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2026.02.10

法改正まで2カ月。東京ビッグサイトで見えた、物流ロボットが「効率化」から「義務」に変わる瞬間

物流現場におけるロボット導入は、長らく「投資対効果(ROI)」の文脈で語られてきた。「導入すればどれだけコストが下がるか」という経済合理性の議論だ。しかし、そのフェーズは終わりを告げようとしている。2026年4月に施行される「改正物流効率化法」。この法律は、企業に対し物流の適正化を「努力目標」ではなく「義務」として課すものだ。
施行直前の1月21日から23日にかけて、東京ビッグサイトで開催された「スマート物流EXPO」および「ファクトリーイノベーションWeek」には、差し迫った課題への解を求める企業の姿があった。会場を埋め尽くした最新ロボットたちは、もはや物流クライシスを乗り越えるための単なる便利な道具ではなく、企業の存続をかけた「必須インフラ」へと進化していた。(文=RoboStep編集部)

「悪路」も「柔軟物」も克服する、現場適応力の進化


(引用元:PR TIMES製造・物流現場でのヒューマノイドの開発・実装が加速中 ※2025年1月東京展 展示の様子

今回の展示会で特筆すべきは、ロボット側の「歩み寄り」だ。これまでの物流ロボットは、平滑な床や整理された棚といった「ロボットのために整えられた環境」でなければ性能を発揮できないものが多かった。しかし、法改正まで残りわずかとなった今、現場には大規模なレイアウト変更をする時間も予算もない。求められているのは、「今の現場にそのまま放り込める」適応力の高いロボットだ。

会場では、そのニーズに応えるソリューションが数多く披露された。例えば、THK株式会社が展示した次世代搬送ロボットは、ルートテープなどのガイドを必要としないだけでなく、最大10mmの段差や砂利道、鉄板の上といった「悪路」の走行を可能にした。これにより、整備された屋内だけでなく、半屋外の荷捌き場や古い倉庫施設でも導入の道が開ける。

また、ソフトバンクロボティクス株式会社が提案したのは、最小通路幅60cmという狭い空間でも走行可能な搬送ロボットだ。日本の狭小な倉庫事情に合わせ、人間とすれ違うのがやっとという通路でも、多数のセンサーで障害物を回避しながら最大300kgの荷物を運ぶことができる。

さらに、株式会社ブリヂストンが初めてお披露目した「ゴム人工筋肉」を用いたソフトロボットハンドは、ロボットの器用さを飛躍的に高めた。従来の硬いハンドでは把持が難しかった不定形物や傷つきやすい繊細なワークも、ゴムの柔軟性を活かして優しく、かつ強力に掴むことができる。「扱うモノに合わせてハンドを特注する」という手間を省き、多種多様な商品が流れるEC物流の現場にも即座に対応できるポテンシャルを示した。

(引用元:PR TIMES

これらの展示から見えてくるのは、「環境をロボットに合わせる」時代から、「ロボットが環境に合わせる」時代への転換だ。導入のハードルを技術側が極限まで下げることで、これまで自動化を諦めていた中小規模の現場をも巻き込もうとしている。

「CLO(物流統括管理者)」の武器としてのロボティクス

今回の展示会が帯びていた独特の緊張感の正体は、やはり4月の法改正にある。改正物流効率化法では、一定規模以上の荷主企業に対し、物流統括管理者(CLO) の選任と、中長期的な計画作成が義務付けられる。違反すれば勧告や社名公表の対象となるため、これはもはやコンプライアンス(法令遵守)の問題だ。

CLOに課されるミッションは、サプライチェーン全体の可視化と改善である。ここでロボットやDXソリューションが果たす役割は、「作業の代行」以上に「データの収集源」として重要になる。

会場では、株式会社アイシンのクラウド型配送管理システムや、パナソニック コネクト株式会社のAI配車システムなどが注目を集めた。これらは、トラックの実走行データや配送計画をデジタル化し、これまでベテラン担当者の「勘と経験」に依存していた配車・配送業務を定量的なデータへと置き換える。AIが弾き出した最適ルートや、リアルタイムの運行管理。これら全てが、CLOが経営層や国に対して報告すべき「物流改善のエビデンス」となるのだ。

(引用元:PR TIMES

BIPROGY株式会社が展示した倉庫状況の「見える化」ソリューションもその一つだ。監視カメラ映像から作業の滞留や荷物の状態を解析・データ化することで、ボトルネックを客観的に特定できる。

4月以降、物流の効率化は企業の社会的責任(CSR)から法的義務へと変わる。東京ビッグサイトの熱気は、ロボット導入が「先進的な取り組み」という加点要素から、事業を継続するための「免許更新」のような必須の手続きになりつつあることを示唆していた。法改正という外圧をテコに、日本の物流現場は今、強制的ながらも確実な進化の時を迎えている。