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2026.02.16

「お部屋の前に着きました」。配膳ロボットが自ら電話をかけてくる、ホテルDXの“現実的”な解決策

自律走行で障害物を避け、エレベーターに乗り、客室の前までたどり着く。最新の配膳ロボットにとって、そこまでは「当たり前」の光景になった。しかし、最大の難関はそこから先にある。分厚い防音ドアの向こうにいる宿泊客に、どうやって到着を知らせるか。専用のアプリを入れるのか、高価なタブレットを全室に置くのか。
2026年1月29日、株式会社ソフトフロントジャパンが発表したソリューションは、この課題を驚くほどシンプル、かつ低コストな方法で解決した。ロボットが客室の「内線電話」を鳴らすのだ。最先端のロボティクスと、レガシーな電話設備。一見ミスマッチな両者が手を組むことで、サービス業の自動化における最後のピースが埋まろうとしている。(文=RoboStep編集部)

アナログ電話もハックする、既存設備を活かした逆転の発想

(引用元:PR TIMES

今回、ソフトフロントジャパンが発表したのは、同社の音声通信技術「SUPREE(スプリー)」を活用し、配膳ロボットに内線電話への通知機能を実装するソリューションだ。

深刻化する人手不足やインバウンド需要の拡大を背景に、ホテル業界では配膳ロボットの導入が加速している。しかし、ロボットが部屋の前に到着した際、宿泊客に気付かれないことが悩みの種だった。ドアをノックするアームをつけるのは大掛かりだし、宿泊客のスマートフォンに通知を送るには専用アプリのインストールが必要になる。また、客室に通知用のタブレット端末を新設すれば、数百室規模のホテルでは莫大な導入コストがかかってしまう。

そこで着目されたのが、どのホテルの客室にも必ず置いてある「内線電話」だ。このソリューションでは、ロボットが客室前に到着すると、クラウドシステムを経由して客室の電話を鳴らし、自動音声ガイダンスで「お食事が届きました」などと通知する仕組みだ。


 (引用元:PR TIMES

特筆すべき技術的なポイントは、最新のIP電話(IP-PBX)だけでなく、古いホテルに多い「アナログ回線の交換機(アナログPBX)」にも対応できる点だ。ソフトフロントジャパンは、長年培ってきたSIP/VoIP  SDK(ネットワーク上で音声通話を制御する技術)とSIerとの協業により、ロボットと既存の電話設備の中継ぎを実現した。これにより、ホテル側は電話設備を入れ替えることなく、ほぼゼロに近い追加投資でロボット配送の利便性を劇的に向上させることが可能になる。

「気付かない」を防ぐ確実性。レガシー活用が加速させる社会実装

今回の取り組みが示唆するのは、DXにおける「レガシー資産」の有効活用だ。最新の技術を導入する際、古い設備をすべて排除して刷新するのが理想的かもしれないが、コストや工数を考えれば現実的ではない。むしろ、古くからあるインフラを「ハック」して新しい価値を与える方が、社会実装のスピードは格段に上がる。

「電話が鳴る」という通知方法は、アプリのプッシュ通知よりもはるかに強力だ。シャワーを浴びていても、テレビを見ていても、客室内に響く電話のベルには多くの人が気付く。また、プライバシー保護の観点からも、ドアを叩き続けるよりスマートであり、非対面・非接触を望む宿泊客のニーズにも合致する。

この仕組みの応用範囲はホテルにとどまらない。例えば、広大なオフィスビルでの郵便物配送ロボットや、介護施設での食事配膳ロボットなど、「個室にいる人へ到着を知らせたい」というシーンは無数にある。そして、それらの施設の多くには、すでに内線電話網が敷かれているのだ。

ロボットという「動くハードウェア」と、電話という「枯れたインフラ」を、ソフトウェアの力で接続する。派手さはないかもしれないが、現場のオペレーションを確実に回すための「ラストワンマイル」ならぬ「ラストワン コール」の技術。こうした地に足のついたソリューションこそが、人手不足にあえぐ日本のサービス業を救う鍵になるのかもしれない。