ロボットを用いたビル向けインフラを提供する株式会社Octa Roboticsは、ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社(以下、JESグループ)が提供するエレベーター保守サービス向けに、エレベーターとロボットを連携させる新サービス「LCI Box J」をリリースした。このサービスは、サービスロボットの活用において重要なロボットインフラの整備拡充を目的とし、低廉かつ簡易に導入できるエレベーター連携システムの構築を目指すものだ。
(引用元:PR TIMES)
この新サービスの基盤となっているのが、Octa Roboticsが独自に開発した「LCI」だ。LCIは、エレベーターや自動ドア、セキュリティゲートといった建物設備と、さまざまなメーカーのロボットとの間で、種類を問わないマルチベンダーでの連携を可能にする通信サービスである。国内の主要エレベーターメーカーの制御盤と相互接続が可能な安全性の高い接続方式を採用しており、国内でも既に数多くの導入実績を誇る。
Octa Roboticsはこれまで、大和ライフネクスト、JESグループとの3社連携により、建物・施設管理における清掃業務のロボットフレンドリー化(ロボットを導入しやすい環境への変革)に向けたエレベーター連携システムの開発事業に取り組んできた。この事業は、2023年9月に経済産業省の「令和5年度革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(ロボットフレンドリーな環境構築支援事業)に係る間接補助事業者」にも採択され、既に30施設での連携実証を完了している。
今回リリースされた「LCI Box J」は、これらの実績と知見を基に、JESグループが保守するエレベーターを対象として開発されたソリューションだ。建物管理におけるロボット導入のハードルとなっていたコスト面や仕様面での課題を解決し、管理業務の省人化に不可欠な「ロボットの階層移動」をより広く普及させることを目指している。
清掃、搬送、警備といったサービスロボットの性能は近年飛躍的に向上しているが、その社会実装には大きな壁が存在した。それは、ロボットの活動範囲がワンフロアに限定されてしまうという物理的な制約だ。
建物内を自由に移動できなければロボット導入による投資対効果は著しく下がり、本格的な普及の障壁となってしまう。「LCI Box J」のようなエレベーター連携ソリューションは、この制約を取り払うことでロボットの活動領域を飛躍的に拡大させる、まさに「最後の砦」を攻略する鍵となる。
Octa Roboticsの取り組みで特に注目すべきは、「標準化」と「マルチベンダー」という思想だ。同社は、ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)が発行した規格に基づくサービスを手掛けており、特定のロボットメーカーやエレベーターメーカーに依存しないマルチベンダー対応を強みとしている。これは施設オーナーやロボット導入企業にとって、機器選定の自由度を高め、導入コストを抑制する上で極めて重要だ。特定の企業が市場を独占するのではなく、業界全体で協調してロボットが働きやすい環境を構築しようとするオープンイノベーションの思想を体現していると言える。
「ロボットをあたりまえのインフラに」というOcta Roboticsのパーパスは、同社の事業の本質を明確に示している。彼らはロボットそのものを作るのではなく、ロボットが社会で活躍するための「インフラ」を整備することに注力しているのだ。これは、私たちが日常的に利用する道路や通信網のように、ロボットが活動するための基盤を整えるという長期的で本質的な視点である。経済産業省の補助事業への採択や数々の受賞歴は、同社の取り組みが持つ社会的な重要性と将来性が広く評価されていることの証左だ。
「LCI Box J」の普及は、JESグループが保守サービスを提供する多くの既存エレベーターに対して、後付けでロボット連携機能を追加できることを意味する。これにより、新築の高機能ビルだけでなく、日本中に存在する膨大な数の既存建物においてもサービスロボットの本格的な活用が一気に加速するだろう。エレベーター連携が当たり前になれば、清掃ロボットが夜間に全フロアを巡回し、搬送ロボットがオフィス間の書類を届け、警備ロボットがビル全体を監視するといった、真に省人化されたスマートビルの実現がいよいよ現実味を帯びてくる。