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2025.02.20

【連載】米国ボストン 世界が注目するロボティクス市場でサムライ企業は何を掴むか(第2回:出発編)

日本貿易振興機構(以下ジェトロ)協力のもとボストンのロボティクス市場や、プログラムを通した参加企業の声をお届けする本連載。第2回は、ジェトロのロボティクス向けスタートアッププログラム「Boston Robotics Program」に参加した企業の一部に協力を仰いだ。以降複数回に渡り、現地の様子をお伝え頂く。今回は「出発編」として、協力頂いた企業をご紹介する。未来のロボット業界を牽引するかもしれない、注目のサムライ企業の顔ぶれとは!?(文=RoboStep編集部)

※スタートアッププログラムの詳細など、未読の方は是非連載第1回と併せてお読みください。

株式会社Aladdin

株式会社Aladdin CEO

金井 優樹 氏

IT業界での豊富な経験を持ち、ヒューレット・パッカードでシステム構築やプロジェクト管理に従事。その後、2020年にAladdin Inc.を設立しCEOに就任。スマートごみ箱「SmartTrashCan」を中心に、AIやエッジコンピューティングを活用したスマートシティ向けソリューションを開発。渋谷区や株式会社伊藤園での実証実験や大阪万博への出展を通じ、持続可能な社会の実現を目指す。また、エッジAIやクラウド技術、ブロックチェーンに強みを持ち、革新的な技術導入をリードしている。

会社紹介

Aladdin Inc.はAIとエッジコンピューティングを駆使したスマートごみ箱「SmartTrashCan」を開発するスタートアップです。ごみの自動分別によりリサイクル効率を高め、環境負荷削減を実現します。大阪・関西万博へでの展示や海外展開を目指し、多角的なPoCを進めています。自治体や企業との連携にも積極的に取り組み、実証を重ねながら社会実装を加速します。サーキュラーエコノミーで持続可能性を高めます。

製品紹介

Aladdin Inc.が開発するスマートごみ箱「SmartTrashCan」は、AIとエッジコンピューティング技術を活用した次世代型の廃棄物管理ソリューションです。搭載されたカメラと画像識別技術により、ごみを自動的に分別し、リサイクル率を向上させると同時に、廃棄物処理プロセスの効率化を図ります。

特筆すべきは、センサーを用いずにcomputer visionのエッジAIがごみの種類を判断する独自技術で、運用コストの低減に寄与しています。また、データ収集機能を活用し、廃棄物の発生傾向や分別の精度をリアルタイムで可視化。将来的には、収集した廃棄物をリサイクル工場へ自律的に運搬する機能の実装も計画中です。さらに、ブロックチェーン技術を活用したプラットフォーム「SALVARE」を提供し、廃棄物追跡やリサイクル促進に関する報酬システムを構築。これにより、個人や企業が持続可能な社会形成に積極的に参加できる仕組みを実現します。SmartTrashCanは、都市環境の美化や廃棄物削減に貢献するイノベーションです。

今回応募した理由

Aladdin Inc.は、AIとエッジコンピューティングを活用したスマートごみ箱「SmartTrashCan」を開発し、持続可能な社会の実現を目指しています。今回、JETRO主催の「Boston Robotics Program」への参加を決意した理由は、米国市場への進出を視野に入れ、ボストンの先進的なロボティクスエコシステムから学び、現地の専門家や企業とのネットワークを構築するためです。

特に、MassRoboticsなどの現地ハブとの連携を通じて、製品の市場適応性を高め、グローバルな視点での事業展開を進めたいと考えています。また、プログラム内で提供されるメンタリングやワークショップを活用し、米国における市場拡大戦略やビジネス開発の知識を深めることで、当社の技術とサービスの競争力を強化したいと考えています。さらに、現地でのデモデイやネットワーキングイベントを通じて、潜在的なパートナーや投資家との関係構築を図り、将来的な海外展開の基盤を築くことを目指しています。これらの機会を最大限に活用し、Aladdin Inc.の成長と国際的なプレゼンスの向上を図るため、本プログラムへの参加を希望しています。

知能技術株式会社

知能技術株式会社 代表取締役 博士(生命医科学) 

大津 良司 氏

博士(生命医科学)国立大学院医学系研究科で医学を研究。現早稲田大学 招聘研究員。神戸出身で阪神淡路大震災でショックを受け、医学の研究をすると共にロボットで人の命を助けたい想いでロボット開発会社を起業。災害現場で作業をするロボットや消防ロボットなどに携わり、全国で100台以上使われている。人の命を助けたい、守りたいという想いを実現し続ける。

会社紹介

企業向けの動き回るロボットと画像認識や文字認識及び未来予想などの幅広いAI開発をしています。ロボットは工場内点検ロボットや搬送ロボット及び建設ロボット、消防ロボットなど過酷な環境で作業するロボットを作っています。画像認識AIは300m先から時速120㎞で近づく自動車の正確な位置を検出するもの等動くものが何であるか、それがどこにあるかなどを見つけられます。

製品紹介

災害対策ロボット及び建設工事ロボット

温暖化による気候変動により豪雨や山火事が世界で頻発しています。例えば米国では年間7万回もの山火事が発生し人命や街が失われ、自然も破壊されています。我々は日本では9の府県の消防に消防ロボットを納入しています。このロボットで災害から命を守っています。また、建設業は極度の労働力不足です。我々は自動作業建設ロボットで労働力不足の解決をしています。

今回応募した理由

米国で頻発する山火事により市民は命や財産を失っています。また、二酸化炭素の排出、大気汚染、動植物の絶滅の危機など深刻な課題です。消火をする消防隊員も年間100名以上が死亡する過酷な環境のため不足しています。人が入れない環境でも遠隔操縦の無人消防ロボットでいち早く消火活動をし延焼を防ぐことで、これら課題を解決できると考えており、ニーズのヒヤリングや参入方法を調べるために応募しました。

