「うまい、安い、早い」のキャッチフレーズで親しまれる吉野家の牛丼に、ロボット搬送という新たな付加価値が生まれるかもしれない。吉野家、出前館、パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は、神奈川県藤沢市で吉野家のメニューを自動搬送ロボットで住宅まで配送するフードデリバリーサービス実証を2024年11月15日からおよそ1週間実施した。人手不足により、ラストワンマイルに課題を抱えるフードデリバリーの救世主となるのか。(文=RoboStep編集部)
コロナ禍を経て、ライフスタイルが大きく変化する中、飲食業界ではテイクアウトやデリバリーの利用が拡大している。一方で人手不足は大きな社会課題だ。そこで活躍が期待されるのがデリバリーロボット。自動搬送ロボットや配達ロボットとも呼ばれ、AIやGPUなどを活用し、人の手を介さずに目的地まで商品を配達する。
デリバリーロボットの社会実装は政府でも推進の動きが高まっている。2023年4月1日に施行された「道路交通法の一部を改正する法律」によって、一定の大きさや構造の要件を満たすロボットであれば、事前の届け出によって公道での走行が可能になった。
「ハコボ」で公道を搬送する様子
今回の実証は、今後深刻化が予測される配達員の人手不足の解消に向け、自動搬送ロボットを活用したフードデリバリーサービスの実証を行うものだ。具体的には神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(以下、Fujisawa SST)内の全住宅を対象に、出前館のアプリで注文された吉野家 湘南新道辻堂店のメニューをパナソニックHDの自動搬送ロボット「ハコボ」を用いて配送する。
吉野家の店舗から出発する「ハコボ」
Fujisawa SSTは、先進的な取り組みを進める企業と藤沢市の官民一体の共同プロジェクトだ。「技術起点」から「くらし起点」へ。新しいスマートタウンづくりを進めている。
Fujisawa SST プロモーションムービー
自動搬送ロボット「ハコボ」は、用途に応じて、後方のキャビンを様々な機能にカスタマイズできる特長や表情豊かに話しかけるコミュニケーション機能などを持つ。パナソニックHDは、2022年11月に丸の内仲通りや行幸通り等(東京都千代田区)において日本初、公道でのロボット単独による販売実証実験も実施している。
パナソニックHDは自動搬送ロボットを活用したサービスの実用化に積極的に取り組む。神奈川県藤沢市や茨城県つくば市での商品の配送サービス運行などを実施してきた。また、サービス運行の更なる効率化を図るため、1人の遠隔オペレーターが複数台のロボットを運用できるシステム開発にも取り組む。
配達までの流れはこうだ。出前館のアプリ上で吉野家 湘南新道辻堂店の対象メニューを注文。決済を完了すると、パナソニックHDの自動搬送ロボット「ハコボ」が公道を自動走行して配送される。吉野家 湘南新道辻堂店からFujisawa SST入口までは、保安員が随行する。今回の実証では、「ハコボ」1台を運用。サービスの実現性やお客様の体験価値の検証を実施する。
吉野家店舗での積み込みの様子
ロボットは遠隔でオペレーターが運用する
吉野家は、より多くの方々が立地や環境の制約を受けずにもっと手軽にご利用いただけるようデリバリーの活用を進めており、将来に向けて新たなテクノロジーを積極的に活用することで更なる利便性の向上に取り組んでいくという。また、デリバリーサービスを提供する出前館は、「地域の人々の幸せをつなぐライフインフラ」をビジョンとして掲げる。食料品アクセス問題や人手不足などの社会課題解決に寄与し、あらゆる人々に商品をお届けできる社会の実現に貢献するため、ロボットを活用した自動搬送の実証実験に取り組む。