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2025.06.30

環境・エネルギー分野でのPLATEAU活用事例3選

PLATEAU(プラトー)は、国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデル化プロジェクトです。都市の建物や地形を精密に再現するだけでなく、建物の名前や用途、構造などの詳細なデータも付与されており、防災シミュレーションや都市計画、映像制作など幅広い分野で活用されています。

実物と類似したCGの建物や都市である「デジタルツイン」の活用法として、PLATEAUの事例を随時紹介しています。今回は「環境・エネルギー分野」に焦点を当てています。

(過去に掲載したPLATEAUの基礎知識「PLATEAUとは?国土交通省が主導する都市の3Dモデル化プロジェクトを紹介」も是非併せてご覧ください。)

 

市民協働による樹木管理DX

(引用:PLATEAU

仙台市の榴岡(つつじがおか)公園を実証場所として、樹木情報を収集・データベース化する取り組みが行われました。PLATEAUの3D都市モデルと連携した樹木管理用アプリを開発し、市民参加型のワークショップを通じて、樹種や樹勢などの詳細情報を取得。これにより、低コストかつ効率的な樹木データベースを構築しました。

(引用:PLATEAU)仙台市公園樹木管理台帳データベース

さらに、CO2吸収量など樹木の環境価値を可視化することで、都市緑化や脱炭素まちづくりの推進につなげます。この取り組みを全国に広げることで、市民の環境意識向上と持続可能なまちづくりの実現が期待されます。

樹木管理のDXにおいて、大規模かつ網羅的なデータの効率的な収集は非常に重要です。市民参加型による樹木情報の収集・更新は、低コストかつ短期間で完了することが期待されるアプローチであり、今回の実証実験によって一定の効果が確認されました。今後は、調査手法の改善や参加者へのインセンティブ設計など、さらなる発展に向けた取り組みが必要とされています。

壁面太陽光発電のポテンシャル推計

(引用:PLATEAU

横浜市を対象に、PLATEAUの3D都市モデルを用いて壁面太陽光発電のポテンシャルを推計する実証実験が行われました。建物の位置や形状、周辺建物による日影等を考慮したアルゴリズムを開発し、壁面ごとの日射量や発電量を算出します。

都市部では太陽光発電パネルの屋上設置スペースが限られている建物が多く、壁面太陽光発電パネルの設置が有効。しかし、実証データが少ないことから設置後の発電効率や費用対効果を推計することが難しいという課題があります。

実証実験の結果、高層建築物が密集するみなとみらい21地区を含む対象エリアでは、年間の総発電量は壁面の方が屋根面よりも大きいことが明らかになりました。また、朝夕など太陽高度が低い時間帯でも、壁面は一定の発電ポテンシャルを有していることも明らかに。

(引用:PLATEAU)各建物面における発電ポテンシャル推計値の可視化画像

現状、建物壁面での太陽光発電は、設置荷重が大きいという課題がありますが、ペロブスカイト太陽電池(あらゆる形状に曲げられる太陽電池)等のより軽量・柔軟な次世代太陽光電池の技術革新により、壁面太陽光発電の更なる活用が期待されています。

今後、建築物モデルLOD3(扉や窓といった外構部が追加されたモデル)を用いて窓面などの開口部を考慮した精緻な推計や、特定の位置の3D都市モデルの差替えや編集が可能なUIを持つアプリケーションの開発により、壁面太陽光発電の導入具体検討に役立てられると考えられます。

地域エネルギーマネジメント支援システム

(引用:PLATEAU

カーボンニュートラルや分散型電源の普及を背景に、建物単位から街区・エリア単位での地域エネルギーマネジメントのニーズが高まっています。東京都日本橋エリアを対象に、PLATEAUの3D都市モデルを活用した地域エネルギー需給予測、およびREM(地域エネルギーマネジメント)メニューの効果予測システムを開発する実証実験が行われました。

このシステムでは、3D都市モデルの属性データ(建物の分類や建築年など)やジオメトリ(形状)データを活用し、エリア内の建物の時刻別エネルギー需要と太陽光発電システムの発電ポテンシャルを含めた地域エネルギー需給を予測します。さらに、面的融通やデマンドレスポンス(電力の需要量を供給量に合わせる手法)等のREMメニューの効果を予測する機能も備えています。

(引用:PLATEAU

検証の結果、3D都市モデルを活用したエネルギー需給推計モデルは、地域エネルギーマネジメントに使用するのに十分な精度を達成しました。また、開発したシステムにより、電力逼迫時の節電要求に応じるための施策を検討し、十分な電力消費抑制を実現するための時間帯とREMメニューの組み合わせを予測・導出に成功。

デベロッパーや自治体等のユーザーにとって、様々なREMメニューの効果検証をリアルタイムに行い、比較検討できる点が非常に有効であることがわかりました。今後は、より高精度の推計方法や、地方都市に適応できるメニューの実装など、さらなる発展を目指しています。

まとめ

環境保護やエネルギー分野では、検証範囲と情報量が大きいことから、精度の高いデータを収集できないという課題がありました。しかし、PLATEAUの3D都市モデルには建物の外壁情報や材質といった詳細なデータが組み込まれているため、実際の現場と同じように低コストで検証することができます。

実際の建物で検証を行うことも非常に労力のかかるのが、都市部のDXや研究の難しい所。PLATEAUを初めとした都市部のデジタルツイン化が完了した暁には、効率的な都市開発が進むかもしれませんね。