中国税関総署はこのほど、2026年1~5月におけるロボットの輸出台数が1,037.7万台、輸出総額が199.9億元(約4,800億円)に達したと発表しました。2025年通年の輸出総額は119.7億元(約2,900億円)であることから、わずか半年足らずで前年実績を倍近くになるという急成長ぶりということとなります。
※参考:中国国家インターネット情報弁公室 199.9億元は清掃ロボットや産業用ロボットなどを含むロボット全体、119.7億元は産業用ロボットのみ)
かつてロボット製品では外国からの輸入に長く依存してきた中国ですが、昨年、通年の輸出額が輸入額を上回り「ロボット輸出国」へ転じるなど、その競争力は着々と増してきています。その輸出先もEU、ASEAN諸国を中心に世界150余りの国・地域にも及び、伝統的ロボット強国であるドイツや日本への輸出も伸びていて、この二ヶ国にも劣らぬ地位を固めつつあります。
そこで今回は直近データを参照に、中国のロボット輸出の状況や傾向について、主要なロボット種類別にご紹介します。
担当ライター 花園祐(はなぞの・ゆう)
中国・上海在住のブロガー。通信社での記者経験を活かし、経済紙などへ記事を寄稿。独自の観点から中国のロボット業界を考察する。好きな食べ物はせんべい、カレー、サンドイッチ。
さっそくロボット輸出の内訳からみていくと、まずその輸出額の7割に相当する約140億元(約3,400億円)をお掃除ロボット(クリーンロボット)が占めているという点が目に付きます。
もはやおなじみの家庭用ロボット掃除機は日本の売場を見るだけでもわかる通り、中国メーカー製が市場を支配する状態にあります。こうしたロボット掃除機市場はグローバルで順調に拡大しており、その恩恵を受ける形で中国のロボット輸出額も急成長しているのが現状です。
またこのクリーンロボットに関しては近年、従来の家庭用ロボット掃除機だけでなく、工場や商業施設向けの商業用ロボット掃除機でも中国勢の躍進が目立ちます。中国テックメディアのCNMO科技の報道によると、世界の商業用ロボット掃除機出荷台数上位3社は、上海擎朗智能科技股份有限公司(KEENON)、深圳市普渡科技有限公司(PUDU)、上海高仙自動化科技発展有限公司(GAUSSIAN)で、いずれも中国企業となっています。この3社の合計出荷台数だけでも世界市場シェアは53.2%に達しており、中国国内以上に海外での売り上げが大きくなっています。
BtoC市場が中心のクリーンロボットだけでなく、BtoB市場に属す産業用ロボットにおいても、これまでの輸入から輸出への転換が活発化してきています。
2026年1~5月における中国の産業用ロボットの輸出台数は約7万台で、かつての主要な輸入元であったドイツや日本に対する輸出も増加しています。具体的な成長率を見ると、同期における中国の産業用ロボット輸出額はドイツ向けが前年同期比84%増、日本向けが同36.5%増でした。
過年度データを追うと、2021年から2025年にかけて中国の産業用ロボットの輸出額は26.8億元(約640億円)から119.7億元(約2,870億円)に成長しており、この間の年複合成長率は45.4%を記録しています。
このほかサーボモーター、減速機、PLCなどの産業用ロボットのコア部品の国産化も近年、中国では大きく進んでいます。産業用ロボットの国産化は中国政府も大きく奨励しており、またこれら部品を供給する高い競争力を秘めた中国企業も現れてきており、産業用ロボットの輸出規模は今後数年間、高い成長が続くのではないかと筆者はみています。
人型ロボットを含む生物を模したバイオニックロボットも、近年の急速な技術革新に伴って輸出市場が形成されつつあります。
バイオニックロボットとは、生物の構造や機能、動きを模して作られたロボットのことです。人工の皮膚や柔軟なアクチュエータ、AI制御を組み合わせることで、人間の滑らかな表情や、動物・昆虫のリアルな動きを再現し、医療や接客、研究分野で活用されています。
人の手と触れ合うバイオニック3D電子皮膚を備えたロボットハンド(北京=新華社配信)
北青網の報道によると、2026年1~5月における中国のバイオニックロボットの輸出台数は8,000台超で、5月単月の輸出額は過去最高となる1.39億元(約33億円)を記録しました。現状、金額的には前述のクリーンロボットと比べるとまだ非常に小さい水準ではあります。しかしこの分野は中国が技術面で大きくリードしており、今後各地で応用が進んで市場が拡大した場合、電気自動車や電池などのような輸出の柱となるのではないかと将来性を期待する声も見られます。
ではこれらバイオニックロボットは主にどのような国へ輸出されているのか。2026年第1四半期のデータを参照したところ、輸出金額順では米国(741.2万米ドル)、日本(599.9万米ドル)、韓国(260.5万米ドル)という順番なっていました。ただ台数順で見た場合、日本が2,471台と米国(679台)、韓国(108台)を大きく突き放す輸入台数となっていました。

この中国のバイオニックロボットの日本向け輸出データを見て筆者は、実際に中国から輸入されたバイオニックロボットは具体的にどこで、どのように使われているのかが気になりました。いくつか日本国内の情報を検索したところ、真っ先に目に入ってきたのがJAL(日本航空)における導入実験例でした。
日本航空、JALグランドサービス、GMO AI&ロボティクス商事は2026年4月、羽田空港のグランドハンドリング業務におけるヒューマノイドロボット活用の実証実験を同年5月から開始すると発表しました。手荷物・貨物の搭降載や機内清掃などを検討領域とし、省人化と作業負荷の軽減を目指します。
(引用元:JAL公式リリース)
この実験には、中国の宇樹科技(Unitree)製の人型ロボットと、優必選科技(UBTECH)製のサービス用人型ロボット「Walker E」が導入されています。
参考:人民網日本語版「中国製ロボットが世界で大活躍 価格競争型から価値型の海外進出へ」
その他の導入例も労働現場での導入試験や研究機関などでの実証研究などで、大々的な応用導入はほぼ全く見られませんでした。もっともこれは中国国内でも同じで、製造現場に投入こそされてはいるものの試験的導入にまだとどまっています。
ただこうした導入実験で使われる人型ロボットは現在、既に量産にまでこぎつけている中国が大半を世界各国に供給している状況です。そのため人型ロボット関連の規格争いは現在、中国が主導権を握りやすい状態にあると指摘されており、この点については筆者も否定できません。
ただこの導入実験段階で人型ロボットに求められる機能やニーズをしっかりと特定し、それを開発に反映することこそが、今後の開発競争において何より重要になってくるでしょう。たとえ中国製の人型ロボットでも日系企業においては積極的にその運用を試験し、得られたフィードバックを集約していくことこそが現状においても正しい選択であるように思います。日系ロボット関連企業各社におかれては、今後はより応用、特に市場化という観点を重視してロボット開発競争に取り組んでいただければと密かに願っております。