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今後は液冷が主流?ロボットの冷却方式最前線

近年、日本もそうでしょうが筆者が暮らす上海でも真夏の平均気温は上昇傾向にあり、夏が近づくにつれ、いやでも体温管理に気を配らざるを得ません。ただこうした体温管理は人間だけではなく、ロボット業界でも大きな課題となりつつあります。

人型をはじめ多くのロボットの生産や研究開発が進む中国ではこの所、ロボットの温度管理、とりわけ冷却方式に対する注目が高まってきています。従来に比べより複雑かつ精密な動きが実現化されるに伴い、その排出熱も増加傾向にあり、安定稼働を維持する上でその温度管理の重要性が高まってきています。

こうした冷却上の課題を解決するため、中国ロボット業界では従来の空冷式から液冷方式のシフトが有力なソリューションとして提唱されてきており、関連業界も市場拡大に強い意欲を示しています。
そこで今回は、液冷方式に動きつつある中国のロボット業界の現状と市場展望についてご紹介します。

担当ライター 花園祐(はなぞの・ゆう)

中国・上海在住のブロガー。通信社での記者経験を活かし、経済紙などへ記事を寄稿。独自の観点から中国のロボット業界を考察する。好きな食べ物はせんべい、カレー、サンドイッチ。

液冷方式の優位を証明したマラソンロボット

2026年春、人気イベントとなっている北京での人型ロボットによるハーフマラソン大会にて、中国スマートフォンメーカーの栄耀(HONOR、オナー)が投入した「閃電」は人間男子のハーフマラソン世界記録を上回る50分26秒というタイムで見事優勝を遂げました。自律走行で完走のみならず、従来記録を大幅に縮めたこの快挙は、中国ロボット業界の進化の速さとともに日本でも大きく報じられたかと思います。

(引用:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ただこの「閃電」に関して、これまで人型ロボットの間で一般的であった空冷ではなく、液冷が冷却方式に採用されていたことは、日本ではあまり報じられていなかったように思えます。

この「閃電」に冷却システムを提供したのは2024年設立の華科冷芯(上海)動力科技有限公司という会社で、同社CEOの陳 奇氏 は「閃電」の快挙に触れて、「液冷こそが人型ロボットの冷却方式の最適解」だと述べています。陳氏によると、液冷方式の冷却効率は空冷式に比べ10~50倍にも及び、中心温度を100度から60度まで低下させることが可能で、「今後人型ロボットに長時間の作業要求が高まるにつれ、液冷需要は増大していくだろう」という見解をメディアに述べています。

半導体の高性能化が拍車に

前述の通り、人型ロボットの冷却方式はこれまで9割方が空冷だったと言われています。しかし一般的な大型機械と比べロボットの場合、関節などの空間が非常に狭く、空気の循環余地は限られる点などがかねてから指摘されていました。

とはいえこれまでは空冷でも比較的問題なく温度管理を実現できていたのですが、近年はロボット技術の向上とともに、空冷ではもはや冷却が追い付かなくなってきているとも懸念されています。これは何故かというと、ロボットの動作が複雑化することで、関節などに搭載されるモーターの数量や動作量が増えてきているためです。またアルゴリズムの複雑化に伴い、制御を行う半導体もどんどん高性能化し、モーター同様に排熱量も増えてきているとされています。

言うまでもなく、精密機器の温度上昇は単純に障害でしかありません。特に半導体の熱管理は安定稼働に直接影響するなど重要で、効率的な冷却がなされなければ不具合に直結します。

このようにロボット制御の複雑化によりその排熱量も増加しており、冷却方式も空冷式 からより効率の高い液冷式 が注目されるなど、温度管理課題を解決する冷却システムそのものへの関心が高まってきています。

こうした動きは市場関係者の間でも注目されてきており、証券会社の中航証券によると、世界ロボット冷却システム市場の2024年から2031年までの年平均成長率 は35%に達すると予想されています。

汗をかく人型ロボットも登場

こうした温度管理課題に対し、既にさまざまなアプローチを行うロボットメーカーが現れてきています。

中国携帯電話大手の小米(シャオミ)は2026年4月、手指の精密な動きに特化した人型ロボットの「CyberOne V2」を発表しました。その精密さは指先で羽毛をクルクルと回すなど目を見張る性能を持つのですが、それ以上に注目を集めた のは水を使った冷却方式でした。

「CyberOne V2」の前腕部にはマイクロポンプを備えた冷却水循環システムが搭載されており、必要に応じ水分を循環させて気化させる、即ちロボット自身が汗をかくことで冷却するユニークな液冷システムとなっています。蒸発量は毎分0.5mlとごく少量で、これで約10W相当の放熱能力を有すると発表されています。

(引用:OTOFOOTAGE

以上、中国のロボット産業における冷却方式の現状について現地報道を追っていきましたが、機械工学にはずぶの素人ながら、筆者も今後は空冷 に代わり液冷式が主流となっていくのではないかと考えています。理由は単純に、自動車などでも液冷式がスタンダードであり、また今後ロボットの動作が複雑化するにつれ、排熱量も比例的に上昇していくとみられるからです。

ただどんな液冷式が主流となるかはまだ未知数であり、今後さまざまな企業がいろんな方式を出し、次第に統合されていくのではないかと思います。現時点では先ほど紹介した「CyberOne V2」の汗線方式が有力であるように見え、人体の中を血管が走るように、全身を冷却パイプが走るロボットも今後出てくるかもしれません。

※本記事のメインパネルはour china storyより引用しました