真夏の炎天下、泥に足を取られながら行う水田の除草作業。稲作において最も過酷で、多くの農家が頭を抱えるこの作業は、有機農業への転換を阻む最大の壁でもあった。農薬を使わずに美味しいお米を作りたいが、身体が持たない――。そんな現場の声に応えるかのように、テクノロジーが強力な助っ人を送り込んだ。
長野発のアグリテックベンチャー、株式会社ハタケホットケが開発した水田除草ロボット「ミズニゴール」の2026年モデルが登場した。従来比2倍の作業効率を実現し、大規模農家にも対応する進化を遂げたこのロボットは、日本の農業が抱える「担い手不足」と「環境負荷」という二重苦を解決する切り札となるのだろうか。(文=RoboStep編集部)

(引用元:PR TIMES)
2026年2月10日、ハタケホットケは「ミズニゴール」2026年モデルの予約受付を開始した。このロボットの除草メカニズムは非常に理にかなっている。水田を走り回ることで水を濁らせ雑草の光合成を遮断すると同時に、底面のブラシで物理的に雑草を掻き取る。これにより、除草剤を使わずに環境負荷ゼロでの除草を実現するのだ。その実力は人力作業と比較すれば一目瞭然で、従来モデルの時点で手作業の約15倍もの生産性を誇っていた。
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今回の2026年モデルでは、そこからさらに作業効率を倍増させ、まさに桁違いの省力化を達成している。まず、自動運転システムの刷新により走行精度が高まり、モーターの最適化でバッテリー稼働時間も延長された。さらに注目すべきは、ブラシ幅を従来の2倍となる4条幅(1,200mm)に拡大したモデルの登場だ。一度に広範囲を除草できるため、作業効率は劇的に上がり、稲への負担も半減する。これにより、従来は難しかった中規模~大規模農家での導入も現実的になった。
(引用元:PR TIMES)
制御面でも、日本版GPSとも呼ばれる準天頂衛星「みちびき」に対応した高精度な位置測位システム(GNSS)を搭載。これにより正確な位置把握が可能になった。田んぼの形状を計測して登録すれば、あとはボタン一つで隅々まで無駄なく自律走行してくれる。
導入のハードルを下げる工夫も徹底されている。購入だけでなく、レンタルや近隣農家でのシェアリングといった柔軟な提供形態を用意しており、補助金の活用も可能だ。「使ってみたいがコストが心配」という農家の背中を押す体制が整っている。

(引用元:PR TIMES)
「ミズニゴール」が単なる便利な機械と一線を画すのは、開発者自身が現役の農家であり、現場の痛みを熟知している点にある。
彼らは「機械さえあればすべて解決するわけではない」ことを知っている。例えば、地下茎から生える多年草などは機械除草だけでは完全に取り除くことが難しい。そこで同社は、ロボットの提供にとどまらず、「土づくり勉強会」も開催している。土壌の状態を科学的に把握し、雑草が生えにくい環境を整える「知識」と、生えてきた雑草を処理する「ロボット」。この両輪でアプローチすることで初めて、持続可能な有機農業が可能になるという考え方だ。
現在、日本国内で作られるお米のうち有機栽培の割合はわずか0.12%に過ぎない。農林水産省は「みどりの食料システム戦略」で有機農地の拡大を掲げているが、現状の普及率は0.7%にとどまる。数字が伸び悩む最大の要因である「除草の重労働」をテクノロジーで解消し、さらに土づくりの知見までセットで提供するハタケホットケの取り組みは、この停滞した状況を打破する起爆剤になり得る。
担い手が減り続ける中で、日本の原風景である水田を守り、安心安全な食を次世代に繋ぐ。長野の地から始まったこの挑戦は、農業を「苦労産業」から「希望産業」へと変えるための確かな一歩となるに違いない。