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2026.01.07

人型だけじゃない?中国で拡大進む四足歩行ロボット

2025年9月、中国の山東港口日照港石臼港区の管理を担う地元企業の山東港口科技集団は、同港湾地区にある穀物保管所の警備巡回において、ロボットの運用を開始しました。使用するロボットには同社が開発した「諸葛智能」シリーズと呼ばれるAIが搭載され、移動方式に応じて四足歩行ロボットには「木牛」、タイヤ/キャタピラ式には「流馬」などと、三国志好きには思わずニヤリとさせられるネーミングがなされています。

このうち四足歩行ロボットの「木牛」は、中国港湾地区における警備巡回用ロボットとしては初の導入だと主張されています。こうした港湾地区に限らず、現在中国では四足歩行ロボットの警備巡回分野での応用や模索が広がっており、今後さらなる応用拡大、ひいては市場拡大も期待されています。近年、中国では人型ロボットの開発競争が加速していますが、こちらの四足歩行ロボット分野でもその発展は目を見張るものがあります。

そこで今回は、中国における四足歩行ロボット市場の概要を説明するとともに、主に人型ロボットと比較した特徴についてご紹介します。

担当ライター 花園祐(はなぞの・ゆう)

中国・上海在住のブロガー。通信社での記者経験を活かし、経済紙などへ記事を寄稿。独自の観点から中国のロボット業界を考察する。好きな食べ物はせんべい、カレー、サンドイッチ。

市場、単価ともに拡大傾向

初めに四足歩行ロボット市場規模からみていきます。

中国メディアの中商情報網によると、2024年における中国の四足歩行ロボット市場規模は前年比40.4%増の6.6億元(約136億円)で、2025年(予測)は同28.8%増の8.5億元(約175億円)に達すると見込まれています。

 続いて販売台数を見ていくと、2024年は前年比11.1%増の2.0万台、2025年(予測)は同15.0%増の2.3万台とされています。市場規模、販売台数ともに成長率が二桁を維持してはいるものの、その伸び幅で比較すると、販売台数は市場規模に比べ大きく下回る状態となっています。これは見方を変えると、四足歩行ロボットの1台当たり平均販売単価は上昇傾向にあると言え、より高性能、高価格化へと向かっていることを示唆しています。

また応用種類で見ていくと、ペットロボとしてなどのコンシューマー用が60.5%に対し産業用は39.5%と、ちょうど6:4くらいの比率で分かれています。現状においては、工業分野などにおける産業用途よりもホビー、それも個人消費者向けの需要が大半を占めているようです。

中国勢が世界シェアでトップ2

引き続き、メーカー別のシェアを見ていきます。

四足歩行ロボットの世界市場では現在、日本でも既に事業を展開している中国の杭州宇樹科技有限公司(宇樹科技、Unitree)が32.4%でこの分野のトップシェアを握り、2位には同じ中国勢の杭州雲深処科技(雲深処科技、DEEP Robotics)が18.9%でランクインしています。3位にはこの分野でかつて世界をリードし、ソフトバンクも一時保有していた米国のBoston Dynamics(12.2%)が入り、その後はANYbotics(6.6%)、Ghost Robotics(5.5%)という順番となっています。

上述の通り四足歩行ロボット分野では既に宇樹科技と雲深処科技の中国企業が世界トップ2で、この2社だけで世界の約半分のシェアを占めるに至っています。また日本でもスマートフォン、スマート家電を販売しているシャオミこと小米集団も四足歩行ロボットに力を入れており、今後そのシェアを拡大してくる可能性もあるでしょう。

このように、四足歩行ロボット分野における中国企業の急拡大は目を見張るものがあり、前述の中国国内市場の急拡大ぶりも鑑みると、今後数年間は中国企業のシェアがさらに拡大していくものと予想されます。

人型に比べ安定度が高く、技術障壁が低い

以上、四足歩行ロボットの市場概要についてみてきましたが、見ての通り人型ロボットと同様に近年、中国ではその市場規模や技術が拡大しており、普及範囲も広がってきています。

そんな四足歩行ロボットの特徴を述べていくと、第一に言えることとしては人型ロボットに比べ動作時の安定度が高く、技術障壁が低く、原価も抑えやすいことでしょう。二足歩行で且つ重量ある上半身を抱える人型に比べ、四足歩行ロボットは四つ足による歩行時の安定性は言うまでもなく、姿勢制御に求められる技術も決して低くはないものの、人型に比べればその度合いは下がります。そのため重量物の運搬においても人型以上の性能を発揮する可能性があり、こうした特性から産業面での活用が期待されています。

ただ技術障壁が人型に比べ下がることから、歩行や走行をするだけで高い評価や注目が得られる人型に比べ、四足歩行ロボットは技術そのものが脚光を浴びる要素にはなりづらいところがあります。実際、中国メディアの報道を見ていても技術以上にその用途、つまり何ができるかが多く論じられる傾向があります。であれば今後、四足歩行ロボットの販売においては潜在的な市場ニーズを掴み、その用途に必要な性能を備えた製品を開発、リリースできることが飛躍のカギになってくるでしょう。

セキュリティよりも救急に市場価値があり

では具体的にどんな用途や業界で四足歩行ロボットの需要があるのか。

第一に挙げられるものとしては冒頭に挙げた警備巡回こと、セキュリティ業界があります。倉庫や電力施設など、敷地面積が膨大な施設を常に警備するとなると多大な労力が必要となり、監視カメラをもってしてもカバーすることは並大抵ではありません。それだけに人型よりも悪路に強く、稼働時間も長い四足歩行ロボットはかねてより、この分野への応用が期待されていました。

そんな中国のセキュリティ業界の市場規模を眺めてみると、2024年は前年比0.5%増の9,600億元(約19.8兆円)、2025年(予測)は同2.5%増の9,810億元(約20.2兆円)とされています。十分巨大な市場規模ではあるものの、近年成長率はやや鈍化してきています。

一方、同じく四足歩行ロボットの応用先としてはもう一つ、災害時の救急も挙げられることが多い用途です。具体的には人が入り込めないような狭い崩落現場などでの負傷者探しや、山岳地などでの物資搬送などで、こうした分野への注目の広がりとともに近年、市場規模は拡大を続けています。

具体的にデータを見ていくと、2024年の中国救急業界規模は前年比13.2%増の2.5兆元(約51.6兆円)、2025年(予測)は同10.1%増の2.7兆元(約55.7兆円)となっており、規模、成長率ともにセキュリティ業界を大きく上回っています。

 

筆者個人としても、人型ロボットでは代替の難しい分野でもあり、救急業界こそが四足歩行ロボットにとって最も需要が高く、将来性がある市場だとみています。もっとも今後の技術革新によってはさらなる応用分野へ広がる可能性も十分に秘めており、そうしたまだ見えない需要を的確に見つけ、早期に対応する機種を開発できればこの分野における急成長も夢ではないでしょう。