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2026.01.20

事業存続を左右する現場力──中国ロボット活用の実像

2025年12月4日、日中間のスタートアップ支援とオープンイノベーション支援を手掛ける匠新(ジャンシン)主催の「2025 日中イノベーション・デイ」で、CHINOH.AI CEOの齋藤 誠一郎さんが登壇した。テーマは「中国ロボットの日本への活用実態~事例・ノウハウ・今後の展望」。中国製ロボットの強みは「安さ」だけではない。日本の現場で成果を出す鍵は、導入後に止めない設計、複数機器の統合、そして長期運用を支える保守体制にある。齋藤さんは実例と数字を交えながら、ロボット活用が「効率化」ではなく「事業継続」の条件へ変わりつつある現実を示した。物流の最前線で何が起きているのか。現場の言葉で追う。(文=RoboStep編集部)

メーカーではない目線で語った中国ロボット活用の要点

2025年12月4日、ジャンシン(匠新)が主催する「2025 日中イノベーション・デイ」が東京にて開催された。日中間のイノベーション交流のさらなる促進を図ることを目的に、当日は日中の企業、投資機関、業界団体、メディアなど約200名が参加し、テクノロジーを軸に、日中企業間の産業連携や市場機会について活発な議論が交わされた。

「中国ロボットの日本への活用実態~事例・ノウハウ・今後の展望」と題したセッションに登壇したのはCHINOH.AI CEO齋藤 誠一郎さん。


CHINOH.AI CEO齋藤 誠一郎さん

齋藤さんはまず自身とCHINOH.AIの立ち位置を説明した。「私どもは、中国のロボットを使って工場や倉庫を自動化する会社です。ロボットを作っている会社ではありません」(齋藤さん)。CHINOH.AIは創業8年。7期目を終えた段階で累計35億円の受注実績を持つ。「直近3年間だけで約30億円を受注し、1プロジェクトあたりの規模はおよそ2~5億円。すでに10カ所以上の倉庫・工場で自動化を手がけてきました。お客様は上場企業を中心とした大手企業様です」(齋藤さん)

齋藤さんが強調したのは、自社がロボットメーカーではなく、複数の中国スタートアップと連携しながら、日本向けに設計・実装を行うインテグレーターである点だ。「中国には非常に優秀なスタートアップ企業がたくさんあります。そうした会社と連携し、日本向けに設計をして、デザインをして、導入しています」(齋藤さん)

一方で、難易度が高いのは導入そのものよりも、その後の運用だという。「難しいところは、実行と保守メンテナンスです。中国のロボットをそのまま買って終わり、という話ではありません。数億円規模の投資となる物流自動化では、5年から10年に及ぶ減価償却期間を前提とした安定稼働が求められます。お客様の荷物、大事なビジネスをお預かりする責任のある仕事ですので、プロジェクトマネジメントと長期の保守が欠かせません」(齋藤さん)

同社では日中バイリンガルのエンジニア体制を整え、設計から導入、保守までを一貫して担っている。「長期間、現場で使い続けられること。それが一番重要です」と語る齋藤さん。自身も中国での事業経験は25年に及び、日中双方の商習慣や現場感覚を踏まえた調整を行ってきたという。

EC化率10%未満の日本で、物流はどこが主戦場か

続いて齋藤さんは、日本の物流市場全体の構造について説明した。「日本のEC市場は約26兆円で、年率5%程度の成長があります。ただ『EC化率』はわずか10%未満です」(齋藤さん)

この数字が示すのは、消費の大半が依然としてリアル店舗で行われているという現実だ。コンビニ、スーパー、ドラッグストアといった店舗を支えているのが、BtoBの店舗補充物流である。「実は、この店舗補充が今いちばん重要な領域です。店舗で商品が切れない背景には、倉庫での仕分けと出荷作業があります。店舗からの発注データが集まり、埼玉県内などの倉庫で1日5000〜6000ケースを集めて出荷します」(齋藤さん)

従来、この作業はフォークリフトを中心とした人手に依存してきた。しかし、労働力不足が深刻化する中で、その前提が崩れつつある。「日本の人手不足は深刻です。今後大きなボトルネックになりかねません」と齋藤さんは述べた。

その具体例として、セッションで齋藤さんは、過去に手掛けた小林製薬の倉庫自動化事例を紹介した。「この事例では、人件費約4割の削減を実現しました。フォークリフトを運転する方が、特定エリアではゼロになっています。倉庫内では、無人フォークリフト、AGV、シャトル式搬送機、ロボットアームなどが連動して稼働していますが、すべて同じメーカーではありません。それぞれ強みのあるロボットを組み合わせ、私どもが一つの倉庫としてインテグレートしています」(齋藤さん)

ロボットが現場で止まらないことを最優先に、設計段階ではCADを用い、ミリ単位で動線を設計したという。

人口減少の現場が突きつける、自動化の必然性

セッション後半では、香川県で稼働中の最新事例が紹介された。ユニ・チャームの工場に隣接する物流センターで、無人フォークリフト約20台、シャトル型ロボット約20台などが導入されている。

「現在も稼働中ですが、現場にはほとんど人がいません。いるのはメンテナンススタッフだけです。このセンターでは、従来50〜60人分に相当するフォークリフト作業が自動化されました。年間で約1.5億円、8年間で12億円程度のコスト削減になります」(齋藤さん)

ただし齋藤さんは、「こうした数字以上に重要なのは『持続可能性』です。本質はコストではありません。事業を続けられるかどうかです」と強調した。背景にあるのが、地域の人口動態だ。

「香川県のある地域では、小学校3校の新入生が合計13人です。1校13人ではありません。10年後、働き手となる世代はさらに減少し、多くが都市部へ流出するかもしれません。人がいなくなれば、どれだけ売上があっても物流は回りません」(齋藤さん)

齋藤さんは、同様の問題が物流に限らず、農業、介護、交通、建設などあらゆる分野で起きていると指摘。人手不足による倒産は、すでに大きく増えている、と危機感を口にした。その上で、最後にこう締めくくった。

「日本か中国か、という話は重要ではありません。自社に必要な使える技術を活用し、人手不足に対応する。それしか選択肢はないと思っています」(齋藤さん)

齋藤さんの発言は、ロボット活用が効率化の手段ではなく、事業継続を前提とした判断になりつつある現状を、現場の言葉で示していた。