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2025.07.16

過酷な床下点検から作業員を解放!大東建託とエアリアルワークスが挑む建設DXの新機軸

大東建託とエアリアルワークスが、業界最高水準の軽量性と急速起動を誇る床下検査ユニット「MOGRAS6L」を共同開発し、試行導入を開始した。従来の過酷な床下点検作業の労働負荷を大幅に軽減し、賃貸住宅などの定期点検業務の効率化と品質向上に貢献する。(文=RoboStep編集部)

過酷な床下点検に終止符!「MOGRAS6L」の機能

賃貸住宅の維持管理において、水漏れやシロアリ被害の早期発見は極めて重要であり、定期的な床下点検が推奨されている。しかし、この床下点検作業は、作業員が狭く暗い床下に匍匐(ほふく)の姿勢で潜り込み、サーチライトを頼りに目視で確認するという、身体的に大きな負担を強いるものだった。既存の床下検査ユニットも存在したが、持ち運びの際の重量、充電時間の長さ、そして高さに制約のある床下を潜行する上での形状や踏破性能などに課題があり、その活用は限定的だった。

こうした背景のもと、大手住宅メーカーである大東建託は、建設業界全体の労働負荷軽減という喫緊の課題に対し、多様な物件で活用可能な床下検査ユニットの開発を目指した。パートナーとして選ばれたのは、ドローンなどによる検査機器開発・販売で豊富な実績を持つ株式会社エアリアルワークスだ。両社の協業により、このほど床下点検に最適化された検査ユニット「MOGRAS6L(モグラス・シックス・エル)」が誕生し、6月からの試行導入が開始された。


(引用元:PR TIMES

「MOGRAS6L」は、まさに現場のニーズに応える形で開発された。その最大の特徴は、業界最高水準を謳う軽量性と機動性にある。本体重量はバッテリーを含めてわずか3.4kgと、作業員一人でも容易に持ち運びが可能。現場到着後、約2分という急速起動で作業を開始できる。車高は160mmと低く抑えられ、狭隘(きょうあい)な床下空間への進入を容易にする一方、最大で約17cmの段差を乗り越えることができ、多様な床下環境への対応力を高めている。走行速度は最速2.0km/hで調整可能、最大1時間の連続動作が可能でありながら、充電時間はわずか20分と、作業のダウンタイムを最小限に抑える設計となっている。これらの性能は、従来の床下点検作業の常識を覆す可能性を秘めている。

ロボット点検の可能性と社会実装への道

「MOGRAS6L」の導入がもたらす直接的な効果は、作業員の身体的負担の大幅な軽減と安全性の向上に留まらない。点検時間の短縮と効率化による生産性の向上、そしてカメラ映像による点検品質の均一化と記録のデジタル化は、建物のトレーサビリティ向上にも繋がる。これらは単なる作業の代替ではなく、建設・メンテナンス業務における「きつい・汚い・危険(3K)」という長年のイメージを刷新し、業界全体の労働環境改善と魅力向上に貢献し得る重要な一歩だ。

点検ロボット技術の進化は、建設DXを加速させる原動力となる。ドローン技術で培われた高度なセンサー技術や自律移動技術は、今後さらに小型化・高性能化が進むだろう。将来的には、「MOGRAS6L」のようなユニットにAIが搭載され、ひび割れや水漏れの兆候、シロアリの痕跡などを自動で検出し、劣化予測を行うといった、より高度な点検・診断サービスが実現することも期待される。収集された点検データは、建物のライフサイクルコストを最適化するための維持管理計画や、予防保全の精度向上に大きく貢献するはずだ。

「MOGRAS6L」のような点検ロボットは、人手不足が深刻化する建設・住宅メンテナンス業界において、質の高い社会インフラを将来にわたって維持していくために不可欠なツールとなり得る。大東建託という現場ニーズを深く理解する大手デベロッパーと、エアリアルワークスという専門技術を持つスタートアップとの連携は、実用的かつ革新的なロボットソリューションを生み出す理想的な協業モデルと言える。今回の試行導入は、その有効性を実証し、今後の業界全体のイノベーションを加速させる触媒となることが大いに期待される。