過去には著名なロボットやおもちゃなどが受賞。かわいいデザインの登竜門ともいえる日本感性工学会かわいい感性デザイン賞®。2024年に開催された第12回の最優秀賞に選ばれたのが遠隔共同子育てロボット「ChiCaRo」だ。ロボットは未来の子育てを変えるのか!?全貌に迫った。(文=RoboStep編集部)
電気通信大学/明治学院大学の阿部香澄と株式会社ChiCaRoが共同で企画・研究開発を行う、遠隔共同子育てロボット「ChiCaRo」が、日本感性工学会が主催する「第12回かわいい感性デザイン賞®」の最優秀賞を受賞した。かわいい感性デザイン賞は、過去には著名なロボットやおもちゃなどが受賞したかわいいデザインの登竜門ともいえる賞だ。
授賞式の様子。左から、株式会社ChiCaRo安﨑優太氏、電気通信大学/明治学院大学 阿部香澄氏、日本感性工学会参与・同学会かわいい感性デザイン賞審査委員⻑ 大倉典子氏
日本感性工学会は、受賞の理由について「育児用に開発したかわいいアバターロボットで、賞の主旨にマッチしている。丸みを帯びた形はかわいさだけでなく安全性も高めている。背景にある意図も高く評価できる」と語った。
ChiCaRoは、「子育てのミカタを増やす」をコンセプトに作られた、乳幼児とのコミュニケーションに特化したアバターロボットだ。この子育ての「ミカタ」には、「味方」と「見方」、2つの思いが込められているという。
ChiCaRoが目指す、遠隔共同子育ての世界のイメージ画像
共同子育てロボット ChiCaRo コンセプトムービー (long ver)(YouTubeより引用)
1つは、ChiCaRoを通して子育てに関わる人、仲間を増やすという意味でのミカタ(味方)であること。核家族化が進む現代では、子育ては親がするもの、というイメージが浸透しているが、本来子育てはみんなでしていたもの。みんなで子育てをすると、子育ての当事者に余裕が生まれ、「子どもってかわいいな」「子育てって楽しいな」と前向きな視点になれる。そうした意味でもう1つのミカタ(見方)を増やしていくことが、ChiCaRoを通じて成し遂げていきたいことだという。
株式会社ChiCaRoが示すChiCaRoの概要図(子育て相談チャットボットククちゃんを含む)
ChiCaRoは、ビデオチャットのおしゃべりや、遠隔操作でかくれんぼやおままごとなど、身体を使った遊びも可能だ。子どもが画面から離れても、追いかけていくことができる。「助けてくれる人がまるでそこにいるような感覚」により両親のストレス低減効果にもつながるとしている。操作者と一緒に遊びながら発達を促進できる「促育遊び」の機能も充実。共働きの多い現代、こうしたロボットは大いに役立ちそうだ。
「ChiCaRo」の利用イメージ
ChiCaRoを開発した経緯について、株式会社ChiCaRoの安﨑優太氏 は「開発者の阿部先生が、研究活動と子育ての両立に苦労された原体験から生まれた子育ての「みかた」をふやすロボットです。家庭用に開発されたものの、デザイン性や利便性から、施設や自治体での用途まで広がってきました」と語る。
株式会社ChiCaRoは、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)研究開発業務の委託を受け、「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業/説明できる自律化インタラクションAIの研究開発と育児・発達支援への応用」をテーマとした大阪大学、電気通信大学と共同研究を行う。「今後も企業、地方自治体、団体、研究機関等と積極的に共創していければ」と安﨑氏は語る。またChiCaRoの展望について安﨑氏は「各機関との連携を深め、子育ての『みかた』を増やし、ChiCaRoが目指す、『遠隔共同子育て』の文化を浸透させていきたい」と熱く語った。今後の展開にも注目だ。