1. RoboStep TOP
  2. ロボット業界の今を学ぶ
  3. 機械学習(ML)とは?人間の教え方に学ぶAIの基本技術を解説

2025.05.16

機械学習(ML)とは?人間の教え方に学ぶAIの基本技術を解説

機械学習(ML)とは、コンピューターに「経験から学ぶ能力」を与える技術です。従来のプログラミングでは、開発者があらゆる状況に対応するルールを手動で記述する必要がありました。しかし、機械学習ではデータから自動的にパターンを見つけ出し、そこから「学習」することができます。

例えば、子どもに新しい概念を教える場合を考えてみましょう。「これはリンゴです」「これはバナナです」と複数の例を見せることで、子どもは自分でそれぞれの特徴を見つけ出し、新しい果物を見ても「これはリンゴだね」と判断できるようになります。機械学習も同様に、多くの例(データ)から学習し、未知のデータに対して判断できるようになるのです。

(引用元:STANDARD

「訓練」と「推論」:機械学習の2つのフェーズ

機械学習のプロセスは、大きく分けて以下の2つの段階に分かれます。

1.訓練(学習)フェーズ:多くの例からパターンを学習する段階

2.推論(予測)フェーズ:学んだことを使って新しい状況に対応する段階

これは、学校での勉強と試験に例えることができます。勉強(訓練)の段階では、問題と解答の両方を見ながら学びますが、テスト(推論)の段階では問題だけを見て、以前の学習を基に解答を導き出す必要があります。

機械学習も同様に、訓練段階では正解付きのデータセットを使って学習し、推論段階では未知のデータに対して予測を行います。

3つの主要な学習アプローチ

(引用元:こがたぶろぐ

機械学習には、主に3つの学習アプローチがあります。それぞれ、人間が学ぶ方法と似た特徴を持っています。

教師あり学習:答えと一緒に教える

教師あり学習は、入力データと正解(ラベル)のペアを使って学習する方法です。例えば、「この写真はネコです」「この写真はイヌです」といった正解付きの画像をたくさん見せることで、システムは新しい画像が「ネコ」なのか「イヌ」なのかを判断できるようになります。

これは、教師が正解を教えながら学生を指導するのに似ています。メールフィルタリングや画像認識など、正解が明確な問題に適しています。

教師なし学習:自分でパターンを見つける

教師なし学習では、正解のラベルなしでデータの中から自然なパターンや構造を見つけ出します。例えば、ユーザーの購買履歴から「似た嗜好を持つ顧客グループ」を自動的に見つけ出すことができます。

これは、子どもが積み木で遊ぶ中で自然と「同じ色や形のブロックを一緒にグループ化する」といった分類法を発見したり、音楽を聴いているうちに「クラシックとロックは違う」と気づいたりするのに似ています。誰も明示的に「こうやって分類しなさい」とは教えていないのに、データ(経験)の中から自然とパターンを見つけ出すのです。

教師なし学習は、顧客セグメンテーションやデータの次元削減などに活用されます。

強化学習:試行錯誤から学ぶ

強化学習では、システムとのやり取りを通じて、報酬を最大化するための行動方針を学びます。例えば、ゲームAIが勝利するための最適な戦略を、何度も対戦を繰り返しながら見つけ出すといったイメージです。

これは、子どもが「熱いストーブに触ると痛い」といった経験から学ぶのに似ています。自動運転車の制御やロボット工学など、連続的な意思決定が必要な分野で活用されています。

機械学習の身近な応用例

機械学習は、私たちの日常生活のさまざまな場面で活用されています。

●スマートフォンの顔認証:教師あり学習で「これはあなたの顔です」と識別
音楽や動画のレコメンデーション:教師なし学習で「あなたの好みに合いそうな曲」を提案
詐欺検出システム:異常検知(教師なし学習の一種)で不審な取引を発見

スマートスピーカー:教師あり学習で音声を認識し、強化学習で応答を改善

私たちが使う多くのアプリやサービスの裏側では、機械学習アルゴリズムが日々活躍しています。

まとめ:機械学習の本質と今後の進化

機械学習の本質は「データから学習し、パターンを見つけ出す能力」にあります。人間が明示的にすべてのルールを記述するのではなく、システム自身がデータから法則性を学び取ることで、複雑な問題に対応できるようになります。

しかし、機械学習にも限界があります。「ゴミを入れればゴミが出る」と言われるように、学習データの質が悪ければ得られる結果の質も悪くなります。また、学習したパターン以外のケースには対応できない「過学習」の問題もあります。

現在、機械学習は深層学習(ディープラーニング)などの発展により、さらに高度な問題解決が可能になっています。将来的には、より少ないデータでも効率的に学習できる手法の開発や、学習プロセスの解釈可能性の向上が期待されています。