また、日本では100台以上の実績がある無人の自動作業建設ロボットについても、深刻な労働力不足の米国建設業にニーズがあると考えています。そのため、誰にどのようにアプローチすべきか調査することも今回の応募理由です。

今回のプログラムを通じてえたい成果、経験

1. 消防ロボット及び建設ロボットを購入して使いたいというニーズがあるか調査をしたい
2. 誰が購入者なのか、誰が決定者なのか知りたい
3. これらの人が購入したいと考える条件は何なのか知りたい
4. どのような競合がいるのか知りたい
5. 協業できる企業がいるのか知りたい
6. 販売代理店となる企業がいるのか知りたい
7. アカデミアの街のボストンで新たな技術を見つけたい

ドローン・スポーツ&ミュージック・クラウド株式会社

ドローン・スポーツ&ミュージック・クラウド株式会社 Founder & CEO

宮内 博章 氏

予定著書「100歳IPO」:退職金を元手に未経験のB2Cアプリ・ビジネスをスタートアップ、100歳の誕生日までにNASDAQ上場を目指す。三井物産(合成樹脂部門)30年、JASDAQ上場の射出成形企業の取締役CFO、イワキ・ポンプのシンガポール社長、機械メーカー松井製作所の上海社長など、米国7年、メキシコ2年、スイス2年、シンガポール7年、中国11年。各地で会社設立、ターンアラウンド、M&A、新事業進出などを担ってきた。

会社紹介

スポーツと音楽は世界を結びつける人類共通の宝。一方、ドローンこそはハンズフリーで、空から私たちの最高の瞬間を撮ることのできる理想的なツールであるにも拘わらず、世界ではそれをスポーツと音楽に、上手に活用する仕組みができていない。私たちのメイン技術は、物理や化学に無い。ドローンを戦争のためではなく、スポーツやダンス、そして音楽を通じて人々を近づけるために活用するための社会エコシステム作りに在る。

製品紹介

スマホにAeroMeアプリを入れるだけ。世界中のドローンを思い通りに! 私たちの専用セルフィーカメラに代えます。

■スポーツと音楽は世界を結びつける人類の宝。ドローンこそハンズフリーで、空から最高の瞬間を撮ることのできる理想的なツールなのに、上手に活用する仕組みがなかったので作りました。

■ドローンを戦争のためではなく、スポーツやダンス、そして音楽を通じて人々を近づけるために活用します。

今回応募した理由

当社が「J Star × Boston Robotics」に参加した理由は、最新テクノロジーとエンターテインメントの融合をさらに深めるためでした。当社は、スポーツや音楽イベントにおける革新的なドローン映像技術を目指しており、ボストン地域の最先端AIやロボティクスがもたらし得る可能性を探求し、よりダイナミックでインタラクティブなサービスを開発したいと考えました。また、グローバルなイノベーションコミュニティへの参画を通じて、技術交流とビジネス拡大の機会を得ることも期待しました。

株式会社ミューラボ

株式会社ミューラボ 常務取締役

大森 卓 氏

前職は自動車関連Tier1企業にて、品質管理・製品開発・法人営業を対応。開発部門時には、アメリカに駐在し、現地拠点を立上げ。法人営業時にはドイツに駐在し、ドイツ現地法人社長・UK現地法人社長を兼務。2022年より当社にて、営業・事業・ビジネスデベロップメントを担当。

会社紹介

弊社は2015年4月に福島大学発 第1号ベンチャーとして設立しました。現在ロボット用精密機器の超小型クラウン減速機、中空クラウン減速機、小型電動グリッパを設計・開発・製造しております。クラウン減速機はバックラッシュ(がた)がきわめて小さく、小型化、軽量化な設計で高いトルクを低速で伝達する機構です。精密な位置制御が必要なユニットや医療用機器、産業用機器、民生機器、さらには廃炉用ロボットなど、さまざまな機械・分野への応用が可能です。弊社は今後もサイズバリエーションを増やし、皆様の<欲しい>に応える魅力的な製品と技術を提供していきます。

製品紹介

「CROWNROBOXGEAR」は、ロータ歯車・ステータ歯車・アウトプット歯車の3つの歯車で構成され、ロータ歯車を約180°離れた2つの歯が挟み込むように接触することでバックラッシュが小さく、精密な角度制御が可能です。そして本減速機は小さなサイズと大きな減速比をシンプルな構造を実現しています。現時点でのラインナップは、30mmサイズ・13mmサイズおよび、中空仕様の50mmサイズがあります。

また、「立体カム機構」および「減速機」の応用形態として今までにない「小型3つ爪電動グリッパ」を開発し、「小型」「精密(バックラッシュが極めて小さい)」で、かつ「力」のある3つ爪電動グリッパの実現にも成功しています。今後もより人間の指の動きに近い、汎用的ロボットハンドを提供していきます。

今回応募した理由

今後の事業拡大の為には、日本国内のみでの販売では限界があることから、海外展開を見据え、巨大市場であるアメリカでの販売の足掛かりとして、投資家・事業会社等とのネットワークを目的とし、応募しております。

日米間の連携がロボティクスを加速させるか

今回のプログラムは、スタートアップ企業や起業家の米国市場への参入支援を行うCICとMass Roboticsも強力に後押ししている。Mass Robotics は2015年に設立されたボストンを拠点とする最大級の非営利ロボティクスハブである。ロボティクス分野のスタートアップにワークスペース、リソース、プログラムを提供し、製品開発・ビジネス化の一連のプロセスをサポートしている。果たして、参加企業は米国で何を掴むか。

連載第3回では「現地編」として、現地の様子をご紹介いただく。