多くの機器がAI・IoT化するなか、競合優位性を高める鍵ともいえる「アフターサービス」について考える本連載。JapanStepのパートナー企業で、全国規模の体制で100社以上のサポートを担うJBサービス株式会社(以下、敬称略)とタッグを組みお届けしている。連載第2回目は、産業機械のロボット化を進めるリビルドテクノロジー株式会社(以下、敬称略)代表取締役社長 中津川 壮 氏をゲストに迎え、JBサービスの前田 英穂氏と保守サービスに求められている新たな価値について大いに語り合っていただいた。(文=RoboStep編集部)
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「我々の仕事は、単に機械を直すお手伝いをすることではなく、お客様のビジネス目標を支えることにあります」。そう語るのは、JBサービス株式会社の前田 英穂 氏だ。同社は全国に43の拠点と2カ所のコールセンターを構え、ITとメカ(機械装置)の双方に精通した技術者による保守サービスを提供している。
JBサービス株式会社 サービスソリューション営業事業部 AIoTサービス営業部 インサイドセールス 前田 英穂 氏
保守対応とは単なる「修理」にとどまらない。障害が起きた瞬間に駆けつけるだけでなく、障害を未然に防ぎ、業務の停止時間を限りなくゼロに近づける設計思想そのものが問われている。
例えば、障害時に予備機を即時配送したり、あらかじめ冗長化された機器を設置したりすることで「止めない仕組み」を構築。さらにはAIやIoTを活用し、現場の状態を常時モニタリングして、異常の予兆を察知する仕組みも整備が進んでいる。前田氏は「現場が止まらないことが、エンドユーザーの満足度に直結する」と語る。
こうした体制が可能なのは、JBサービスが長年にわたりIT保守とメカ(機械装置)のトラブルに対応してきた経験と、全国規模のサービス網を有しているからだ。現場で求められるのは、単なる理論ではなく、日々の運用に根ざした「実践力」だという。
リビルドテクノロジー 代表取締役社長 CEO 中津川 壮 氏も、メンテナンス性を重視する姿勢そのものが企業価値を左右するとの考えを示し、「障害対応だけでなく、平常時にいかに安心を届けるかが重要」と指摘。柔軟性や設計段階からの連携の必要性に注目している。
リビルドテクノロジー株式会社 代表取締役社長 CEO 中津川 壮 氏
産業機械の自動化やロボット化が進む中、システムのブラックボックス化が課題となっている。前田氏は「設計段階から保守性を考慮することが、今後ますます重要になる」と指摘する。
制御モジュールのユニット化によって現場での修理負担を軽減し、即時に備品交換ができる設計にしておく。こうした構造は、メンテナンスの効率化だけでなく、人材育成や作業の標準化にも大きく寄与する。
中津川氏も「ソフトとハードが複雑に絡み合う今、両者を理解できる保守設計のプロが必要になる」と述べ、設計・開発とメンテナンス現場との連携強化の必要性を強調する。
また、開発支援においては「製品単体」ではなく「設備全体」の最適化が求められているとし、個別対応ではなくトータルな視点での設計思想が問われるようになってきた。設置現場や運用環境によって、必要とされる保守性も千差万別。だからこそ、標準化とカスタマイズを両立できる体制づくりが重要だという。
山奥の水門や高所の設備など、危険な場所への立ち入りを避けるため、遠隔制御や自動化へのニーズは年々高まっている。中津川氏は「これからは現場に行かずに対応するのが基本になる」と語る。
前田氏も「IoTカメラやリモートでの故障診断、さらにはAIによる予兆保守も現実的な手段になってきた」と話す。実際、物流倉庫のフォークリフトの動作ログをAIが解析し、最適な動作パターンを導き出すといった取り組みも始まっている。
加えて、現場に設置したカメラとネットワークを連携させることで、遠隔からのトラブル対応も可能になる。必要なのは、事後対応のスピードだけでなく、事前の設計で「起きにくい構造」をいかに仕込めるか。その積み重ねが、結果としてトラブル対応の負荷軽減やユーザー満足につながっていく。
「AIやセンサー技術を活用すれば、“経験と勘”に頼っていた保守作業も、データによって標準化できるようになります。これまで属人化していた対応を組織的に支えることが、今後のアフターサービスの鍵になるでしょう」(前田氏)
「AIと機械工学で新しい価値を生み出す」——。リビルドテクノロジーが掲げるビジョンだ。同社では現場知と技術知を融合する開発が進められている。
AIは自律動作プログラムや遠隔操作など新しい価値をもたらしている
前田氏は「開発会社と保守会社の協業によって、より実用的で長持ちするシステムを作れるようになる」と強調。中津川氏も「メーカーの論理だけでは、ユーザーの満足は実現できない。現場に向き合う姿勢が信頼を生む」と語る。
保守性は、いまや製品の「売れ行き」をも左右する重要な要素である。その価値を最大化するためには、最初から最後まで一貫した“共創”の思想が不可欠なのだ。
(連載第3回に続く)
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