ロボットの普及に欠かせないのは、ロボットを簡単に導入できる「ロボットフレンドリー」な環境づくりだ。例えば、同じホテル内で異なるメーカーのロボットが衝突してしまっては大きな問題となる。2023年11月、ホテル専門のソリューションベンダーのタップがロボットフレンドリー施設の推進に向けた共同研究開発プロジェクト「リソース管理システムによる複数ロボットの群管理標準化に関する研究」の開始を発表した。未来のホスピタリティ創造に向けたプロジェクトの概要を紹介する。(文=RoboStep編集部)
ロボットフレンドリーな環境づくりは、企業の枠を超えた連携が欠かせない。経済産業省は、ロボットを簡単に導入できる「ロボットフレンドリー」(通称:ロボフレ)な環境を整えるための事業を進める。
今回のタップの共同研究は、経済産業省「ロボットフレンドリーな環境構築支援事業」として採択されたものだ。ホテルを含む複合施設やオフィスビル、病院などの施設内で使われる異なるメーカーのロボットが、スムーズに動ける環境を作ることを目的とした取り組みだ。今回のプロジェクトには、NECネッツエスアイ、エフ・シー・シー、沖縄日立、パナソニック ホールディングス、パナソニック株式会社エレクトリックワークス社、三菱電機、三菱電機ビルソリューションズ、Preferred Roboticsが参画し、ロボットフレンドリー施設推進機構(RFA)が発行した規格に基づく建物設備連携を推進するとともに、施設をさらにロボットフレンドリー化するための研究開発を行う。また、本事業における啓蒙活動委託先には、一般社団法人沖縄観光DX推進機構が選ばれている。 実証実験の場所となるのは、沖縄県うるま市にある「タップホスピタリティラボ沖縄(THL)」だ。「HOTEL THL」には、客室、レストラン、ホール、セミナールーム、コワーキングスペースがあり、実証実験には最適な場所だ。
HOTEL THLがホテルテクノロジーサービス研究拠点となる
プロジェクトでは、ホテルを含む複合施設でのロボット活用を進め、現在使われているシステムとロボットをうまく連携させることを目指している。稼働するロボットは、ルームサービスロボット、清掃業務ロボット、リネン運搬回収ロボット、その他搬送業務ロボット。これらロボットには、ホテルシステム、ビル管理システム、エレベーター制御システム、セキュリティ扉管理システムを連携させる必要がある。
今回のプロジェクトには、様々なサービスロボットが活用される
メーカーが異なるロボットを同時に稼働させる際には、衝突などを防止するため管理する仕組み(リソース管理システム)が必要だ。本プロジェクトでは、NECネッツエスアイ、三菱電機がリソース管理システムを開発。それぞれを同時に稼働させ、ロボットをスムーズに運用することを目的としている。
複数メーカーのロボットでもホテルシステムやエレベーター制御システムと連携することで、フロア内の水平移動だけでなく、エレベーターを使って上下階の移動も可能になる。これにより、サービスロボットによるホテルの業務が一層効率化され、お客様へより迅速で質の高いサービスを提供できるようになるのだ。
ホテルなどへのロボット導入はシステム連携が欠かせない
本プロジェクトの特徴は、複数メーカーのロボットが共通規格で連携できる環境の構築にある。メーカーにとっては「協調領域の開発に注力できる」「競争領域で独自の強みを発揮できる」といったメリットがある。導入事業者にも、共通の規格ができることによって、メーカー間の価格競争が促進し、導入コストが抑えられるメリットがある。サービス内容や予算に応じてメーカーを選ばずロボットを柔軟に選択できるようになるのも魅力だ。共通規格が確立されることで、メーカー間の協調領域と競争領域が明確化され、競争が促進されるのだ。
実証実験は2025年にかけて行われる。近い将来にホテルで様々な用途のロボットが円滑に稼働することを目指すという。複数のメーカーが手を取り合い作られるロボットフレンドリーな環境に引き続き注目だ。