだ。

当初は、シャーベットやジュースとしての販売をレストランやスーパーで試みたところ、シャーベットやジュースは評判がよかった。が、競合も多かった。ここで全国Bizネットワークが支援に入り、ビジネスモデルの視点を転換。主役は「製品」ではなく「技術」そのものであると再定義された。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

戦略の展開で多様な業種から引き合いが殺到

ジュースやシャーベットとして消費者に売るのではなく、「果物をまるごと粉末化できる技術」を他企業へ提供するというBtoB戦略へシフト。この技術は、「ご当地果物を使った商品を作りたいが加工設備がない」と悩む企業にとって、まさに待ち望んだソリューションだった。

結果、大手食品メーカー、老舗和菓子店、地元農家、さらには酒造メーカーやベーカリーまで、多様な業種からの引き合いが殺到。静岡県産の果物を使った加工品が、ランチパックや缶チューハイ、ハイボール、和菓子、総菜、さらにはコンビニスイーツまで、全国に展開されていった。

(引用:澄川氏作成『ビズモデルから生まれる中小企業の強みを生かしたオープンイノベーション』)

特筆すべきは、単なる技術供与にとどまらず、メディアを通じたPR戦略で認知度を高めると共に、国の「地域産業資源活用事業計画」の認定もサポートし、ブランド力を向上させたことだ。

株式会社フードランドの成功は、中小企業にとって極めて重要なメッセージを含んでいる。それは、「持っている技術は、用途を変えれば新たな市場を創造できる」可能性があるということ。技術を売るには、何が誰にとっての“課題解決”になるのかを明確にし、それを“伝わるカタチ”に落とし込むことが不可欠である。そして、“商品”よりも“仕組み”に価値を見出す視点が、長期的な展開を可能にするのだ。

中小企業が持つ“ありふれた技術”を“唯一無二の価値”へと昇華させるために、必要な発想のひとつは「転用の視点」なのかもしれない。

第7回につづく)

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