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2025.04.04

移動と作業を1台で実現「モバイルマニピュレーター」を知る!

ロボットの腕や作業する手の部分を指す「マニュピレータ」。一般的に工場や物流現場では、決められた位置に固定され、その場を離れることはありません。ここに移動機能を備えたものが「モバイルマニピュレーター」です。移動可能となっただけで、その活用シーンはさらに広がり、人間に近い働き方すら実現できるかもしれません。この記事ではモバイルマニピュレーターの基本的な機能から具体的な活用事例、導入時の課題まで、ビジネス視点で分かりやすく解説します。

モバイルマニピュレーターとは?

(引用元:Mobile Industrial Robots) 

モバイルマニピュレーターとは、移動ロボットに物をつかんで操作できる機械アーム(マニピュレーター)を搭載したロボットです。工場内を自由に移動しながら、部品の搬送や機械操作など、さまざまな作業を1台でこなすことができます。従来の固定式ロボットや単純な搬送ロボットでは対応できない課題に対して、新たな解決手段として期待されています。

従来のロボットでは解決できない問題

固定式のロボットアームや無人搬送車(AGV)単体では、作業場所を移動しながら複数の工程を担当するような作業を行えません。固定式ロボットは決められた範囲でしか作業ができず、AGVは物を運ぶことしかできないためです。

これに対してモバイルマニピュレーターは、移動しながらさまざまな作業をこなすことができ、より人間に近い働き方を実現できる新しいソリューションとして注目を集めています。

モバイルマニピュレーターの基本機能と特徴

(引用元:オムロン

移動ロボットにアームを搭載したモバイルマニピュレーターは、従来のロボットにはない柔軟性と作業能力を備えています。高度なセンサー技術とAIの活用により、人との協働を実現しながら効率的な作業を可能にしています。

移動と作業を組み合わせた新しい価値

モバイルマニピュレーターは、工場内を自律的に移動しながら、部品のピッキングや工作機械への部品の出し入れ、検査作業などを行うことができます。

例えば、工作機械3台以上を巡回して部品の出し入れを行う場合、固定式の協働ロボットを複数台設置するよりも、1台のモバイルマニピュレーターで対応する方が効率的です。必要な時に必要な場所で作業できる柔軟性は、人手不足に悩む製造現場に新しい可能性をもたらしています。

高度なセンシングと制御技術

最新のモバイルマニピュレーターは、レーザースキャナーや3Dカメラなどの高度なセンサーを搭載し、周囲の状況を正確に把握することができます。注目すべき技術として、バラ積み部品を1秒未満で認識して最適な把持点を決定できる技術や、移動時の位置ずれを自動で補正する機能などがあります。これらの技術により、人との安全な協働や精密な作業が可能になっています。

活用が期待される主な用途

製造現場や物流倉庫など、さまざまな産業でモバイルマニピュレーターの活用が始まっています。特に効果を発揮する3つの主要な用途について、具体的な活用シーンを見ていきましょう。

工作機械への部品の出し入れ

工作機械への部品の出し入れは、モバイルマニピュレーターの代表的な活用シーンです。従来は作業者が機械での加工が終了するのを待って、加工前の部品を入れ替える必要がありました。しかし、モバイルマニピュレーターなら複数の機械を巡回しながら効率的に作業を行えます。

特に、20分程度の加工時間がある場合、その間に別の機械の作業を行うことで、待機時間を有効活用できます。工作機械3台以上を担当する場合、約1,000万円の導入コストも十分に回収可能とされています。

バラ積み部品のピッキングと搬送

倉庫や部品棚からの部品ピッキングもモバイルマニピュレーターの重要な用途です。最新の画像認識技術により、バラ積みされた部品から必要なものを正確に取り出し、目的の場所まで搬送することができます。

特に、複数の作業エリアを移動しながらのピッキング作業は、固定式ロボットでは実現が難しく、モバイルマニピュレーターならではの強みとなっています。

夜間無人運転による生産性向上

欧州では、昼間は人手で多品種少量生産や特急品の対応を行い、夜間はモバイルマニピュレーターによる無人での量産加工を行うといった新しい生産スタイルが広がりつつあります。これにより、工作機械の稼働率を上げながら、人材を付加価値の高い作業に集中させることが可能になります。

導入における課題と解決策

(引用元:ciRobotics

モバイルマニピュレーターには大きな可能性がある一方で、導入にはいくつかの課題があります。しかし、技術の進歩により、これらの課題は着実に解決されつつあります。

位置精度の確保

モバイルマニピュレーターの走行部分である無人搬送車(AGV)には、移動時に数センチメートルの位置ずれが生じることがあります。これは、部品の出し入れなど精密な作業が求められる場面では大きな課題となっていました。

しかし、アームに搭載された3Dセンサーによる位置補正や、2次元マーカーを利用した位置調整など、さまざまな解決策が実用化されています。また、センサー技術の進歩により、従来は200万円程度だった3Dセンサーが数十万円まで低価格化し、導入のハードルも下がってきています。

コストと投資対効果

モバイルマニピュレーター1台の導入コストは1,000万円以上と、決して安くありません。しかし、3台以上の工作機械を担当する場合や、24時間稼働を実現できる場合には、十分な投資対効果が見込めます。また、近年のAGVや協働ロボットの低価格化により、システム全体のコストダウンも進んでいます。

モバイルマニピュレーターの積極活用に向けて

製造現場の自動化ニーズが今後さらに高まることが予想される中、モバイルマニピュレーターへの期待も大きくなっています。技術の進歩によって導入の障壁は着実に下がり、活用事例も増えつつあります。

特に、昼夜で異なる生産スタイルを使い分けるなど、人とロボットの最適な協働を実現する新しい働き方のツールとして、モバイルマニピュレーターの可能性は広がり続けています。製造現場の課題と自社のニーズを明確にし、適切な活用方法を見極めることで、モバイルマニピュレーターは人手不足時代を乗り越えるための強力な味方となるはずです。