「金融が変われば、社会も変わる!」を合言葉に、未来の金融を描く方々の想いや新規事業の企画に役立つ情報を発信しているNTTデータのメディア「OctoKnot(オクトノット)」。JapanStepプロジェクトの「提携メディア」に参画いただき、MetaStepを中心にコラボレーションしています。今回は相互掲載企画の第6弾。今秋ローンチ予定のJapanStepメディアプロジェクト第4弾「SpaceStep」にも関係する「宇宙」分野の話となります。これまで解説してきた金融知識から発展する話となりますが、ぜひ知っておいていただきたいトピックです。それではよろしくお願いいたします。
1950年ころから本格化した宇宙開発も、最近では国家の宇宙開発プロジェクトに加え、民間企業もさまざまな宇宙関連ビジネスを手掛けるようになっています。宇宙旅行や月面探査、商業用衛星の活用などが活気づくなか、長期的な視点も含め金融サービスはどのように関与できるのでしょうか。この記事は宇宙関連ビジネスに対して金融がどのような役割を担うのかを検討した内容になります。
ロケットエンジンの開発により、人類は宇宙空間にアプローチをし、大国によりさまざまな宇宙での活動がされてきました。人工衛星の打ち上げや月面着陸、無重力空間を利用した実験などがそれにあたります。最近では、太陽系外の小惑星の採集活動、月面資源の探査の試み、多種多様な目的での衛星の活用、宇宙旅行などが話題になっています。
一方で、静止軌道上の衛星の過密化、宇宙開発の結果として失敗したり役目を終えたりした人工物がスペースデブリ※1として宇宙活動を妨げる原因となることなどが問題視されています。また、国家以外にも民間企業が宇宙開発を行うようになってきています。このようにさまざまな主体が宇宙での活動に参画するようになると、権利や義務の問題や、それを解決する手段についても考慮する必要が生じます。
※1スペースデブリ:特に活動をすることもなく地球の衛星軌道上を周回する人工物体、宇宙のごみ。耐用年数を終えたり故障したりした人工衛星や、ロケットの破片や本体であったもの。宇宙開発に伴いその数は増え続けているが回収やコントロールが難しく問題となっている。
宇宙での活動に対する金融サービスの役割はいまだ明らかになっていない部分も多くあります。本格的な宇宙開発や宇宙での活動を行ううえで、金融はどのような役割を担うことになるのでしょうか。金融市場に対するルール作り、資金集め、リスク対応、決済手段、データ分析など、地上で行ってきた活動が、どのように宇宙で活用されるのかを、「宇宙開発の基盤となるもの」、「宇宙での活動をサポートするもの」に整理して検討した内容を報告します。
この記事では、宇宙ビジネスへの金融機関の関与を2つの段階に分けて取り上げます。最初は宇宙開発初期段階での「宇宙開発の基盤となる金融の役割」とし、法律や政策に関する関与、宇宙開発に適した資金調達基盤の構築、宇宙開発に対する多くの企業、団体、個人への動機づけともなる宇宙関連のデータ分析の提唱について説明します。
また宇宙開発が進んだ段階での「宇宙での活動をサポートする金融の役割」について取り上げます。宇宙空間を使ったビジネスが進んだ際に、金融機関、は企業、団体、個人の宇宙での活動をサポートするために、宇宙輸送へのリスクテイク、宇宙インフラの金融資産化、宇宙資源の取引市場の設計と運営、宇宙活動に適した決済と通信手段の運営などを行うことが想定されます。
このような構成で、宇宙開発の初期段階の基盤構築と、宇宙開発が進んだうえでの宇宙活動サポートで金融機関の役割を整理します。
現時点で宇宙開発は、国家やその連合、一部の先進的な民間企業などにより行われています。宇宙開発が進展していき、多くの企業や小規模な団体、個人が宇宙での活動に参加するためには、宇宙開発の基盤が必要になります。こうした基盤の構築とも言える宇宙開発の初期段階に金融はどのように関与するかを整理してみました。
宇宙活動に対してどのような法的な解釈がされ、権利と責任が付与されるのかはいまだに明確化されている状況とは言えません。新たな資源を発見した場合の権利や、宇宙空間の残置物に対する責任など、宇宙活動をする前提となる権利と義務についてあたりをつける必要があります。このような状況で、金融機関は宇宙活動に関する法律や政策について、金融事業の視点から以下のようなコンサルティングサービスを提供できると考えられます。
宇宙損害賠償制度に関するアドバイス:
宇宙空間での損害に関する国際責任や、国内法に基づく損害賠償制度について、金融機関の保険やリスク管理の知見を提供できます。宇宙開発が本格化する前の段階で地球上の制度設計のノウハウを駆使して、たとえば、適切な損害賠償担保措置の設計や、国際条約と国内法の整合性確保などのサポートがそれにあたります。
宇宙ビジネスの法的リスク分析:
金融機関はこれまでの地球上でのビジネスを実現した知見をもとに、新規の宇宙ビジネスの計画段階で、関連する国内外の法規制や将来的な法改正の可能性を分析し、リスクと機会を評価できます。たとえば、衛星データの利用に関する規制や、衛星画像の提供など静止軌道上で行われるサービスの法的位置づけなどについて、具体的な助言を行います。
国際宇宙法の解釈と政策提言:
金融機関は、今後、宇宙条約や月や惑星での活動の協定などの国際宇宙法が進んでいくと、その解釈について貢献できます。金融機関が行ってきた国際取引の経験を活かした見解がそのバックボーンになります。また、宇宙資源開発やスペースデブリの除去など、新たな宇宙活動に関する国際ルール形成への政策提言を行います。
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※本記事の内容には「OctoKnot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。