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AIを取り巻く法規制、中国の主な取り組みとは

近年のAI技術の急速な発達に伴い、一般消費者のAI利用も身近なものとなっています。実際筆者の周りでも「AIに聞いてみたんだけど~」という語り口で、その得られたAIの回答を引用する人が後を絶ちません。

このようにAI利用が広がる一方、その濫用や悪用に対する懸念も社会で大きく広がっています。こうした懸念に対しEUをはじめとする一部国・地域では、罰則を含んだAIに対する法規制を既に公布、施行しています。しかし新興技術ゆえに、その具体的な法整備や運用法については今も活発に議論が続けられています。また規制が技術開発の妨げとならないよう、規制と奨励におけるバランスをどうするかに関してもさまざまな意見が出され、試行錯誤が続けられています。

AIの技術開発競争で米国とともにリードするとされている中国においても既に、AIに対する関連法規やガイドラインなどが公布されています。そこで今回は、AIを取り巻く法規制に対する、中国の取り組み事例を簡単にご紹介します。

担当ライター 花園祐(はなぞの・ゆう)

中国・上海在住のブロガー。通信社での記者経験を活かし、経済紙などへ記事を寄稿。独自の観点から中国のロボット業界を考察する。好きな食べ物はせんべい、カレー、サンドイッチ。

既存法規に照らして処罰

中国においてAIサービスに対するベーシックな政令としては、2023年に施行された「生成AIサービス管理暫定弁法」(生成式人工智能服務管理暫行弁法)がそれに当たります。同弁法ではAIとは何かを定義しているほか、その技術開発や利用の発展、奨励に向け、措置をとる方針が掲げられています。また生成AIサービスの提供や使用に当たっては、下記のような内容を基本原則として盛り込んでいます。

Ÿ   国家の安全や利益を脅かしてはならない。

Ÿ   民族や信仰などによる偏見を防止する措置を講じること。

Ÿ   知財権や肖像権を侵害してはならない。

Ÿ   他人の合法的損益を損なってはならない。

Ÿ   生成コンテンツの正確性や信頼性を高めなければならない。

そのほか、「国外製AIの中国国内への使用が法規に抵触する場合、中国政府は必要な措置をとる」ことがはっきりと明示されています。

では生成AIサービス提供者がこの政令の規定に違反した場合はどうなるのか。規定違反に対し同弁法では、サイバーセキュリティ法、データセキュリティ法、個人情報保護法など、既存法規に照らして処罰すると規定しています。筆者個人の所感としては、新規のAIサービスや利用法が登場するなど試行錯誤が続けられている状況においては、中国のように既に認知されている従来のインターネット関連法規をベースに違反行為を取り締まる方針は適切なのではないかと感じます。

AI生成コンテンツへのラベリング義務

「生成AIサービス管理暫定弁法」と並び、中国のAI業界における代表的法規としてはもう一つ、「AI生成・合成コンテンツラベル弁法」(人工智能生成合成内容標識弁法)がよく取り上げられています。同弁法はAIが生成、合成したコンテンツに対し、AIが作成したものであることを示すラベリングを強制しています。

具体例を挙げて説明すると、AIが生成したテキスト、画像や動画には「人工知能(AI)生成」といった表記を表示するよう要求しています。また音声データについても、冒頭や末尾などでAIが生成したものである注意を入れなくてはなりません。

動画でのAI生成表記例(中華人民共和国国家互聯網信息弁公室サイトより引用)

同様にAIが質問に答えるようなインタラクティブインターフェースにおいても、AIが生成したものである表記示す必要があります。

チャットボットでのAI生成表記例(中華人民共和国国家互聯網信息弁公室サイトより引用)

このほか視聴することのないデータファイルにおいては、データ内に識別子を設けてそれがAIによって作成されたデータであることを示すよう求められています。これら一連の明示措置は言うまでもなく情報の真贋判定が主な目的であり、誤った情報や誤解が広がることを防ぐ手段としています。

なおこのようなラベル強制規定はEUにおけるAI関連法規にも同様の措置が存在しており、日本国内でのYouTubeなどで見られるAI生成コンテンツにも、AIのマークが付くなど、こうした表記が施されています。現在の日本の法規にはこのようなAI生成であることを表示する強制規定は存在しないものの、国際的潮流を鑑みるに、今後の導入は必然とみられます。

以上の二つの法規のほか、中国では「AI擬人化インタラクションサービス管理暫定弁法」(人工智能擬人化互動服務管理暫行弁法)というAI関連法規も今年2026年に出されました。

同法規はバーチャルパートナー、バーチャルフレンドなど、自然人を模したAIによるインタラクティブサービスについて規定しており、プライバシー保護を遵守するほか、利用者を過度に依存させてはならないとしています。特に14歳以下の未成年者に対しては、保護者の同意なき利用を禁止するなど保護措置が設けられ、違反者に対する具体的罰金額なども定められています。

国内法か国際ルールか

以上、中国の主なAI関連法規制を見てきましたが、やはり発展途上の新興技術ということもあってかやや慎重に、概括的な規制にまだとどめている印象があります。実際に北京大学ロースクール教授の張 平 氏も、中国のニュースメディア「科技日報」にて、「AIはその応用の幅広さに鑑みて、画一的な規制も、過度な放任も避けるべきである」という意見を述べ、リスクや優先度に応じて段階的に法整備を進める必要性を訴えています。

また中国国内のAIに対する法規制の議論を見ると、「国内法よりも国際ルールの整備を優先すべきでは」という声も見られました。

前述の通り、EUもこのところAIに対する法規制の整備を加速しており、各国・地域が個別に整備するのではなく、共同で国際ルールを設けるべきではないかという声も高まっています。中国国内でも国際的なルール作りの機運上昇を受けてか、国内法の整備に焦るよりも国際ルールの醸成を待ってから法規制体系を整備していくべきとする意見が見受けられます。どちらにしろ、AIに対する法規制は必要という点ではほぼ一致しています。

日本における法整備は

最後に、日本国内におけるAI関連法規としては「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI法)が2025年に成立、施行されています。ただ同法はAI技術の発展を推進、奨励を主な目的としており、その悪用に対する法規制は具体性を欠いています。諸外国と比較するに、日本のAIに対する法規制はやや遅れているというのが正直な感想です。

前述の通り、新興技術であるAIに対する法規制を整備することは確かに難しさを感じます。かつて、コンピュータ間で直接共有することができるP2Pファイル交換ソフトを巡るWinny事件での議論のように、過度な規制が技術発展を妨げる可能性がある一方、著作権侵害など不正利用による社会における悪影響の拡大も放置してはなりません。規制と推進のバランスを取りつつ、国際的潮流を見定めたルール作りがAIに対して今求められているように思え、官民問わず活発な議論が今後求められてくるのではないかと筆者は考えます。