1. RoboStep TOP
  2. ロボット業界の今を学ぶ
  3. アフターサービスの高付加価値で商機をつかめ ~vol.3【対談】イネーブリングが導く新たな価値とは

2025.08.18

アフターサービスの高付加価値で商機をつかめ ~vol.3【対談】イネーブリングが導く新たな価値とは

多くの機器がAI・IoT化し、製造業に求められる価値観は「モノ」から「サービス」へと急速に転換している。競争優位の源泉となるのは、故障対応にとどまらず、サービスを止めずに価値を維持する「イネーブリング」という発想だ。本連載では、JapanStepパートナー企業JBサービス株式会社(以下、敬称略)とともに、アフターサービスの高付加価値化を探ってきた。第3回は、サービスマネジメントの第一人者であるDIG2ネクスト株式会社(以下、敬称略)代表取締役 鈴木 寿夫 氏を迎え、JBサービスの南部 隆行 氏と共に、製造業の変革期における保守の未来を語り合って頂いた。(文=RoboStep編集部)
連載第1回:「アフターサービスが競争力を決める時代」
連載第2回:「【対談】保守サービスが果たすべき新しい価値とは?」

【お知らせ】
連載コラムと連動したJBサービスのホワイトペーパー「IoTやAIによる現場作業のロボット化が加速~保守サービスが果たすべき新しい価値とは?」(無料)も配信中です。ロボットメーカー、販売パートナーでなくとも参考になる情報が満載です。併せて是非ご覧ください。

モノからサービスへ価値観が大転換している

製造業のビジネスモデルは、これまでの「モノ中心」から「サービス中心」へと急速に変化している。背景にあるのは、AI・IoT化による機器の高度化と、顧客価値の基準が「製品の性能」から「体験やサービスの質」へ移りつつある現実だ。

DIG2ネクスト 代表取締役の鈴木 寿夫 氏は、この潮流を象徴する例として自動車業界を挙げる。

「自動車メーカーは、単に車を製造・販売するのではなく、『人の移動』というサービスを提供する方向へシフトしています。Software Defined Vehicle(SDV)の概念が広まり、ソフトウェアを基盤としたサービス進化が加速しているのです」(鈴木氏)

DIG2ネクスト株式会社 代表取締役 鈴木 寿夫 氏

この動きは自動車業界にとどまらず、医療や飲食業界など多様な分野に広がっている。JBサービスもまた、IT機器の保守から始まり、現在では医療機器や配膳ロボットなど、Non-IT(IT以外のあらゆる業務用機器)の領域にまで守備範囲を拡大した。

JBサービス Security & Service クオリティサービスの南部 隆行 氏は「今や、保守対象となる機器のほとんどが、顧客が提供するサービスの一部です。ロボットが止まることは、そのサービス全体が止まることを意味します」と、Non-ITにおける保守の重要性を語る。

JBCCグループ JBサービス株式会社 Security&Service クオリティサービス 南部 隆行 氏

鈴木氏が提唱する「イネーブリングサービス」とは、こうした価値観転換を前提とした新たな保守の概念だ。単に「壊れたら直す」のではなく、サービス全体を止めないよう支える。これこそが、競争力と収益性を両立する次世代の保守に不可欠な視点だと強調する。

品質を支える運用サイクルと人材育成

JBサービスでは、全国規模で均一な品質を維持するために、年間を通じた品質管理サイクルと人材育成の仕組みを構築している。お客様の声を全社で共有し、トップマネジメント主導のもと、業務改善・スキル向上・課題解決・作業標準化を推進

中心となるのは、毎年設定される「品質目標」と部門ごとのKPIである。着信応答率、電話解決率、現地訪問率などを指標とし、各部門の責任者が参加する「サービス品質会議」で進捗を月次レビューする。問題があれば原因を分析し、改善策を即座に共有する体制が整う。さらに、重大インシデント発生時には社長を含む経営層が参画する「重要インシデント会議」を開催し、迅速な意思決定で顧客影響を最小化する。

「お客様満足度調査やVOC(Voice of Customer)を活用し、顧客の声を業務改善に反映させることも重視しています」と南部氏は説明する。

もう一つの柱が教育だ。JBサービスは、メーカーや機種に依存しない汎用的なスキルを重視し、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめた書籍群「ITIL®」を社内共通言語とする教育を推進。若手技術者にはIT認定資格「CompTIA A+」など基礎資格の取得を奨励し、ITとNon-IT両方に対応できる人材を育てる。

鈴木氏もこうした方針に賛同し、次のように語る。「フィールドサービスは単なる不具合解消ではなく、社会インフラを支える誇りある仕事です。『止めない』という意識が技術員のモチベーションを高め、サービス全体の品質を底上げします」(鈴木氏)

※ITIL® and the Swirl logo are registered trademarks of the PeopleCert group. Used under license from PeopleCert. All rights reserved .

当社のエンジニアがお客様から実機でレクチャーを受けスキルを習得。独り立ちした者が当社の他の地域のエンジニアへとスキルトランスファーをしていく形で対応業務の範囲や対象地域を拡張していく

“攻め”の保守が描く製造業の未来

「イネーブリング」という概念は、保守サービスの枠組みを根本から問い直す。南部氏はその意義をこう語る。「私たちの使命は、壊れたモノを修理するだけでなく、顧客のサービスを止めず価値を継続することです。この視点が、現場の誇りと品質向上の原動力になります」(南部氏)

鈴木氏もまた、サービスマネジメントの未来に確信を持つ。「今後は、製造業だけでなく、流通・医療・公共などあらゆる産業が『サービス中心』へシフトします。そこで重要になるのは、サービス全体を見渡し、止めない仕組みをデザインできる人材と組織です」(鈴木氏)

JBサービスは既に、この考え方を次世代の戦略へ取り込みつつある。採用や教育、KPI設計にも「イネーブリング」の思想を反映させ、顧客価値を最大化する保守サービスを志向する。これは単なるコスト削減ではなく、顧客体験そのものを支える競争力の源泉となりうる取り組みだ。
(連載第4回に続く)

本連載と連動したJBサービスのホワイトペーパー「今こそ求められる“ 攻め” の保守~イネーブリングが切り開く保守の未来」(無料)も公開中。本記事では掲載できなかった詳細な施策や事例についての話も満載です。下記ページよりダウンロード頂き、是非あわせてお役立てください。

https://www.jbsvc.co.jp/download/Nonit/series/service_management/download.html

関連リンク