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2026.02.12

砂粒より小さな「0.16mm」を操る神業。エッジAIの筐体を変える実装技術

その部品は、指先に乗せても、人は気づかないかもしれない。サイズは0.16mm×0.08mm。砂粒として認識される粒子よりもさらに小さな極小のチップだ。この「肉眼ではほぼ見えない部品」を正確に掴み、基板上の狙った位置に壊さない力加減で置く。そんな人間業を遥かに超えたミクロの制御が、日本のロボット技術によって実現された。
2026年1月、工作機械・ロボットメーカーの株式会社FUJIが発表した世界初(※)の実装技術は、あらゆるモノが知能を持つ「エッジAI時代」のハードウェアを支える、極めて重要なマイルストーンとなる。(文=RoboStep編集部)※FUJI調べ

「0201M」の限界を突破せよ。ナノレベルの制御が生んだ世界初

2026年1月15日、FUJIは、同社の電子部品実装ロボット「NXTR」において、世界で初めて「016008M」サイズ(0.16×0.08mm)の部品実装に成功したと発表した。この成果は、1月21日から東京ビッグサイトで開催された「第40回 ネプコン ジャパン ーエレクトロニクス 開発・実装展ー」でも披露され、エレクトロニクス製造業界に衝撃を与えている。


(引用元:PR TIMES

これまで実用化されている電子部品の中で最小規格とされてきたのは「0201M(0.25×0.125mm)」だった。これだけでも十分に微細だが、今回成功した「016008M」は、その実装面積をさらに約50%も縮小する次世代規格だ。部品が小さくなればなるほど、ハンドリング(掴んで運ぶこと)の難易度は指数関数的に跳ね上がる。わずかな静電気で部品が吸着ノズルにくっついて離れなくなったり、空気の流れだけで吹き飛んでしまったりするからだ。

FUJIはこの物理的な限界に対し、4つのキーテクノロジーを進化させることで挑んだ。まず、極小部品の傾きや姿勢をリアルタイムで検出する「部品ハンドリング姿勢認識」。次に、吸着ズレや静電気の影響を極限まで抑制する「高精度部品ピックアップ制御」。そして、壊れやすい極小チップにダメージを与えないよう、優しく、かつ確実に押し込む「搭載荷重スーパーファイン制御」。最後に、ナノレベルの位置補正を行う「超高精度搭載位置決め制御」だ。


(引用元:PR TIMES

これらを組み合わせることで、ロボットはまるで顕微鏡の中の世界で外科手術を行うかのように、0.2ミリ以下の部品を高速かつ正確に基板へと配置していく。単に「掴んで置く」という動作の中に、日本のロボット制御技術の粋が詰め込まれていると言えるだろう。

AIを「物理的」に詰め込む。実装ロボが拓くウェアラブルの未来

この技術革新が持つ意味は、単なる「部品の小型化」にとどまらない。それは、AIがあらゆるデバイスに宿る「エッジAI時代」の到来をハードウェアの側面から決定づけるものだ。

現在、スマートフォンやスマートグラス、医療用ヘルスケアデバイスなど、身の回りの機器が高度なAI処理能力を持ち始めている。クラウドにデータを送らず、端末側でリアルタイムに解析を行う「エッジAI」を実現するためには、限られた筐体スペースの中に、より多くの高性能チップやセンサーを詰め込まなければならない。しかし、デバイス自体のサイズを大きくすることは、携帯性や装着感を損なうため許されない。

そこで求められるのが、「密度の戦い」への勝利だ。部品一つひとつのサイズを極限まで小さくできれば、同じスペースに搭載できる機能は倍増する。016008Mの実用化は、デバイスの「知能密度」を飛躍的に高めるための必須条件なのだ。例えば、コンタクトレンズ型のディスプレイや、体内埋め込み型のセンサーといった、かつてSFの世界の話だったデバイスも、この実装技術があれば現実味を帯びてくる。

ソフトウェアとしてのAIがどれほど進化しても、それを動かすのは物理的な電子回路だ。その回路を構成する無数の部品を、正確に、高速に並べ続ける実装ロボット。FUJIが達成した「0.16mmの神業」は、次世代デバイスがその「身体」を獲得するための不可欠なインフラとなるだろう。