「残りバッテリー、10パーセント」。無機質な音声によって発せられるこの警告は、深夜の重要施設警備や災害現場捜索の「強制終了」を告げるものだ。ドローンの航続時間を延ばそうとすれば、より大容量のバッテリーを積まねばならない。結果、重量が増加して飛行効率をさらに奪う。このエネルギーと質量のジレンマが、空中ロボティクスの社会実装を阻むボトルネックといえた。
2026年4月、この物理的な制約を「光」によって乗り越える。そんな試みが始まった。レーザー無線給電技術を持つ株式会社SolaNikaと、産業用ドローンの旗手であるイームズロボティクス株式会社による業務提携。レーザーを地上から照射し続けることでドローンをバッテリーの束縛から解放し、空に半永久的な活動拠点を築く挑戦だ。監視や防災のあり方を大きく書き換える可能性を秘めている。(文=RoboStep編集部)
(引用元:PR TIMES)
2026年4月3日、SolaNikaとイームズロボティクスは、レーザー無線給電を用いた長時間滞空ドローンの共同開発を実施することに合意した。目には見えない光を「空中のコンセント」として機能させる、革新的なプロジェクトだ。
その起点は、東京科学大学の研究成果を基盤とするSolaNikaの光学制御技術。3次元空間を移動する機体を正確に捉えながら、受光セルに最適化したレーザーを照射し続ける「自動結像技術」および「予測追尾技術」において高い優位性を持つ。一方、福島県南相馬市を拠点とするイームズロボティクスは、レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)への対応など、実務と制度の両面で国内のドローン産業を牽引するメーカーである。
両社の共創により、3つのドローンの構築が進められている。監視の空白を排除する「警備用ドローン」、帰還なしに救難捜索を続ける「災害対策ドローン」、そして数キロメートルにおよぶ送電線などの大規模インフラを一度のフライトで点検する「点検用ドローン」だ。無線給電による連続的な滞空能力の実装は、これまでドローンが抱えてきた運用上の限界を大きく塗り替える。ドローンの設計思想におけるパラダイムシフトが、今まさに起ころうとしている。
どういうことか。従来のドローンは、全エネルギーをバッテリーという「質量」として自ら抱えなければならなかった。「光」の力で電力供給が外部化されると、機体設計の自由度は大きく向上する。重いバッテリーを最小限に抑えることができれば、余剰となった積載重量をより高性能なセンサーや作業用アーム、高度な演算処理を担うエッジAIデバイスへと振り向けられる。ドローンは単なる「空飛ぶカメラ」では既になく、空中で複雑なタスクを完遂する「フィジカルAI」として機能している。その一例であるといえよう。
この技術はドローンの役割を、「移動体」から「空中拠点」へと拡張させることに繋がる。電力供給が続く限り、ドローンは重力に抗って特定の空間にとどまり続けられる。そうすれば一時的な通信中継基地としての活用や定点での常時観測といった、従来の衛星やヘリコプターでは代替困難だった領域に活躍の場が見いだされるだろう。
ドローン産業は滞空性能、すなわちいかに“空に在り続けるか”を競う段階へと移行した。南相馬の現場で磨かれた制御技術と、アカデミアの英知を繋ぐ光学技術。この連携によって構築される供給基盤が、労働力不足が深刻化する日本の産業に新たな「光」をもたらすかもしれない。
バッテリーという重しを脱ぎ捨てた翼は、空を24時間体制のインフラへと変貌させる。レーザーという「光」によって、そこへ至る道筋は既に照らされている。