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2024.12.25

【連載】中国・深セン視察レポート~中国のシリコンバレーで感じたテクノロジーの現在地(第1回)

テンセント、HWAWEI、DIJなどグローバル企業を輩出し、中国のシリコンバレーと呼ばれる深セン市。元々は漁村だったエリアが、1980年代の鄧小平による「改革開放」以降急成長を遂げ、2024年現在、人口1700万人を超える中国を代表する経済都市となった。スタートアップも多く、サービスロボットやドローン配送、自動運転など、新しい技術の導入も進む深センをRoboStep編集部は2泊3日の弾丸で訪問した。本連載では、現地の様子をレポートする。(文=RoboStep編集部)

人口1700万人強。若者を引き付けるチャイニーズドリームの都市

中国本土を代表する4大都市は、北京、上海、広州、そして今回訪問した深センだ。4都市の頭文字をとって「北上広深」とも称される。総面積は1,953キロ平方メートルで、東京とほぼ同じ。広東省の省都・広州市からほぼ南南東に位置し、香港に隣接する都市だ。1979年にはおよそ30万人だった居住人口が、1987年には100万人を突破。2010年には1,000万人、そして2017年には1,500万人を突破した。2024年現在、1779万100人となり過去最大の人口となり、今も増加傾向にある。若者を引きつけるこの都市は「夢都」(梦都)という愛称で呼ばれることもある。

深センの街には高層ビルが立ち並ぶ。左奥にあるのは深センで最も高いビル。大手金融系企業が入るビルなんだそう

元々漁村だったこのエリアに転機が訪れたのは、1980年代。鄧小平による「改革開放」の頃から台湾や香港の下請けとして、組み立て工場が増加。経済特区に指定され、政府の支援も受けたことで、ヒト・モノ・カネが集まり、川上から川下まで企業が密集したことで、設計から製造、組み立て、検品、出荷までを圧倒的なスピードで実現できるまでになった。

取材陣が訪問したのは2024年9月。中国専業の総合商社、西日本貿易のアテンドで現地を訪問した。羽田空港から直行便でおよそ4時間。たどり着いた深セン宝安国際空港は、とにかく巨大。

近未来感あふれる印象的なデザインで、天井の幾何学模様を長く見ていると目が少しチカチカした

空港内のオブジェも印象的だった

基本設計のデザインはイタリアのマッシミリアーノ&ドリアナ・フクサス、エンジニアリングはドイツのクニッパーズ・ヘルビッヒが担当。延べ6000人が設計に携わったといわれ、巨大な空港がわずか6年あまりで竣工まで漕ぎ着けたという。

自動運転タクシーを体験! でも無人じゃない

取材陣がまず体験したのが、深センの一部エリアで試験的に始まった自動運転タクシーだ。今回は深セン宝安国際空港のある宝安区から南山区への20分ほど乗ってみることに。限られたエリアでの導入のため、まだ中国人でも利用した経験のある人は少ないという。

無人タクシーは、アプリで呼ぶことができる。まだ無人タクシーの台数は限られ、一般的なタクシーよりも待ち時間は多いそうだが、それでもアプリで読んでから15分程度の待ち時間でタクシーが到着した。

日本のタクシー配車アプリと同じように簡単に手配できた

到着したタクシーにはドアノブがない。窓に表示される電子パネルを操作し、指定の番号を入力するとドアノブが現れ、ドアを開けることができる仕組みだ。

番号を入力すると、ドアノブがスッと現れる

タクシーに乗り込むと、自動運転なので無人…と思いきや、運転席には人の姿が。まだ試験運用段階のため、運転席には機器をチェックする担当者が乗り込んでいた。ハンドルを握ることはなく、助手席には車線の状況がわかるモニターが設置されていた。また機器が設置されているため、助手席にも乗ることはできなかった。現在深センにおいては、人が同乗するスタイルだが、武漢などでは完全無人タクシーが実現しているという。

運転手はパネルに時より目をこらしながら安全を確認していた

パネルには、周りの車や信号などが映し出され、道路の状況を的確に捉えながら走行していた

乗ってみた筆者の感想としては、安全運転でスピードは抑え気味だが、車線変更や急な追い抜きへの対応など、人が運転しているのと全く違和感がなく、むしろ(粗い運転の)人が運転するタクシーより安全で快適とすら感じた。

地下鉄整備も急ピッチで進む

深センは地下鉄の整備も急ピッチで進む。1999年に着工され、2004年12月に最初の地下鉄が営業開始に。2024年10月現在、地下鉄20号線(全部で16の地下鉄)まで開発が進んでいる。

1号線、2号線と番号で表示されているのでとても分かりやすい

取材陣は、実際に地下鉄にも乗ってみた。

券売機は路線図から感覚的に目的地を選ぶことができ分かりやすい

アプリで購入すると何やら緑の物体が…

チケットは、緑のプラスチックコインのようなもの。入場時は、改札にこの緑のコインを当てると改札口がオープンする

駅はとてもキレイでデザインも洗練されていた

強冷房と弱冷房が車両によって分かれる。深センの地下鉄は通勤ラッシュも日本同様あるそう

下車するときは、改札にコインを投入すると、改札口が開く

駅構内に掲載されたインプラントの広告。中国では、医療費を少しでも抑えようとインプラントも流行っているという

地下鉄のつくりは、日本とあまり変わらない印象で、ホームドアで安全が守られ、案内看板などもとても分かりやすい。これなら初めて深センを訪問したときも、安心して地下鉄を使えそうだ。

(第2回に続く)