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2025.05.08

機械学習の1つ「ニューラルネットワーク(NN)」とは? AI技術の根幹をシンプルに解説

AIに学習させる方法は様々あり、そのひとつがニューラルネットワーク(Neural Network)。人間の脳の動きを真似してデータをAIに処理させる機械学習のモデルです。

人間の脳内にある「ニューロン(神経細胞)」と、その「繋がり方」をヒントに作られています。何気なく使っている機械やシステム、ロボット、様々な部分に用いられている機械学習のモデルです。今回はその基礎を解説していきましょう。

脳をヒントにした「学習する仕組み」

人間がりんごを見て、りんごだと認識できるのは、脳内の神経細胞ネットワークが情報を処理しているからです。ニューラルネットワークは、この「情報を受け取り、処理して、次に渡す」という脳の基本動作をコンピューター上で再現しています。

従来のコンピュータープログラムがすべて人間の設計したルールに従って動作するのに対し、ニューラルネットワークはデータを基に自ら「学習」することができます。これがAI技術の革命的な特徴であり、人間が明示的にルールを書かなくても、データから自動的にパターンを見つけ出せるのです。

3つの層と「重み」の関係

ニューラルネットワークは、以下の3種類の層で構成されています。

●入力層:データを受け取る最初の層
隠れ層:受け取ったデータを処理する中間層

出力層:処理結果を出力する最後の層

各層には「ニューロン」と呼ばれる計算ユニットがあり、層と層の間で互いに接続されています。この接続には「重み」という数値が設定されています。

「重み」は、友達関係の親密度に例えられます。ある友達からの提案は、あなたの判断に大きく影響するかもしれませんが、別の友達からの同じ提案はあまり影響しないかもしれません。ニューラルネットワークでも同様に、ある入力からの情報が出力にどれだけ影響するかは「重み」によって決まります 。

(引用元:AIsmiley

また、各ニューロンには「バイアス」という値も設定されており、これは判断の傾向や閾値を調整する役割を果たします。日常生活で例えると、あなたが元々甘いものが好きな場合、甘いデザートの提案には肯定的に反応しやすいようなものです。

「学習」の本質:間違いから学ぶ

ニューラルネットワークの最大の特徴は「学習する」能力です。学習の中心となるのは「バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)」という方法で、これは「間違いを発見して修正する」人間の学習法と似ています。

●予測:現在の重みを使って予測を出す
誤差計算:予測と正解との差を計算する
重みの更新:誤差を減らすよう、重みを少しずつ調整する

繰り返し:これを何度も繰り返して精度を向上させる

料理の味付けに例えると、塩を入れる→「塩が多すぎる」と指摘される→次は塩を少なめにする→練習を繰り返して、ちょうどいい塩加減を覚える、というプロセスに似ています。

具体例:文字認識の仕組み

手書き数字の認識を例に考えると、

●入力層:手書きの「8」の画像データが入力される
隠れ層:「丸が2つ縦に連なっている」などの特徴を検出

出力層:「これは8である確率が95%」といった判断を出力

もし「8」を「3」と誤認識したら、システムは重みを調整し、次回は正しく認識できるように学習します。このプロセスを大量のデータで繰り返すことで、精度が向上していきます。

ニューラルネットワークの進化:単純なものから複雑なものへ

ニューラルネットワークは時代とともに進化してきました。最初は単純な「パーセプトロン」と呼ばれる構造(入力層と出力層のみ)から始まり、隠れ層を持つ「多層パーセプトロン」、そして現在注目されている「深層学習(ディープラーニング)」へと発展してきました。

深層学習では、隠れ層が何層も重なった深い構造を持ち、より複雑なパターンや特徴を学習できます。例えば画像認識では、最初の層が線やエッジを、中間層が目や鼻などの特徴を、深い層が顔全体などを認識するというように、層ごとに異なるレベルの特徴を学習します。

まとめ:ニューラルネットワークの本質

ニューラルネットワークの本質は「経験から学び、パターンを見つけ出す能力」にあります。従来のプログラミングが「If A then B(もしAならBせよ)」というルールで動くのに対し、ニューラルネットワークは「このデータはどんなパターンを持っているのか?」を自分で発見します。

この特性により、文字認識や画像分類、自然言語処理など、従来のプログラミングでは困難だった複雑なパターン認識タスクで、優れた性能を発揮できるのです。ただし、「なぜそのような判断をしたのか」という説明が難しい「ブラックボックス問題」など、課題も残されています。