エクセディが開発したスマートロボットサービス「Neibo」が、埼玉県戸田市役所で窓口案内と市政情報提供に関する実証実験を実施した。生成AIと連携した音声会話と自律走行により、来庁者へのサービス向上と業務効率化の可能性を検証する。(文=RoboStep編集部)
株式会社エクセディは、埼玉県戸田市と連携し、同社が開発したスマートロボットサービス「Neibo」を活用した窓口案内および市政情報提供に関する実証実験を、2025年6月24日から7月11日までの期間で実施した。自動車部品メーカーとして知られるエクセディが、自社開発・自社製造のロボットで自治体のDX推進に貢献する意欲的な取り組みだ。
(引用元:PR TIMES)
今回の実証実験の舞台となった戸田市は、「戸田市デジタル宣言」に基づき、デジタル市役所の実現に向けてあらゆる業務のデジタル化を推進している。市役所内の案内業務や各種手続きをロボットで代替できないか模索する中で、今回の実証実験が実現した。実験では、戸田市役所の2階に「Neibo」のマルチロボットが設置され、生成AIと連携した音声会話による市政情報や手続きに関する案内、そして自律走行による目的地(担当窓口など)への案内といった業務を担い、業務効率化に繋がるかの検証が行われた。
実証実験を終えて、利用者や市役所職員からはさまざまな声が寄せられた。音声会話による案内に最初は戸惑いを見せる市民もいたものの、多くの人がNeiboとのコミュニケーションを楽しく体験したという。利用者からは、「入り口からは分かりにくい場所が多いので、連れて行ってくれるのはありがたい」「案内以外にも雑談ができて楽しい」といった好意的な意見が聞かれた。また、市の職員からは「外国語に対応できる職員が限られているので、代わりに対応してくれるのは嬉しい」と、多言語対応への期待も寄せられた。
一方で、「ロボットに話すのは少し恥ずかしい」といった心理的なハードルや、「一つの窓口内にも複数の受付があるので、そこまで細かく案内してくれたら嬉しい」といった、さらなる機能向上への具体的な要望も挙がった。これらのリアルな声は、今後のサービス改善に向けた貴重なフィードバックとなるだろう。
(引用元:PR TIMES)
「Neibo」は、「今ある環境」に「今すぐ導入できる」ことをコンセプトにした人にやさしい進化型自律ロボットサービスだ。今回使用された「マルチロボット」は、21.5インチのタッチパネルを搭載。自律走行やルート走行など4つの走行モードを備え、ノートパソコンやタブレットからWebブラウザでアクセスできる標準アプリだけで、マッピングやルート設定などをノーコードで簡単に行える。また、オープンAPIを通じて生成AIなどの外部システムと柔軟に連携できる点も大きな特長だ。
今回の戸田市役所での実証実験は、自治体におけるサービスロボット導入のリアルな姿を映し出している。寄せられた利用者や職員の声は、ロボットの導入が単に業務を効率化するだけでなく、「楽しさ」や「外国語対応による安心感」といった、これまでにない新しいコミュニケーション価値を生み出す可能性を示している。その一方で、「少し恥ずかしい」といった心理的なハードルや、「もっと細かい案内を」という機能的な期待も浮き彫りになった。これは、人間とロボットが共存する公共空間においては、より繊細なサービス設計と、利用者の心情に寄り添ったインタラクションがいかに重要であるかを物語っている。
(引用元:PR TIMES)
自動車部品メーカーであるエクセディが、自社開発・自社製造のロボットで自治体DXに貢献しようとする姿勢も興味深い。ノーコードでの簡単設定やオープンAPIによる柔軟な連携といったNeiboの特長は、専門的なIT人材が不足しがちな自治体の現場や、既存システムとの連携が必須となる公共施設にとって、導入のハードルを大きく下げるものだ。この背景には、高度な技術を一方的に提供するのではなく、「誰でも使える」ことを目指す、現場に寄り添った開発思想があることがうかがえる。
「デジタル市役所」の実現に向けてロボットが担う役割は大きい。市民からの一般的な質問への対応や、複雑な庁舎内の案内といった定型業務をロボットが担うことで、人間の職員は、より複雑な相談業務や、個別の事情に深く配慮する必要がある業務に自らの時間と能力を集中させることができる。これは限られた人的リソースを最適化し、結果として市民サービスの質そのものを向上させることに繋がるだろう。
今回の実証実験はエクセディにとって、自社サービスが自治体の省人・省力化や市民サービス向上にどう貢献できるかを検証する重要な機会となったはずだ。ここで得られたリアルなフィードバックを基にサービスを改善し、将来的には多言語対応の強化や、より複雑な手続きの案内、さらには地域のイベントでの活用など、自治体DXを支える「新たな相棒」として、Neiboが全国の市役所で活躍する未来が期待される。この取り組みは、テクノロジーが行政サービスをより身近で温かいものに変えていくという、デジタル化の先にある本来の目的を体現しようとする挑戦だ。