1. RoboStep TOP
  2. ロボット業界の今を学ぶ
  3. 【連載】米国ボストン 世界が注目するロボティクス市場でサムライ企業は何を掴むか(第4回:終了編)

2025.10.22

【連載】米国ボストン 世界が注目するロボティクス市場でサムライ企業は何を掴むか(第4回:終了編)

日本貿易振興機構(以下ジェトロ)協力のもとボストンのロボティクス市場や、プログラムを通した参加企業の声をお届けする本連載。最終回は、ジェトロのロボティクス向けスタートアッププログラム「Boston Robotics Program」に参加した企業による総括をお届けする。未来のロボット業界を牽引するかもしれない、注目のサムライ企業が感じたものとは!?(文=RoboStep編集部)

※スタートアッププログラムの詳細など、未読の方は是非連載第1回から読んで頂きたい。

知能技術株式会社

知能技術株式会社 代表取締役 博士(生命医科学) 

大津 良司 氏

博士(生命医科学)国立大学院医学系研究科で医学を研究。現早稲田大学 招聘研究員。神戸出身で阪神淡路大震災でショックを受け、医学の研究をすると共にロボットで人の命を助けたい想いでロボット開発会社を起業。災害現場で作業をするロボットや消防ロボットなどに携わり、全国で100台以上使われている。人の命を助けたい、守りたいという想いを実現し続ける。

全プログラムを終えての感想

日本で展開をしているサービスをそのままボストンには持ち込めずローカライズが必要だと感じた。一方でMITなど世界的の先端技術開発が集中するボストンのため、我々の災害対策や建設の分野でも高度な技術力の開発が進んでいると考えていたが2週間弱の短い調査ではあるが我々に十分アドバンテージがあると感じた。

一方で先端技術や開発に興味がある企業やスタートアップは多いが、それを実用化していくためのプラットフォームが不明であった。

我々はボストンで技術開発をしたいのではなく、実用的な技術を持つ企業と協業し、米国市場に売り込みたいと考えている。

今回のプログラム期間中にはそのような企業を見つけることができなかった。

また、ボストンは遠いため、まずは我々に代わって市場開拓をしてくれる人や企業を探していた。これに関しては1人見つけることができたことは幸いであった。

行くまでは漠然と先端技術を持つ都市であると思っていたが、彼らの技術力に濃淡があることを知ったことは良かった。

次にCICとMassRoboticsについて述べたい。これまで我々はJETROやNEDOから多くの海外展開の支援を受けて来た。その中で様々な支援機関の支援を受けたが、今回の2社は担当者が他の機関より歳が上のこともあるのか、落ち着いた丁寧な支援をして頂けた。また、とても親身にサポートして頂け訪問期間中を有効に多くの人に面談できた。

今回の支援はこれまでで一番素晴らしく高く評価したい。

今後の抱負

このプログラム市場開発のパートナーが見つかったことで米国進出への期待が膨らんでいる。今回の訪問で分かった我々の修正点とはっきりすることができなかったターゲットユーザを今後明確にして2025年中に見込み客を明らかにして契約のための議論ができるようにしたい。

そのためには、近々もう一度ボストンを訪問し、企業を訪問しマーケティングを行いたい。

今回のプログラムに参加しなければこのような具体的な事業化の検討を行うことができなったので、支援を頂いたJETRO、CIC及びMassRoboticsには感謝をしている。

なお、JETRO New York及びCICから引き続き支援を受けられることになり。米国進出を加速することができる。このことも深く感謝している。

ドローン・スポーツ&ミュージック・クラウド株式会社

ドローン・スポーツ&ミュージック・クラウド株式会社 Founder & CEO

宮内 博章 氏

予定著書「100歳IPO」:退職金を元手に未経験のB2Cアプリ・ビジネスをスタートアップ、100歳の誕生日までにNASDAQ上場を目指す。三井物産(合成樹脂部門)30年、JASDAQ上場の射出成形企業の取締役CFO、イワキ・ポンプのシンガポール社長、機械メーカー松井製作所の上海社長など、米国7年、メキシコ2年、スイス2年、シンガポール7年、中国11年。各地で会社設立、ターンアラウンド、M&A、新事業進出などを担ってきた。

全プログラムを終えての感想

私たちは、米国NASDAQ市場へのIPOをマイルストーンに掲げており、米国市場への展開は避けて通れない課題だった。私自身、過去にボストンを含む米国で7年間勤務し、長男も米国生まれで米国パスポートを持ち、同州の大学を卒業している。そうした背景から、米国市場の感触はある程度つかんでいたつもりだった。しかし、今回の10日間の派遣プログラムを通じて、現在のアメリカに直接触れたことで、新たな戦略のイメージが鮮明に浮かび上がった。

今回の最大の収穫は、私たちが日本で展開しようとしている「スキーをはじめとする屋内外スポーツへのドローン撮影の応用」に関し、9年前にすでに取り組んでいた米国スタートアップ "Cape" に巡り会えたことだった。Cape社は設立当初から、米国スキーナショナルチームのトレーニングにドローン空撮を活用していた。しかし、設立から数年後、そのダイナミックな追跡撮影技術に着目したモトローラ社がCapeを100%買収。その後、Capeは国防総省や警察などの防衛・保安分野へと事業の軸をシフトし、成長を遂げていた。

