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2025.02.21

ロボットに関する法規制の基礎知識―導入・運用時に押さえるべきポイントを解説

製造現場の自動化やサービス分野でのロボット活用が広がる中、法規制への対応は避けて通れない課題となっています。本記事では、ロボットビジネスに関わる方々に向けて、押さえておくべき法規制の基礎知識をわかりやすく解説します。特に近年、注目を集めている協働ロボットや自動運転など、最新の規制動向についても触れていきます。

ロボットに関する法規制の全体像

ロボットに関する法規制は、その用途や特性によって大きく異なります。産業用ロボットは労働安全衛生法を中心とした法体系、サービスロボットは国際安全規格ISO 13482、自動運転は道路交通法、AI搭載ロボットは「人間中心のAI社会原則」など、それぞれに特有の規制や指針が存在します。ビジネス展開にあたっては、自社のロボット製品やサービスがどの規制の対象となるのかを正確に把握することが重要です。

産業用ロボット

製造現場で使用される産業用ロボットについては、労働安全衛生法および労働安全衛生規則による規制が適用されます。特に作業者の安全確保が重視され、特別教育の実施や安全柵の設置などが義務付けられています。

サービスロボット

介護や清掃、案内など、サービス分野で活用されるロボットについては、国際安全規格ISO 13482が基準となります。この規格において、サービスロボットは、移動作業型、人間装着型、搭乗型の3タイプに分類され、それぞれに応じた安全要求事項が定められています。

自動運転

自動運転については、2023年4月に改正道路交通法が施行され、レベル4の自動運転(特定自動運行)が一定の条件下で解禁されました。遠隔監視などの安全確保措置を前提に、公道での無人自動運転サービスの実現が可能となっています。

AI搭載ロボット

AI技術を搭載したロボットについては、2019年に政府が定めた「人間中心のAI社会原則」が指針となります。プライバシーの保護や安全性の確保、公平性の担保など、AI特有の課題に対する対応が求められています。

産業用ロボットを導入する際のポイント

産業用ロボットの導入にあたっては、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に基づく対応が必要です。近年は協働ロボットに関する規制緩和も進み、導入の選択肢が広がっています。しかし、安全確保のための措置は、依然として重要な要件だと言えます。

特別教育の実施

産業用ロボットの操作や検査を行う作業者には、特別教育の受講が義務付けられています。教示作業と検査作業で必要な教育内容が異なり、それぞれに定められた時間数の講習を受講する必要があります。教育内容は法令で具体的に定められており、学科と実技の両方が含まれます。

安全措置の確保

産業用ロボットの運用にあたっては、安全柵の設置や非常停止装置の確保など、具体的な安全措置が求められます。また、定期的な点検や検査も必要とされ、これらの記録は一定期間の保管が必要です。

協働ロボットの規制緩和

2013年の規制緩和により、一定の条件を満たす協働ロボットについては、安全柵の設置義務が緩和されました。ただし、リスクアセスメントの実施や適切な安全措置の確保は引き続き必要とされています。

サービスロボットを導入する際のポイント

(引用元:一般財団法人 日本品質保証機構

サービスロボットの導入では、国際安全規格ISO 13482への適合が重要な指標となります。この規格は、サービスロボットの安全性に関する世界共通の基準として、日本が主導的な役割を果たして策定されました。

ISO 13482の要求事項

この規格では、サービスロボットを移動作業型、人間装着型、搭乗型の3つに分類し、それぞれのタイプに応じた安全要求事項を定めています。特に重要なのは、想定される使用環境でのリスク評価と、それに基づく安全設計の実施です。

リスクアセスメントの実施

サービスロボットの開発・導入には、包括的なリスクアセスメント(危険性や有害性を特定し、評価する工程)の実施が求められます。使用環境や利用者の特性を考慮した上で、想定されるリスクを特定し、適切な対策を講じる必要があります。

認証取得の進め方

ISO 13482に基づく認証は、第三者認証機関による評価を受けることで取得できます。認証取得には、技術文書の整備や試験の実施など、計画的な準備が必要とされます。

AI・自動運転に関する新たな法整備の動き

AIや自動運転技術の急速な発展に伴い、新たな法整備も進んでいます。特に近年は、安全性の確保と技術革新の両立を目指した制度設計が行われています。

人間中心のAI社会原則

2019年に策定された「人間中心のAI社会原則」では、AIの開発・利用に関する7つの基本原則が示されています。プライバシーの確保、セキュリティの確保、公平性の担保などが重要な要素として挙げられており、AI搭載ロボットの開発・運用においても、これらの原則への配慮が求められます。

自動運転の法規制

2023年4月施行の改正道路交通法では、レベル4の自動運転(特定自動運行)が一定の条件下で可能となりました。ただし、実施には地域を管轄する公安委員会の許可が必要とされ、運行計画の策定や安全確保措置の実施が求められています。

ロボット関連法規制の今後の展望

ロボット関連の法規制は、安全性の確保を基本としながら、技術革新を促進する方向で整備が進められています。企業がロボットを導入・運用する際には、まず自社の製品やサービスにどの法規制が適用されるのかを正確に把握することが出発点となります。その上で、作業者への安全教育や安全措置の実施、さらには定期的な点検や記録の保管など、法令で定められた要件を着実に実行していく必要があります。

特に近年は技術の進展が速く、法規制も随時更新されています。産業用ロボットでは協働ロボットに関する規制緩和、自動運転ではレベル4の解禁、AIについては社会原則の策定など、新たな動きが続いています。企業には、これらの動向を常に注視し、適切に対応していくことが求められます。

今後も、ロボット技術のさらなる発展に伴い、法規制の見直しや新設が予想されます。しかし、その根底にある「安全性の確保」という基本的な考え方は変わらないでしょう。企業は、この基本を押さえた上で、最新の法規制に対応しながらロボットビジネスを展開していく必要があります。