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2026.02.06

介護現場の新たな一手。「着るロボット」で高齢者の自立を促し、職員の負担も減らす“一石二鳥”モデル

「利用者の自立支援」と「職員の業務効率化」。介護現場において、この2つは常に両立が難しい永遠のテーマとされてきた。一人ひとりに手厚いリハビリを提供したくても、専門職の人数や時間は限られているのが現実だ。
このジレンマに対し、東京理科大学発のスタートアップ2社が共同開発したアシストスーツを活用した、新たなトレーニングモデル「マッスルスーツCARE」が解決策を提示している。本来、重労働を行う職員の「身体的負担軽減」のために生まれたロボット技術を、高齢者の「機能訓練」へと応用する新たなアプローチ。山形県の介護施設で導入が開始されたこのシステムは、現場にどのような変化をもたらすのだろうか。(文=RoboStep編集部)

「空気の力」で利用者の姿勢を整える、新たなリハビリ手法


(引用元:PR TIMES

2026年1月8日、株式会社イノフィスと株式会社CoreHealthは、介護施設向け機能訓練モデル「マッスルスーツCARE」が、山形県の補助金事業に採択され県内の施設で本格導入されたことを発表した。

このモデルのユニークな点は、その誕生の経緯にある。ベースとなっている「マッスルスーツEvery®  」は、元々介護職員が抱える深刻な腰痛を防ぐためのアシストスーツとして開発されたものだ。しかし、現場で使用する中で、装着して運動を行うと「姿勢が良くなる」「歩行が安定する」といった健康効果が利用者側にも得られることが明らかになったのだ。


(引用元:PR TIMES

「マッスルスーツCARE」は、この発見をリハビリ用に応用したモデルである。空気圧の力で股関節や脊椎をストレッチし、姿勢や可動域の  改善を図る「アクティブモード」と、アシストを受けながらスクワットなどを行い、無理なくインナーマッスルを強化する「パッシブモード」の2つを搭載している。

先行導入しているリハビリ特化型デイサービス「アゼリーリハビリ倶楽部」代表で医師の来栖 宏二氏 は、「パワーリハビリよりも前の段階である『立つ・座る』といった基本動作をサポートできる機器を探していた」と語る。デモンストレーションで利用者が試した際、わずか5回ほどの運動で姿勢に明らかな変化が見られたことが導入の決め手になったという。利用者からも「長年の腰の悩みがすっきりした」「以前より疲れにくくなった」といった具体的な効果を実感する声があがっているそうだ。

専門職に頼らず人手不足の現場を救う、「1対多」の運用モデル


(引用元:PR TIMES

このシステムが介護現場にとって画期的なのは、単にリハビリ効果が高いという点だけではない。最大のメリットは、運用の「属人性」を解消し、生産性を劇的に向上させる点にある。

通常、効果的な機能訓練を行うには、理学療法士などの専門職が利用者に「1対1」でつきっきりになり、身体を支えたり指導したりする必要がある。しかし、マッスルスーツCAREは安全性を重視した設計のため、専門職でない介護スタッフでも運用できる。 さらに、機器が動作をサポートしてくれるため、一人のスタッフが複数の利用者のトレーニングを同時に見守る「1対多」の体制を構築できる。

人件費の高騰や慢性的な専門職不足に悩む介護経営において、質の高いリハビリを提供しながら業務効率も上げられるこの仕組みは、まさに渡りに船といえるだろう。今回、山形県での導入が「介護テクノロジー定着支援事業費補助金」を活用したものであることからも、こうした生産性向上モデルに対する行政側の期待の高さがうかがえる。

「着るロボット」が職員の腰を守るだけでなく、利用者の「自分の足で歩き続けたい」という願いを叶え、さらには施設の経営課題まで解決する。この「三方よし」のモデルが全国に普及すれば、日本の介護現場はより持続可能で希望のある場所へと変わっていくはずだ。テクノロジーが人の可能性を引き出し、超高齢社会を支える柱となる未来に期待したい。