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2025.07.15

LLM×ビジョンAIでスケートボードの滑走行為を検知!人手不足に効果を発揮するAI

ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)と西尾レントオールが協業し、LLM推論エンジンを用いた「AIスケートボーダー検知システム」のレンタル提供を開始する。建設現場や公共施設などでの安全対策と省人化を実現し、深刻化するスケートボーダーによる迷惑行為問題の解決を目指す。(文=RoboStep編集部)

「AIスケートボーダー検知」、その技術と社会的背景

近年、公園や駅前広場、商業施設敷地内などでのスケートボーダーによる迷惑滑走が全国的に深刻化している。新潟市では年間1,200件を超える通報があり、横浜市都筑区でも月間約50件の苦情が寄せられるなど、器物損壊や通行人との接触事故が後を絶たない。深夜や広範囲にわたるエリアでの巡回警備には限界があり、物理的・人的対策だけでは十分な効果を上げられていないのが実情だ。こうした状況を受け、AI技術を活用した常時監視と自動通報システムへのニーズが急速に高まっている。

この課題に対し、ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)と西尾レントオールは、独自のLarge Language Model(LLM)推論エンジンを用いた「AIスケートボーダー検知システム」のレンタル提供を開始する。

(引用元:PR TIMES

本システムの最大の特徴は、LLMとビジョンAIを組み合わせたハイブリッド推論による高精度な行動判定だ。単なる画像解析に留まらず、行動の文脈を理解することで、スケートボーダーの滑走行為を人間の判断に近い精度で検出する。システムはエッジデバイスで人物を検出し、クラウド上のLLMで詳細な行動分析を行うハイブリッド構成を採用。市販の汎用IPカメラに対応しているため、専用機材の追加導入が不要で初期投資を抑制できる点も大きなメリットだ。また、スケートボーダーを検出した際には、録画や音声による警告も可能となっている。

この革新的なシステムを社会に広めるため、両社は強固な連携体制を構築。全国400拠点以上、10万社を超える顧客基盤を持つ西尾レントオールが、建設現場や公共施設、商業施設などへの導入提案とレンタル提供を担う。一方、DMPは技術提供者として、システムの開発と継続的な機能強化を推進していく。

AI監視が拓く、安全で快適な公共空間の未来と課題

「AIスケートボーダー検知システム」の導入は、迷惑行為の抑止や深夜帯の違反行為の確実な記録による検挙支援、24時間365日の無人監視体制による警備コスト削減、施設破損の未然防止といった直接的な効果が期待される。これは単なる業務効率化に留まらず、AIが人間の目や判断を補完・拡張し、従来は困難だったきめ細やかな安全管理を実現する可能性を示すものだ。
西尾レントオール株式会社 技術開発部 執行役員部長 藤田 全彦 氏は、「建設・インフラ業界は深刻な人手不足に直面しており、AIを活用した省人化は待ったなしの経営課題。DMPの革新的技術により、安全性向上とコスト削減を同時に実現できる本ソリューションは、業界の新たなスタンダードになると確信している」と、その期待を語る。

株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル 代表取締役会長兼社長CEO 山本 達夫 氏も、「当社のLLM技術が現実世界の問題解決に直結することを実証できた。西尾レントオールの圧倒的な市場プレゼンスと組み合わせることで、社会インフラのDXを加速させる」と述べ、本システムがセーフティ分野における画期的な取り組みであり、安全性と快適性を備えた次世代都市空間(スマートシティ)創出の重要な礎になるとの認識を示している。

しかし、こうしたAI監視システムの普及には、いくつかの重要な論点も存在する。まず、高度な監視技術はプライバシーへの配慮と常に隣り合わせだ。データ収集・利用の透明性確保、誤検知や意図せぬ情報収集を防ぐための厳格なガイドライン策定と倫理的運用が不可欠となる。また、AIはあくまで支援ツールであり、最終的な状況判断や対応は人間が担うべき場面も多い。人間とAIがそれぞれの強みを活かし、効果的かつ社会的に受容される協調運用モデルを構築していく必要があるだろう。技術の急速な進化に対し、関連法規や社会規範の整備が追いついていない現状も無視できない。技術の恩恵を最大限に引き出しつつ、負の側面を抑制するための建設的な議論とルール形成が求められる。

今回のシステムは、スケートボーダーによる迷惑行為という明確な課題解決に特化している。しかし、その根底にある技術は、より広範な都市空間の安全性向上や災害時の状況把握、あるいは見守りが必要な人々への支援など、AIによる「目」が社会インフラとして機能する未来を予感させる。その実現には、技術的洗練だけでなく、社会全体のコンセンサス形成と制度設計が不可欠であり、今回の取り組みはその試金石となるかもしれない。