1. RoboStep TOP
  2. ロボット業界の今を学ぶ
  3. 次世代自販機から学ぶ~OMO(Online Merges with Offline)が描く新しい消費体験

2025.07.08

次世代自販機から学ぶ~OMO(Online Merges with Offline)が描く新しい消費体験

New Innovationsが開発・運営するスマートコーヒースタンド「root C」が、西武東戸塚S.C.アネックス館に設置された。タッチパネル式オーダー端末「root C KIOSK」も導入され、専用アプリなしでも手軽にスペシャルティコーヒーが楽しめるようになり、OMO(オンラインとオフラインの融合)による新たな顧客体験の提供を加速する。(文=RoboStep編集部)

「root C」が商業施設へ、アプリレス注文で利便性向上

株式会社New Innovationsは、同社が開発・運営するスマートコーヒースタンド「root C(ルートシー)」を、神奈川県横浜市の商業施設「西武東戸塚S.C. アネックス館」6階に新たに設置した。今回の設置では、専用のタッチパネル式オーダー端末「root C KIOSK(ルートシーキオスク)」も同時に導入され、利用者は専用スマートフォンアプリをダウンロードすることなく、その場で手軽に「root C」こだわりのスペシャルティコーヒーを購入できるようになった。


(引用元:PR TIMES

「root C」は、アプリから時間を指定して注文することで、受け取りたい時間に合わせて挽きたて・淹れたてのスペシャルティコーヒーを専用ロッカーから非接触で提供する、完全無人営業のコーヒースタンドだ。ユーザーの嗜好に合わせてコーヒーを提案するパーソナライズ診断「root C MATCH™」機能も特徴で、2021年にはグッドデザイン賞を受賞、日経トレンディ2022年ヒット予測ランキングでは「次世代自販機」の一つとしても選出されるなど、その革新性が注目されてきた。これまでもオフィスビルなどを中心に設置場所を拡大してきたが、今回の西武東戸塚S.C.への設置は、より幅広い層の顧客との接点を増やす商業施設への本格展開の一環と位置づけられる。


(引用元:PR TIMES

新たに導入された「root C KIOSK」は、この顧客層拡大をさらに後押しする。利用者はKIOSK端末のタッチパネルでメニューを選択・注文し、電子マネーやクレジットカード、QRコード決済、交通系ICカードなどで支払いを行う。注文状況に応じて最短2分でコーヒーが提供されるため、アプリの事前ダウンロードや会員登録といった手間を省き、偶発的な利用やアプリ操作に不慣れな層でも気軽に本格的なコーヒーを楽しめるようになった。もちろん、従来通りアプリからの注文も可能で、利用シーンに応じた使い分けができる。

OMOが変える消費体験と無人サービスロボットの未来

「root C KIOSK」の導入は、New Innovationsが進めるOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)戦略の深化を象徴している。アプリというオンラインチャネルと、KIOSKというオフラインのタッチポイントを併設することで、顧客は自身の利用シーンやITリテラシーに応じて最適な購入方法を選択できる。これは、オンラインの利便性・パーソナライズ性と、オフラインの即時性・手軽さを巧みに組み合わせ、顧客一人ひとりに最適化されたシームレスな購買体験を提供するというOMOの本質を体現したものと言えるだろう。


(引用元:PR TIMES

株式会社New Innovations 代表取締役CEO兼CTO 中尾 渓人 氏は、「人類を前に進め、人々を幸せにする」という理念を掲げ、OMOソリューションを通じて企業の生産性向上や顧客体験の向上に貢献することを目指している。同社はスマートコーヒースタンド「root C」だけでなく、かき氷やハンバーガーの全自動調理ロボット開発にも着手するなど、ロボティクスを核とした多角的な事業展開を進めており、その根底にはOMOによる新しい価値創造への強い意志が感じられる。

無人のスマートコーヒースタンドという業態自体も、現代社会において大きな可能性を秘めている。人手不足が深刻化する小売・飲食業界において、「root C」のような省人化・無人化ソリューションは、店舗運営コストの削減と効率化に直結する。また、時間帯によっては24時間稼働も可能であり、非接触でのサービス提供は、パンデミック以降定着した新たな生活様式にも適合する。商業施設やオフィス、駅、公共施設など、多様なロケーションへの展開ポテンシャルも高く、人々の日常動線上に質の高いコーヒーを手軽に提供する新たなインフラとなり得る。

今後は、データの活用とプラットフォームとしての拡張性が鍵となるだろう。アプリやKIOSKを通じて蓄積される購買データ、利用時間帯、個人の嗜好データなどを高度に分析することで、より精度の高いパーソナライズ提案、効果的な新商品開発、さらには設置場所ごとの需要予測に基づいた効率的な在庫管理や豆の補充計画などが可能になる。また、将来的には、外部サービスとの連携や、コーヒー提供以外の機能追加など、プラットフォームとしての拡張も期待される。

「root C」のようなスマートスタンドは、単にコーヒーを販売するだけでなく、都市空間における新たなマイクロリテール拠点、あるいは個人の嗜好や行動データを活用した情報発信・収集の結節点としての役割も担い得る。その進化は、私たちの消費行動や都市生活の利便性、さらには街のあり方にも影響を与える、大きな可能性を秘めていると言えるだろう。