1. RoboStep TOP
  2. ロボット活用のリアルを解く
  3. ドローンが通信インフラへ進化!? NHKの伝送技術で災害時に活躍

2026.07.22

ドローンが通信インフラへ進化!? NHKの伝送技術で災害時に活躍

 大規模災害により道路の崩落や火災の発生が起こると、報道車両や報道ヘリは現場に近づけない。こうした局面でドローンによる空撮が有効なことは広く知られているが、撮影した映像をリアルタイムで遠方に届ける手段は携帯電話回線に依存しているのが実情だ。この課題に対し、放送事業者が長年培ってきた自営無線回線の技術をドローンに搭載するという新たなアプローチが示された。

FPUの小型化に成功。報道局のドローン活用が加速

2026年5月15日、NHK放送技術研究所は、放送事業用の自営無線回線(FPU)を活用した「空飛ぶロボカメ」と「IP回線中継ドローン」を開発したと発表した。災害が発生した地域や大きな事故現場では、道路の崩落や火災の発生などにより報道車両や報道ヘリが近づけない場所が生じる。このような場所の状況を正確に撮影し、リアルタイムで届けることを目的の一つとしている。

引用元:PR TIMES

報道用ドローンの映像伝送には携帯電話回線が用いられてきた。その理由は、報道ヘリや報道車両などで活用するFPUのような安定した伝送装置の小型化が難しいためだ。

現場で撮影された映像は、FPUを通じて放送局の屋上や山頂の鉄塔などに設けられた受信基地局へ送信される。この際に現場では報道ヘリや報道車両に搭載したアンテナを受信基地局の方向へ制御する必要がある。この方向制御機材は大きく、ドローンに搭載することができなかった。

NHK放送技術研究所が開発した「空飛ぶロボカメ」では、小型アンテナを円周上に360°配置。ドローンと受信基地局の位置情報に基づいてアンテナを受信基地局の方向へ切り替えるシステムを構築することにより、この課題を解決した。2025年12月に行われた実証実験では、約8キロメートル離れた受信基地局に対し、空撮映像の送信に成功している。


引用元:PR TIMES

ただし、「空飛ぶロボカメ」に搭載したFPUは送信専用だ。ドローンから基地局へ映像を送ることは可能だが、基地局の信号は受信できない。機体の監視や制御には携帯電話回線が必要だった。

この課題を解決するために開発されたのが「IP回線中継ドローン」である。信号の双方向の伝送が可能なFPUをドローンと基地局に設置することでIP回線を構築する。2026年3月の実験において、基地局から約7キロメートル離れたドローンとの間でIP回線を構築。映像伝送と機体制御の同時運用に成功している。

新たな通信インフラへ進化する可能性

ドローンを活用する障壁の一つに、電波干渉による通信の遮断や速度の低下がある。そのため、通信基盤を整えられない現場での活用は、空からの映像撮影など一部の用途に限られていた。

しかし、自営回線を活用できるシステムの開発により、現場の映像をリアルタイムで伝送できるようになった。つまり、ドローンはただの撮影機材からリアルタイムで状況を伝える通信機材へ進化したと言えるだろう。

また「IP回線中継ドローン」に備わる通信機能にも着目したい。被災地では携帯電話などの回線が不安定になることも少なくない。もし被災地にドローンによる臨時の回線を届けられれば、安否確認や救助隊の連絡手段の確保、避難所との情報共有などの災害対応を素早く行える可能性が高い。

放送事業者が数十年にわたって運用してきたFPUという成熟した伝送技術はドローンという新たな技術と組み合わさり、社会インフラへ進化する可能性を秘めている。この技術の実用化により、ドローンの社会実装はますます加速していくだろう。