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2025.01.22

【連載】中国・深セン視察レポート~中国のシリコンバレーで感じたテクノロジーの現在地(第2回)

人口1700万人を超える中国を代表する巨大都市深セン市。中国のシリコンバレーと呼ばれ、ロボット産業も牽引する同都市に、中国専業の総合商社、西日本貿易の協力で現地取材したレポートの第2回。今回は、ドローンによるデリバリーの体験や日本の秋葉原がモデルとされる巨大電気街「華強北(ホアチャンベイ)」を訪問した様子をお届けする。(文=RoboStep編集部) 

※第1回が未読の方は是非1回コラムからご覧ください。

コロナ禍以降、デリバリーサービスが一気に普及したのは日本も中国も同じ。中国深センでは、ドローンで配送をしていると聞き、現地で体験をすることにした。

サービスを提供しているのはフードデリバリー大手の美団(メイトゥアン)。美団は中国のフードデリバリー大手で、コロナ禍を追い風に業績を急速に伸ばした企業のひとつだ。日本の出前館やウーバーイーツのように、アプリを使って簡単にさまざまなものがデリバリーできる。ドローン配送については深圳と上海でサービスを展開中だという。

アプリで簡単に注文が可能。今回はセブンイレブンでドリンクを注文することに

配送エリアや拠点は上海よりも深圳の方が多く、オフィスビル、観光地、医療拠点など多くの場所に配送サービスを提供している。配送サービスは広東セブンイレブンとも提携し、店舗で扱う数千種の商品をドローンで配送するサービスも提供している。

配送は、玄関先まで届けてくれるわけではなく、深セン市内に十数か所存在するキオスクと呼ばれる拠点(ピックアップできる場所)まで届けてくれる。

これがキオスクと呼ばれるドローンが配送する場所だ。今回注文した場所にはオフィスビルが隣接していて、多くの人が当たり前のように利用していた

注文から決済は、美団のアプリで行う。迷うことなく注文することができた。注文したコーラは常温か冷たいものかも選択可能

ドローンが何時何分に到着するか、現在の位置も示さる。日本でいうタクシー配車アプリに近いUIだ。ドローンなので渋滞等の遅延もなくかなり正確な時刻が出るという

注文して、しばらくすると、どこからともなくドローンの音が聞こえてくる。機械音が徐々に大きくなり、どんどんこちらに近づいてくる。キオスクの天井が開き、ドローン着陸に向けた準備が進む。

到着の数分前に屋根が開き、ドローン到着を待ち構える。音は静かで、注目していなければ屋根が開く瞬間に気づかないかもしれない

段ボールを抱えたドローンがキオスクの真上までくると、一気にまっすぐ降下。荷物を届けると、すぐに飛び立っていく。

ドローンが降下するスピードは想像以上に早い

荷物が到着するとアプリに通知が入る。指定のパスワードを入力すると、段ボールに入った商品を受け取ることができる。

美団のロゴが入った指定の段ボールに入れられて商品は配送される

 商品を段ボールから取り出したのち、所定のボックスに段ボールを返却する

ボックスの中には多くの段ボールが。利用している方が多いことがわかる(実際、取材中に何度もドローンの発着を見ることができた)

ちなみに深センの街には、無人の配送車の姿を見ることもできた

ちなみにドローンで配達できるのは、箱の重さも含め現在は2キログラム以内だという。重量オーバーしてしまう際は、ドローンに代わり人がデリバリーする。現在は、実証実験の域を抜けないように感じたが、こうした実証で積み上げた知見により、新しいデリバリー方式が確立されていくように感じた。

続いてRoboStep編集部が訪れたのは、深圳の電気屋街「華強北(ホアチャンベイ)」。華僑北は、世界最大級の電気屋街だが、元々は日本の秋葉原を参考に開発された街区だ。現在は、本家の秋葉原よりはるかに大きなスケールで、その規模は20倍とも30倍ともいわれている。

こちらが華強北(ホアチャンベイ)で一番存在感のある「華強電子世界」の外観。1号館と2号館で構成されている。

この電気屋街には、世界中のありとあらゆる電子部品が取引されている。家電量販店で発売されるような一般の家電製品はもちろん、開発のための半導体や工具など、様々なものが取り扱われていた。

今回は電気屋街の一部と「華強電子世界」の店内を視察。確かに雰囲気が秋葉原に似ている。風情ある古きお店と、新しい家電量販店が同居するようなエリアだ

デルやレノボ、Huaweiなど有名メーカーデバイスが売られているコーナーから、ドローン、VRヘッドセット、おもちゃ、電子楽器など、本当にさまざまなものが売られていた。

 以前日本にも多くあったような懐かしい雰囲気を感じる場所も

今回驚いたのは、日本で以前一般的だったデジタルカメラ(中古)が大量に販売され、若い人がこぞって見ていたこと。デジカメが当たり前になった時代、むしろこうしたデジカメが若い世代に人気になっているのだという。

店頭にはニコンやキヤノン、Appleなど日本でもお馴染みのメーカーの名前がずらり。時に偽物も潜んでいるようなので注意も必要そう

日本でも秋葉原の存在が製造業の成長を下支えしたように、ここ中国の深圳においても、華強北がスタートアップ企業の成長を支えている。「華強電子世界」の最上階には、自社で開発した電子部品を持ち込み、テスターなどを使い試験を行うことができる場所もある。

「華強電子世界」の7Fに持ち込めば実証試験にも対応してくれるという。スタートアップにとっても嬉しい施設だ

深センらしいエネルギーを感じる場所なので、訪問の際は立ち寄ってみると発見があるかもしれない。

(第3回に続く)