この出会いを通じて、ドローン技術のスポーツ分野への応用の可能性、そしてそれが将来的にどのような展開を遂げるかを考えさせられた。米国市場進出を見据える上で、非常に貴重な示唆を得たプログラムだった。

今後の抱負

今回のプログラムを通じて、米国市場の最新動向に直接触れ、私たちのビジネスの可能性と課題を改めて認識することができた。特に、ボストンでは、ジャズやロックで名高い Berklee College of Music の学生・卒業生・教授ら5名にインタビューを実施。ドローン撮影の音楽・ダンス・演劇界への応用について貴重な洞察を得ることができた。この経験は、スポーツだけでなく、パフォーミングアーツの分野にもドローン技術を展開する戦略を考える上で、大きな示唆を与えてくれた。

現在、技術開発を進めるとともに、日米両市場でのパートナーシップ構築に注力している。特に、スポーツ団体や音楽パフォーマンス施設と連携し、競技者やアーティストにとって価値ある映像体験を提供できるエコシステムの構築を目指す。

また、IPOに向けた米国市場での認知度向上や投資家ネットワークの拡大も重要な課題だ。今回のプログラムで得た知見と人脈を活かし、より具体的なアクションプランを策定し、グローバル展開を加速させていく。

来年度参加される企業へのメッセージ

このプログラムは、単なる視察ではなく、実際に米国市場を体感し、事業戦略をブラッシュアップできる貴重な機会です。得られるネットワークや知見は計り知れません。積極的に挑戦し、次の成長につなげてください!

株式会社ミューラボ

株式会社ミューラボ 常務取締役

大森 卓 氏

前職は自動車関連Tier1企業にて、品質管理・製品開発・法人営業を対応。開発部門時には、アメリカに駐在し、現地拠点を立上げ。法人営業時にはドイツに駐在し、ドイツ現地法人社長・UK現地法人社長を兼務。2022年より当社にて、営業・事業・ビジネスデベロップメントを担当。

全プログラムを終えての感想

スタートアップ企業でも北米進出や、投資家・事業会社等とのネットワークを構築する為の環境が整っており、とても高く大きく感じていた北米進出のハードルでも、我々の意気込み・熱意・創造性等によってクリアできそうな気がしてきました。

実際に、各種のサポートをして頂いたCIC、MassRobotics等の方々、各メンターの方々からも、今後の北米進出の可能性は無限大であることを認知させて頂き、大変参考となるプログラムでした。

デモデイでのピッチ、ポスター/テーブルセッションなど、参加型のプログラムであり、自社のPRの仕方、プレゼンの仕方、製品紹介の仕方等々、日本のそれとは異なる内容ではありましたが、今後の自社プレゼン・製品紹介に活かせる内容ばかりでした。今回は北米プログラムへの参加でしたが、今後はヨーロッパプログラム、東南アジアプログラム等への参画により、我々の知見を拡大していきたいです。

今後の抱負

本プログラム参加以降には、実際に海外のお客様とのやり取りが増え、資金調達の可能性等も出てきました。本プログラム内容を活かして、複数のお客様に対して、自社プレゼン・製品紹介等活動中です。様々な視点からの交渉が可能となり、お客様の困りごと対応、スタートアップ企業だからこそできること、により、お互いにWin-Winとなるような交渉推進中です。

まさしくたった今、資金調達推進中ですので、弊社WEBページのアップデートを楽しみにしていてください。資金調達・事業拡大等のニュースをお伝えするのも遠い将来ではないかもしれません。

ミューラボ 2030年ビジョン

⾰新的技術であるクラウン減速機構と立体カム機構を社会実装し、

事業を通じ社会の課題解決に貢献する

=== 2030年ミューラボは、“月”へ到達する ===

皆様と一緒に、月へ、宇宙へ行きたいです。皆様との連携をよろしくお願い致します。

来年度参加される企業へのメッセージ

チャンスがあれば、何度でも参加したいプログラムです。二の足を踏まず、まず飛び込んでみるのも一つの手段です。必ずや自己覚醒の機会となるプログラムですので、ぜひ参加をご検討ください。

世界に挑戦する、日本の技術

本連載では、参加企業に協力を頂きながら、現地の温度感を伝えるべく、生の声を届けてきた。資本や人材が国境を越えて流動化する今、日本固有の強みである「高い信頼性」を世界標準の開発スピードへ融合させることが鍵といえる。その中でも、スピーディな開発とリスクテイクを実現し、新しい市場ニーズに即応できる存在としてスタートアップの果たす役割は大きい。最先端・異分野技術を自在に組み合わせ、従来の産業構造を再定義する推進力を持っている。社会課題をリアルタイムに解決し、世界へスケールする日本発の革新を現実化するのは、まさにスタートアップの機動力と挑戦精神。RoboStepでは、引き続き世界で活躍するスタートアップ企業に注目を続けていく。