宮城県大郷町。宮城県中部の黒川郡に位置する町にある農業法人である有限会社大郷グリーンファーマーズはビニールハウスで野菜を生産している。経験や勘に頼った温度管理では、業務効率が悪い。温度計の読み間違いによるミスも発生し、スキルの伝承も困難。こうした悩みに応え、共同で実験を行い、新たなソリューションが生まれた。農業×IoTでビニールハウスの温度管理を効率化するものだ。(文=RoboStep編集部)
Webコンテンツ配信プラットフォームおよびセキュリティサービスを提供するアクセリアは、農業【温度センシングデバイス[TempGazer]】サービスを開発、リリースしたことを発表した。開発の背景にあったのは、宮城県大郷町の農業法人、有限会社大郷グリーンファーマーズが抱えていた課題だったという。
有限会社大郷グリーンファーマーズは1999年に設立された農業法人。環境に優しい農業へのこだわりを持ち、法人設立前から、オーガニック野菜の直売、資源循環型農業など、新たな農業のかたちに挑戦してきた。今回のソリューションは、ビニールハウスで野菜の生産をしている農家の課題から開発がスタートしたという。
具体的には「車で移動しビニールハウス内の温度計を直接視認するため、多くの時間がかかる」「温度計の読み間違いによるミスが発生することがある」「温度上昇や低下に関する確認タイミングがほぼ経験によるものであり、スキルの伝搬が困難」といった課題だ。
今回の開発を手掛けたのはCDNサービスやDXソリューション事業を展開するアクセリアだ。同社は、単なる農業IoTプラットフォームの提供だけでなく、多くの課題解決や自動化、省力化、DX推進に寄与し、産業の継続や発展に貢献することを目的としたサービス「FarmGazerシリーズ」の開発を続けてきたという。
今回発表したのは温度センシングを中心としたサービス、温度センシングデバイス「TempGazer」だ。ビニールハウス内の温度を遠隔で確認できるようになるため、温度確認にかかる作業時間を削減でき、突然の温度変化にも対応できるようになる。
具体的な機能はこうだ。1つのデバイスにセンサと通信機能を搭載する。SIMを搭載しているため、新たに通信環境を構築する必要はない。温度情報はクラウドに保存され、専用のUIにてデータを可視化。PCやスマホから観測したデータとグラフなどが確認可能となる。
デバイスは「AC電源給電式」と「電池式」の2タイプを選択できる。電源を潤沢に確保できない農地でも電池式で利用可能だ。温度変化はメールで通知される。ユーザが指定するしきい値温度に達した場合に、通知メールが送信されるので、現地にいなくても、温度管理が可能となる。
アクセリアは、今後もいくつかの機能追加や改善を予定しているという。具体的には、通知機能の拡充(SMSやLINEへの通知)、小型化および省電力化、センシング項目の拡張(湿度、照度、水分量、土壌Ph等の計測)、保存したデータを基にした、統計情報や予測情報などの分析結果の提供、収穫時期予測、生産作業計画のサポート、決済方法の拡充だ。
国内の産業では、農業を中心に人員不足や将来の担い手の減少などが作物の安定供給へ影響するなど深刻な課題となっている。こうした技術の活用は、省人化、効率化に不可欠と言えるだろう。農家の課題から新しいソリューションが生まれる。こうしたケースは今後も増えていくだろう。