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2025.03.06

ロボットによる自動化と雇用への影響は?注目される「代替」と「創出」の可能性

製造現場からサービス業まで、ロボットによる自動化が急速に進む中、「ロボットに仕事を奪われる」という不安の声が聞かれます。しかし実際には、導入方法次第で雇用を増やすチャンスにもなり得ます。ロボットと雇用の関係は決して単純ではなく、企業の取り組み方によって大きく変わってくるのです。最新の研究結果から見えてきた、その実態と成功の条件を解説します。

国によって異なるロボット導入の影響

引用元:ロボカル 

興味深いことに、ロボット導入による雇用への影響は国によって大きく異なります。特に日本では、他の先進国と比べて異なる傾向が見られ、むしろ雇用の増加につながっているケースが目立ちます。これは、日本企業特有の雇用慣行や、ロボット導入に対する独自のアプローチが影響していると考えられています。

日本の場合、1980年代から製造業を中心にロボット導入を積極的に進めてきました。当初から「人の代替」ではなく「人との協働」を重視し、導入したロボットを活用して事業を拡大していくアプローチを取ってきたのです。これにより、たとえば自動車産業では、溶接工程の自動化で余剰となった人材を、品質管理や新製品開発など、より付加価値の高い業務にシフトさせることができました。

一方、アメリカなどでは、コスト削減を主目的としたロボット導入が中心となり、結果として雇用の減少につながるケースが多く見られます。この違いは、単にロボットを入れるか入れないかではなく、どのように活用していくかが重要であることを示しています。

雇用が増えるか減るかを分ける2つの要因

引用元:ロボカル 

ロボット導入が雇用に与える影響を決定づける要因は、主に2つあります。1つは人の仕事がロボットに置き換わる「代替効果」、もう1つは生産性向上により新たな仕事が生まれる「生産性効果」です。この2つの効果のバランスによって、最終的な雇用への影響が決まってくるのです。

代替効果が強く出るのは、単純作業の機械化を目的としたロボット導入の場合です。例えば、倉庫での荷物の運搬や工場での単純な組立作業など、定型的な業務の自動化では、確かに人手は減ります。しかし、それだけを見ていては、本当の影響は見えてきません。

生産性効果とは、ロボット導入により作業効率が上がり、その結果として事業が拡大し、新たな雇用が生まれる現象を指します。例えば、製造工程の一部を自動化することで生産能力が向上し、その結果として売上が拡大。それに伴い、営業や製品開発、アフターサービスなど、新たな職種での雇用が増える、といったケースです。

自動化で雇用を増やすために企業がすべきこと

引用元:ロボカル 

ロボット導入を雇用創出につなげるには、戦略的な取り組みが欠かせません。特に重要なのが、人材の再配置と育成、そして新規事業の創出です。多くの成功企業に共通するのは、ロボット導入を単なる省人化ではなく、事業発展の機会として捉える考え方です。

まず重要なのが、適切な人材の再配置です。ロボット化される業務から、より創造的な業務への配置転換を計画的に進めることで、企業全体の生産性を高めることができます。例えば、製造現場のスタッフをロボットのオペレーターや保守要員として育成したり、顧客との接点を持つ営業職へシフトしたりする例が見られます。

次に注目すべきは、従業員の能力開発支援です。新しい職務に必要なスキルを習得するための研修プログラムの提供や資格取得支援など、従業員の成長をバックアップする体制が重要です。

さらに、自動化で生まれた余力を活用して新規事業を立ち上げる取り組みも効果的です。例えば、製造業での経験を活かしたメンテナンスサービスの展開や、蓄積したノウハウを活かしたコンサルティング事業への参入など、新たな雇用を生み出す機会として活用できます。

ロボット導入は雇用創出のチャンスになりうる

ロボットの導入は、必ずしも雇用の減少につながるわけではありません。むしろ、適切な戦略の立案とその実行により、企業の成長と雇用の創出につながる可能性を秘めています。重要なのは、単なる省人化ではなく、人とロボットの最適な協働を目指すこと。そして、その過程で生まれる新たな機会を積極的に活用していく姿勢です。これからの企業には、このような視点でのロボット活用が求められているのです。