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2025.03.27

RaaS(Robot as a Service)とは 〜サブスクで広がるロボット活用の新潮流〜

ロボット導入を推進しよう、という思いはあれど、実際は高額な導入コストや専門知識の必要性から、特に中小企業ではロボット導入に踏み切れないケースが少なくありません。そんな課題を解決する新しい仕組み「RaaS(Robot as a Service または Robotics as a Service)」が注目を集めています。本記事では、RaaSの仕組みやメリット、具体的な活用事例までを分かりやすく解説します。

RaaSが生まれた背景

(引用元:photoAC

従来、ロボットの導入には数百万円から数千万円規模の初期投資が必要でした。加えて、専門知識を持った人材の確保や、保守・メンテナンス費用など、導入後も継続的なコストが発生します。

こうした課題に対し、クラウドサービスのように必要な時に必要な分だけ利用できる「RaaS」という新しいモデルが登場しました。SaaSやクラウドサービスの普及とともに、ロボットの利用形態も大きく変わりつつあるのです。

RaaSがもたらす5つのメリット

(引用元:トヨタL&Fカンパニー少人数・短期間・大量の仕分け作業を実現するロボットソーター「t-Sort」月額30万円から導入可能なRaaSプランだ

ロボットを「所有」するのではなく「利用」するという発想の転換により、RaaSは従来のロボット活用におけるさまざまな課題を解決します。企業規模を問わず活用できる仕組みとして、以下のような具体的なメリットがあります。

導入時の大規模投資が不要

従来のロボット導入では、本体価格に加えて、システム構築や周辺設備の整備など、数千万円規模の初期投資が必要でした。RaaSでは、月額利用料や従量課金制を採用することで、大規模な初期投資なしでロボットの活用を始められます。その結果、中小企業でも最新のロボット技術を活用できる機会が広がっています。

人手不足の解消と作業効率化

ロボット導入による自動化のメリットを、大規模な設備投資なしで享受できます。単調な繰り返し作業や重労働を、必要な期間だけロボットを「雇用」して任せることが可能です。特に中小企業にとっては、人手不足対策として正社員を雇用するよりも柔軟な対応が可能になります。

予測可能な運用コスト

月額定額制や従量課金制により、ロボット活用にかかるコストが明確になります。従来型の導入では予測が難しかった保守費用や更新費用も含まれているため、長期的な事業計画が立てやすくなります。また、利用状況に応じて料金プランを見直すことも可能です。

繁閑に合わせた柔軟な運用

季節性の高い業務や繁閑の差が大きい業務では、必要な時期に必要な台数だけロボットを利用できる柔軟性が大きなメリットとなります。

繁忙期には24時間365日稼働できるロボットを一時的に導入し、閑散期には台数を減らすことで、無駄なコストを抑えながら必要な時だけ能力を増強できます。従来は、繁忙期の需要に合わせてロボットを導入せざるを得ませんでしたが、RaaSではそのような制約から解放されます。

継続的なアップデートとメンテナンス

ベンダーによる定期的なメンテナンスとソフトウェアのアップデートにより、常に最適な状態でロボットを活用できます。専門知識を持った人材を社内で確保する必要がなく、技術革新への対応も迅速に行えます。また、故障時の対応もベンダーが担当するため、運用面での心配も軽減されます。

広がるRaaSの活用事例

導入のハードルが下がったことで、さまざまな業界でRaaSの活用が始まっています。それぞれの現場で、どのような活用が進んでいるのか見ていきましょう。

製造ラインの24時間化を実現した中小工場

シカゴの製造業者Polar Manufacturingでは、時給8ドルでロボットアームを導入し、製造ラインの無人運用化に成功しています。

同地域の人件費(最低賃金で時給15ドル)と比較すると、大幅なコスト削減を実現しています。このように、人件費の高騰に悩む中小企業にとって、RaaSは人材確保と設備投資のジレンマを解決する新たな選択肢になり得ます。

非接触・非対面を実現するサービスロボット

商業施設やオフィスビルでは、遠隔操作可能な警備・清掃ロボットをRaaSで導入する動きが広がっています。

日本では、羽田空港での自動運転モビリティサービスや、オフィスビルでの警備ロボットの活用が始まっています。従来なら高額な設備投資が必要だった分野でも、RaaSを活用することで初期費用を抑えながら、人との接触を最小限に抑えた新しいサービス提供モデルを実現できています。

収穫量連動型の次世代農業支援

農業分野では、カメラによる画像認識で農作物の生育状況を判断し、適切なタイミングで収穫を行うロボットの導入が始まっています。収穫量に応じた課金体系を採用することで、天候不順による収穫量の変動リスクを軽減できます。

このように、農家の経営実態に即した新しい料金モデルが、RaaSによって実現されているのです。

RaaSで変わるロボットビジネスの常識

ロボット活用の形を大きく変えつつあるRaaS。導入のハードルを下げることで、より多くの企業がロボットを活用できる環境が整いつつあります。専門知識がなくても活用できる手軽さと、必要な時に必要なだけ利用できる柔軟性は、ビジネスの在り方そのものを変える可能性を秘めています。今後は製造業に限らず、さらに多様な分野でRaaSの活用が広がっていくでしょう。