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2025.01.24

【連載】ロボットとブロックチェーン(第2回)ドローン業界での活用事例

ロボット業界におけるブロックチェーンの応用可能性や最新の事例を紹介する本連載。

第1回でブロックチェーンとロボットの関係性について解説したところで、実際の活用事例についてより深掘りしていきます。今回は、ドローンの活用事例に焦点を当て、ブロックチェーン技術がどのようにドローン業界に貢献しているのかを探っていきましょう。(第1回 「ブロックチェーンがロボット業界の未来を変える?基本概念と応用可能性を探る」も併せてご覧ください)

なぜドローンにブロックチェーンが必要なのか?

ドローンの商業利用が急速に拡大する中、空域の安全性確保や盗難防止、災害時の情報収集と共有など、様々な課題が浮上しています。これらの課題を解決するために、ブロックチェーン技術が注目されています。

ブロックチェーンは、一度記録されたデータを改ざんすることが極めて難しい特性を持っています。これにより、ドローンの飛行記録や取引情報などの重要なデータを安全に保管できるのです。

また、ブロックチェーン上のデータは、いつ、誰によって、どのような操作が行われたのかも明確に記録するため、問題が発生した際に原因を特定しやすくなります。さらに、ブロックチェーン上のデータは関係者全員で共有・確認できるため、データの移動や処理の過程を追跡することが可能です。

このように、ブロックチェーン技術は、データの安全性や信頼性を高め、ドローンの運用管理をより透明化することで、ドローンの安全で効果的な活用を支えられるのです。

拡大するドローンビジネスの市場規模

ドローンビジネスの市場規模は年々拡大しており、2023年度における日本国内の市場規模は3,854億円と推測されています。これは2022年度の3,111億円から743億円増加しており、前年度比23.9%増となります。今後も成長が見込まれ、2028年度には9,054億円に達すると予測されています。

市場の拡大に伴い、ドローンの運用に関する課題もより複雑化しているため、ブロックチェーン技術はこれらの課題に対処するための有力なソリューションとして期待されているのです。ドローンの飛行データをブロックチェーン上に記録することで、事故の調査や原因究明がより容易になります。

活用事例1: 空域の安全性確保

ドローンの安全な運用には、飛行データの正確な記録と管理が不可欠です。ドローン技術を開発するRed Cat社はこの課題に取り組むため、ドローンの飛行情報をブロックチェーン上に記録するプラットフォームを開発しました。

Red CatのCEOであるJeff Thompsonは、「ドローン業界を前進させ、空をより安全にするために、ブロックチェーンを活用したブラックボックス技術と分散型ストレージシステムの商用化を全速力で進めています」と述べました。

このシステムでは、GPSの位置情報、ビデオ、写真、飛行ログ、テレメトリデータなどがブロックチェーン上にハッシュ化(任意の長さのデータを固定長の文字列に変換する一方向の暗号化プロセス)されて記録されます。これにより、ドローンの飛行を完全性を持って監視することが可能になりました。

アマゾンやウォルマートなどの大手企業がドローン技術に注目する中、このようなブロックチェーンを活用したシステムの需要が高まっています。実際に、ウォルマートは2017年にブロックチェーンを利用したドローン配送サービスの特許を取得しています。

Red Catのプラットフォームにより、ブロックチェーン上に記録された飛行データを確認することで、どのドローンがいつどのように飛行したのかを正確に調査可能に。このようなシステムは、ドローン業界全体のための安全な空域の確保に貢献すると期待されています。

参照:Drone Data Service to Create Blockchain-Based Black Box

活用事例2: 盗難防止システム

(引用:IBM

ドローンを使った荷物の配送サービスが普及する中、無人配達後の荷物の盗難が問題となっています。オンラインショッピングの配達にドローンが普及すると、配達後の荷物を他の誰かが別のドローンで持ち去ってしまう可能性があるのです。

IBMは、この問題に対処するため、IoTセンサーやドローンを活用した盗難防止システムの特許を申請しました。

このシステムでは、配送された荷物の高度をIoTセンサーで継続的に監視し、その情報をブロックチェーン上に記録します。もし荷物が許可なく移動された場合、システムが異常を検知し、警告を発します。また、ドローンを使って荷物の位置を追跡することも可能です。

ブロックチェーンを活用した盗難防止システムは、こうした新たな脅威に対処するための有力な手段となるでしょう。

参照:IBM、ドローンを使った盗難・破壊に対抗するブロックチェーン基盤システムの特許申請【ニュース】

活用事例3: 防災への応用

(引用:Japan Business Press

ドローンとブロックチェーンの組み合わせは、防災の分野でも大きな可能性を秘めています。2019年3月、滋賀県甲賀市で行われた実証実験では、自動航行するドローンが被災地の情報を収集し、ブロックチェーンを活用して自治体や政府機関と情報を共有する取り組みが行われました。

この実証実験は、総務省が主導し、大手IT企業、ドローン関連のスタートアップ、大学が参画する産学官連携プロジェクトの一環です。IT企業がブロックチェーン基盤の開発と提供を担当し、スタートアップのドローン自動航行技術と組み合わせることで、災害時の情報収集と共有の迅速化を目指しています。

実証実験では、ドローンが自律的に被災地を飛行し、収集した情報をブロックチェーン上に記録。この情報は、自治体や政府機関で即座に共有されます。ブロックチェーンを活用することで、情報の信頼性と追跡可能性が確保されるため、効果的な災害対応が可能となります。

この前例を基点として、全国の市町村や消防本部に横展開することで、災害への備えを充実させ、現場の最前線で働く人々の生命を守る可能性を高められます。

参照:ドローン×ブロックチェーンがもたらす防災新次元

ドローンにブロックチェーンを活用する課題

ドローンにブロックチェーンを活用する際には、以下のような課題が存在します。

●セキュリティとプライバシー
スケーラビリティ(システムが拡大・成長した際にも安定して機能し続ける能力)と技術的統合
規制と法的枠組み
コストとリソース

セキュリティとプライバシーの観点では、ドローンの運行データや顧客情報を保護しつつ、ブロックチェーンの透明性を確保することが求められます。

スケーラビリティと技術的統合の面では、増加するドローンのデータを処理するための高速かつ安定した通信環境の整備が必要です。

規制と法的枠組みについては、各国の法律や規制に適合させるための国際的な標準化が課題となります。各国の規制当局との協力や調整が不可欠です。

コストとリソースの面では、ブロックチェーン技術の導入に伴う初期投資や、技術者・専門家の育成が必要であり、特に中小企業にとっては負担となる可能性があります。

これらの課題を克服することで、ドローンとブロックチェーン技術の融合がより一層進み、安全で効率的な運用が実現できると期待されています。

まとめ

ドローンとブロックチェーンの融合は、安全性の確保、盗難防止、防災など、幅広い領域で革新的なソリューションをもたらしています。

今後も、これらの技術の組み合わせが様々な分野で新たな価値を生み出していくことが期待されます。ドローン業界の発展とともに、ブロックチェーン技術の応用範囲もさらに広がっていくでしょう。